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作・安保 健+演劇部 |
登場人物 あきな なつみ |
<二人芝居を始める−あきなが、なつみの母を演じる> |
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あきな | どうしたの、なつみちゃん。起きなさい。さあ、起きなさい。なつみちゃん起きなさい。 |
なつみ | お母さん、今日は身体が重いの。 |
あきな | これで、熱はかってみて。 |
なつみ | おかさん、今日は無理。動けない。 |
あきな | さあ、計ってみて。 |
なつみ | 嫌や。 |
あきな | 熱があるなら、病院にいかなければならないでしょ。 |
なつみ | ・・・。 |
あきな | さあ、計って。 |
なつみ | 熱なんか、ない。 |
あきな | じゃあ、起きて学校に行けるでしょう。 |
なつみ | 嫌や。 |
あきな | 学校に遅れるわよ。起きましょう。 |
なつみ | 学校なんかどうでもいい。 |
あきな | そんなこと、ないでしょう。 |
なつみ | あんなところ。行きたくない。あんなところ2度と行きたくない。 |
あきな | あんなところ?そんなことないでしょ、なつみちゃん。あなたにとって学校は大切なところなのよ。さあ起きましょう。なつみちゃんがんばりましょう。 |
なつみ | つかれているの。今日だけ休ませて。 |
あきな | 大丈夫、なつみちゃんは強いから。今まで皆勤でしょう。お母さんもがんばるから、なつみちゃんもがんばりましょう。 |
なつみ | ・・・・・。 |
あきな | さあ、お薬あるから飲みましょう。 |
なつみ | 飲みたくない。 |
あきな | 我がまま言わないの。 |
なつみ | 我がままなんか言ってない。 |
あきな | お母さんは心配してるのよ。お薬、飲みましょう。この薬利くわよ。飲みましょう。 |
なつみ | どおして聞かないの? |
あきな | 利くわよ。この薬。 |
なつみ | 薬じゃなくて、私がどおして起きれないか聞かないの。 |
あきな | 聞いてるでしょ。なつみちゃんのこといつも、聞いてるでしょ。 |
なつみ | お父さん、呼んで。 |
あきな | だめよ。こんなことで呼べないわよ。なつみちゃん知っているでしょう。 |
なつみ | どうして、呼べないの。私がこんなに苦しんでるのよ。 |
あきな | 我がまま言わないの、なつみちゃん。お父さんは忙しいの、お父さんの銀行、今、大変なのよ。あまり、お父さんに心配かけるの止めましょ。 |
なつみ | どうして、いつも、こうなの。 |
あきな | なにが? |
なつみ | なにがって、自分の意見を押し通すの。お父さんに聞いてもいないのに。 |
あきな | なつみちゃん、何言ってるの、聞かなくたって分かるでしょ。 |
(電話が鳴る) | |
あきな | もし、もし、加藤ですが。佐竹さん、あ、ケイコさんのお母さんですか、なつみがいつもケイコさんに良くしていただいて。なつみからケイコさんのことお聞きしていますよ。ケイコさん、ケイコさんって、それはもう、いつも、なつみ言っていますの。ケイコさんすごいって。ケイコさん、最優秀選手に選ばれたそうですね。すごいですね2年生なのに。おめでおうございます。えっ、なつみにですか?今、うち具合が悪くて寝ているのですが、ちょっと、お待ちください。なつみちゃん、ケイコさんのお母さんからよ。確かめたいことがあるんだって。 |
なつみ | 話したくない・・・。 |
あきな | ・・すみません、今ちょっと、具合が悪いみたいで。後で、こちらから連絡させますから。なつみが何か?えっ、どういうことですか?はい、はい、・・なつみが体育の時間に・・・そんなことを・・・。はい、はい、分かりました。どうもすみません。なつみによく言っておきますから、落ち着き次第、あやまりに行きますから。弁償しますから、本当に申し訳ありません。本当に、申し訳ありませんでした。本当に・・・。 |
なつみ | どうして、あやまるの。どうして、あやまるの! |
あきな | あなた、ケイコさんのを何処に隠したの。 |
なつみ | どうして、娘から事情も聞かないで謝るの。 |
あきな | ケイコさんのお母さんが言ってるのよ。それにケイコさんのお友達も、あなたが隠すのをみたって言っている。どおして、そんなことしたの。 |
なつみ | お母さんはわたしとケイコのお母さんとどっちを信じるの。どうして、ケイコの友達なんか信じるの。私がケイコの服をどうして私が隠すの。・・・・どうして、どおして、信じてくれないの。ケイコが何をしたか聞かないの。ケイコの友達が何をしたか聞いてくれないの! (音楽が止む。) |
あきな | これがなつみさんのお母さんなの? |
なつみ | <頷く> |
あきな | もう一度、やり直していい。 |
なつみ | うん。 |
<照明暗くなる><静かな音楽流れる> | |
あきな | なつみ、起きなさい。もう朝よ。 |
なつみ | 今日、身体が重いの。 |
あきな | すこし、休んで、様子みようか。 |
なつみ | うん。 |
あきな | ここに、少しいていい? |
なつみ | うん。 |
あきな | ごめんね。 |
なつみ | なにが? |
あきな | ナツミに何もして上げられなくて。お父さんの会社大変だから、もう少し、ナツミに何かしてあげれたらいいのにね。きっと、おとうさんも気にしてるよ。そのうち、何処かみんなでいきましょう。 |
なつみ | うん、母さん、私・・・。 |
<電話が鳴る> | |
あきな | さっき、ケイコさんのお母さんから電話あっての、多分、また、まただと、思うけど。 |
<あきな、電話にでる。> | |
あきな | もし、もし、吉永ですが、ケイコさんのお母さんですか。はい、はい、ナツミにですか?まだ、具合が悪いので、落ち着いたら、こちらから、お電話さしあげますから、ケイコさんの服見つかりましたか。そうですか、はい、はい、わかりました。どうして、そんなこと言うんですか? どうして、ナツミだと決め付けるのですか。ナツミにきちんと聞いてみますから。そういう、言い方止めて下さい。まるで、ナツミが盗んだ見たいないかたやめてください。双方の事情を聞いてから言ってください。失礼だと思います。きちんとナツミに聞いてみますから。ナツミは、そんなことする子ではありません。とにかく、なつみから、きちんと事情を聞きますから。こちらから、ご連絡しますからよろしくお願いいたします。 |
なつみ | 母さん、私、本当はケイコさんの服、体育の時間に隠したの。ごめんなさい、お母さん。 |
あきな | どうして、隠したの。 |
なつみ | ケイコが許せなかったの。 |
あきな | ケイコさんが? |
なつみ | うん。初めは優しかったけど、嫌がらせするの、だから困らせようと思って水泳の時間に服を隠したの。 |
あきな | そうだったの、明日、ケイコさんの家にいきましょう。きちんと、お話しましょう。ケイコさんの服ある。 |
なつみ | うん。 |
あきな | 朝ごはん、一緒に食べましょう。 |
なつみ | ありがとう。お母さん。 |
<音楽が止まる。照明、明るくなる。> |
あきな | 今度は私のお母さんやって。 |
なつみ | うん。 |
<照明落ちる。静かに音楽流れる。なつみがあきな の母を演じる。> | |
あきな | <ランドセルをしょって>わーい、わーい、わーい、やった。やったよ。 |
なつみ | アキナちゃん、帰ってきたら何するの。手とうがいしなさい。 |
あきな | おかあさん、これ見て! |
なつみ | いいから、早く、手を洗いなさい。 |
あきな | お母さん、見て。これ見て。アキナ賞状貰ったよ。見て。すごいでしょう。 |
なつみ | 賞状? |
あきな | うん、賞状。 |
なつみ | アキナちゃんが? |
あきな | あきな うん、本当だよ。本物だよ。 |
なつみ | 誰にもらったの。 |
あきな | 校長先生だよ。 |
なつみ | 本当に? |
あきな | うん。本当だよ。今日のお話朝会でもらったの。貰えたの2人だけだったんだから。お母さん、すごいでしょ。 |
なつみ | ・・・何の賞状。 |
あきな | 歯の。 |
なつみ | 歯? |
あきな | うん、歯。ホワイト賞! |
なつみ | 歯って? |
あきな | アキナ、虫歯が一本もなかったの。だから、貰えたの。すごいでしょう。 |
なつみ | いいから、勉強しましょ。 |
あきな | おかあさん、どうして、喜んでくれないの。アキナ初めて賞状もらったのに。 |
なつみ | だって、お勉強の賞状でないでしょ。お勉強の賞状を貰ったら喜んで上げる。だから、お勉強しましょう。 |
あきな | おとうさん、喜んでくれるかなあ。 |
なつみ | お父さんも、お勉強の賞状だったら喜んでくれると思うわよ。 |
あきな | でも、校長先生も鈴木先生も、おめでとうって喜んでくれたよ。 |
なつみ | 母さんも、父さんもお勉強で喜びたいの。わかった? |
あきな | ・・・でも・・。 |
なつみ | でも、何? |
あきな | アキナお勉強ができないよ。 |
なつみ | だから、がんばるんでしょ。 |
あきな | この賞状飾って。 |
なつみ | 飾ってどうするの。 |
あきな | 飾っておきたいの。 |
なつみ | こんなの飾ってもしょうがないでしょ。 |
あきな | こんなの? |
なつみ | こんなの飾っても誰も喜ばないでしょ。 |
あきな | アキナが初めてもらった賞状だよ。 |
なつみ | いいから、おべんきょうしましょう。お勉強で賞状貰ったら飾ってあげる。 |
あきな | ・・・・。 |
なつみ | 今日は、アキナの苦手な算数ドリルから始めましょう。2分の1たす2分の1はいくら? |
あきな | ・・・・。 |
なつみ | 分からないの。 |
あきな | 4分の2 |
なつみ | 違うでしょう。2分の2で1でしょう。きのう、教えたでしょう。もう忘れたの? |
あきな | ・・・・。 |
なつみ | じゃあ、3分の1たす3分の1は? |
あきな | 6分の2. |
なつみ | どうして、間違うの。今言ったばかりでしょう。分母はたしちゃだめだって。頭の悪い子ね。本当に。もう一度、やってみて。違うでしょ。じゃあ、これが最後よ。これが、できないと、ごはんなしよ。5分の1たす5分の1は? |
あきな | ・・・・。 |
なつみ | 違うでしょ。 |
あきな | 頭が痛くなる。頭が痛くなる。 |
なつみ | また、仮病・・。できるまでごはんなしよ。 |
あきな | かあさん、今日、サーカス見に行く日だよ。行こう。 |
なつみ | 何を言ってるの。こんなのもできないでサーカスなんか行けるわけないでしょう。 |
あきな | だって、アキナ、ずっと、ずっと、楽しみにしていたのよ。父さんもいいって言ってたよ。 |
なつみ | 父さんはアキナがおりこうにしていたらいいって言ってたのよ。こんなのも解けないで行けるわけないでしょう。早く、解きなさい。できたら、つれていってあげるから。<ナツミ消える> |
あきな | ・・・・できないよう。できないよう・・・。<音楽が止む。> |
なつみ | 辛いね。 |
あきな | うん、辛かった。 |
なつみ | おとうさんは喜んでくれなかったの? |
あきな | おめでとうって言ってくれたけど、あまり、嬉しそうではなかった。でも、おばあちゃんはすごいねって喜んでくれた。 |
なつみ |
喜んでもらえてよかったね。 |
あきな | うん。でも、こんなことがずうっと続いて、気が狂いそうだった。 |
なつみ | どうしたの? |
<音楽が流れる。なつみがあきなの母になる。中学3年生のあ きな> |
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なつみ | アキナ、ちょっと、出かけるから、鍵かけてね。遅いから誰が来てもでないでね。 |
あきな | 何処へ行くの? |
なつみ | 病院。 |
あきな | おばちゃんの具合が悪いの? |
なつみ | 危篤らしいの。今日がやまみたい。 |
あきな | そんなに悪いの。 |
なつみ | あなたは心配しないで自分のことを心配しなさい。入試は来月なのよ。おばちゃんのところ行くだけで時間がかかるのよ。 |
あきな | でも・・・。 |
なつみ | でも?何?一時間でも二時間でも貴重なのよ。 |
あきな | 私行く。 |
なつみ | 何を言うの?!あなたはだめ! |
あきな | 私行きたい。おばあちゃんに会いたい。 |
なつみ | だめ!あなたが落ちたらおばあちゃんが悲しむでしょう。 |
あきな | そんなことない。 |
なつみ | だったら、もっと、成績上げなさい。入れるようにしなさい。成績が良かったら推薦でとっくに入れたのよ。あなたができないから、こうなるのよ。 |
<なつみ退場> | |
あきな | できないものはできないよう。どうしようもないものはどうしようもないよう。寒いよう。寒いよう。 |
<音楽が止む。明るくなる> | |
なつみ | 大丈夫? |
あきな | <震えている>寒気がするの。 |
なつみ | どうしよう? |
あきな | 大丈夫、落ち着くから。 |
なつみ | 何か探してくる。<行きかける> |
あきな | 待って。ここにいて。 |
なつみ | うん。いいけど。 |
あきな | 心配してくれて、ありがとう。 |
なつみ | うん。 |
あきな | あれ貸して。 |
なつみ | あれって? |
あきな | カッター。 |
なつみ | えっ。 |
あきな | リスカするの。リスカでいつも落ち着つかせるの。 |
なつみ | いいけど。 |
あきな | これやるとほっとするんだよね。あれ?おかしいな。出ない。いつもなら出るのに・・・血がでないよ。出ないよ。出ないよう。血が出ないよう。 |
なつみ | やめて! |
あきな | 出ろ!出ろ!出ろ!出ろ!・・・・。 |
なつみ | (屋上の柵へ行く)ここから、飛び降りよう。 |
あきな | ・・・・。 |
なつみ | そうすれば、すべて、終わるよ。苦しいことも、悲しいこともすべて終わるよ。飛び降りよう。飛び降りていいんだよ。 |
あきな | 死んじゃだめ!私、死んでるの!悲しい匂いがするの!霊安室って悲しい匂いがするの。私、警察の霊安室に置かれたの! |
あきな | 父さんと母さんが来て、母さんは泣いてばかりいるの。母さん、謝ってばかりいるの。父さんは「どうしてこんなことしたんだって」って叫ぶの、「もう一度、やり直そうって。」って叫ぶの。「一緒に帰ろう。」って叫ぶの。 |
なつみ | ・・・。(あきなを抱きしめる。) |
あきな | 泣いちゃだめ。泣いたら負けだよ。泣いたらがんばれないよ。あなたに、生きて欲しいの。 |
なつみ | (なつみ頷く。) |
あきな | 私は幼稚園のとき、先生からマリア様の言葉「すべての人に感謝しなさい。」とならいました。それで、私はみんなに感謝していました。でも私は「ブウ、ブウ」って言われてみんなにバカにされました。多分私は豚みたいに太っていたからだと思います。それで必死にやせなした。でも、みんなにいじめられていました。ちょっとした、言葉が私を深く傷つけるのです。どうしてなんだろう?みんなに感謝しているのに、どうして、私は傷つくんだろうと思いながら生きてきました。そのうち私は何度か死のうとおもいました。そして、病院に行かなければならなくなりました。精神科の待合室にあなたがいました。私はなるべく目をそらしていたけど、そのうち目があって、あなたは私に優しく微笑んでくれました。初めて他人に優しく微笑んでもらえたような気がしました。わたしはとても救われたような気がしました。とても、救われたような気がしました。私を救ってくれたあなたに、感謝状をお送ります。 <アキナ、感謝状を取り出す。> |
あきな | 私が表彰するなんておかしいよね。私賞状なんて一回しかもらったことないものね。でも、うれしかった。賞状ってもらうとこんなにうれしいんだって、あの時思った。人から認めてもらうって、こんなに嬉しいんだって。だから、ナツミさんに作ったの。なつみさん、いっぱい、もっていそうだから、いらないかな。へへへ、しわくちゃになっちゃった。 |
なつみ | ありがとう。大切にする。私の一番大切なもの。 |
あきな | あきな わたしこそ。 |
なつみ | うん。 |
(あきな立ち上がる。) | |
あきな | スマイル、今日のお空は笑ってる!・・・・もっと前に、ナツミさんに会ってればよかった。 |
なつみ | ナツミでいいよ。 |
あきな | うん。 |
<ジャニス・イアンの「17才」が流れ、2人が鳥のように走り回る。やがてあきながなつみを最後に見つめ突然去る。なつみは生き返ったように夢中で走り回る。 | |
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