十七歳
〜やさしく微笑んで〜
       

作・安保 健+演劇部

登場人物

あきな        なつみ

 Aへ

   

場所   屋上
 時    午後
 登場人物 あきな17才 なつみ17才 
 

 (なつみの携帯が鳴る。)

なつみ  もしもし。ケイコ?おはよう。え、暗い?私が?・・・声を聞いてわかる。そう・・・私。私、そんなに暗い?でも、今私すごく気分がイイの!すごーく、あ、で何の用だったの?用事があるから電話かけてきたんでしょう?明日の?・・・・知らない。覚えてない。自分でやれば。私はもうやらない。私にはもう関係ないもの。ねえ、ケイコ、ここどこだと思う?とてもいい所だよ。ビルも車も学校も・・・・そしていつも私を見下ろしていたあなたもとても小さく見える。今は私が見下ろしてるの!ケイコはい−よね−、美人で、かわいくてみんなの憧れのあなたの本当の正体がどんなに醜いか、みんな知らないんだものね。私が今いなくなっても、誰も心配なんかしてくれない。涙なんか流すわけない。ただ、あなたが笑うだけ。そうでしょう?ちょうどよかった。あなたと最後に話せて。さようなら。
なつみ  もしもし、母さん、分かったことがあったの。ちょっと、聞いて。ふざけてなんかいないよ。母さんに携帯したの久しぶりじゃない。ここ、とても、眺めがいいの、風がとても、いいの。仕事なんか、いいから、聞いて。聞いている。だから、仕事なんかいいから聞いて。母さん、私が初めて学校いけなかった日のこと知っている。どおして、行けなかったか訊かなかったよね。母さん、いつも怒るのが先だもんね。私がどうしたいのか、何を考えているのかなんて、母さんは知りたくもないんでしょう?母さんはいつもいい子にしなさいって言うけど、母さんのいい子は都合のいい子でしょう?でも、もういいよ。ねえ、私の声、覚えててね。私が、今言ったこと覚えててね。忘れないでね。さようなら。

(また、携帯をだして)

なつみ  父さん、ハロー、留守電だった。ごめんね、お仕事忙しいの?私ね・・・・やっぱり、いいや。最後に父さんの声聞きたかったけど、残念だね。ちょっと、話ししたいけど、いつも、留守電。グッパイ・パパ。
     (あきなが鳥の真似して登場)  
あきな こんにちは
あきな こんにちは
あきな ちょっとだけ、お話しよう
なつみ   

・・・

あきな ちょっとだけ
なつみ ・・・
あきな ごめん、おどかして
なつみ    ・・・
あきな へへへ、どうやって、人と話していいか、わからなくて、いつも、失敗しちゃうんだな、わたし。おどかす、つもりなんか、なかったのに。
なつみ ・・・・(なつみが帰りかける)
あきな   

待って、本当に、ちょっとだけでいいから、お話しよう。

なつみ    ・・・(帰りかける)
あきな    いっしょに、死んでもいいよ。
なつみ    えっ
あきな へへへ、また、脅かしちゃった、嘘。また、やっちゃったね。こんなこと、言うから人に嫌わのね。ごめん、さっきの話、聞いちゃった。許して。聞くつもりなかったのに、聞いちゃった。ごめん。へへへ、謝ってばかりいるね、わたし。ここ、眺めいいよね。ここから、飛び降りたら、きっと、気持ちいいよ。
なつみ ・・・・。
あきな  でも、死ぬつもりなんかないんでしょう。
なつみ  えっ。
あきな だから、本当は死ぬつもりないんでしょう。そうでしょう。
なつみ  そんなこと、あなたに言われたくありません。帰ります。
あきな ごめんなさい、また、やちゃったね。こうだからわたし、嫌われるのね。いつも、わたしってこうなるの。こうやって、みんなに嫌われるの。あなたも、やっぱりわたしが嫌い?
なつみ ・・・・。
あきな ありがとう。
なつみ えっ
あきな 嫌いって言わなくって、好きになれっていうのは無理だけど。へへへ、話聞いてくれてありがとう。話し掛けてくれてよ。仲良くしよう。
なつみ どおして?
あきな だって、さびしいでしょ。さっき、リストカットしていたでしょ。
なつみ えっつ、見てたの。私を見てたの。ひどい。
あきな ごめんなさい。でも悪気は・・・。
なつみ 私、帰る!
あきな そんなあ、まだ、話ししたばかりじゃない。
なつみ 私は一人でいたいの。
あきな 一人になって何するの。
なつみ  考えごと
あきな 何だ自殺じゃないんだ。
なつみ ・・・(何も言わず行きかける)
あきな ごめんなさい。馬鹿にするつもりじゃないの。
なつみ もういいです。
あきな 待って!さびしいの。
なつみ   さびしい・・・
あきな わたし、わからない?忘れた?前にあったの覚えてない。
なつみ  

・・・・。

あきな 思い出してよ。
なつみ   嘘でしょ。
あきな 嘘じゃないよ。本当にあったんだから。
なつみ やっぱり、わたし、帰る。
あきな   ナツミさん。
なつみ   えっ。
あきな 名前言っちゃった。
なつみ どおして、私の名前を?
あきな どおしてって。会ったでしょう。
なつみ ごめんなさい、わからない。
あきな ありがとう。
なつみ えっ。
あきな だって、謝ってくれたじゃない。
なつみ 謝って、どうして、感謝されるの。
あきな なんか、人に謝ってもらったことなかった、気がして。私って謝ってばかりいるから。でも、謝っていると楽だしね。
なつみ そうかもね。
あきな ありがとう。同意してくれて。
なつみ あなたって、変わっている。
あきな みんなに言われる。このまま、帰って、別な所で自殺したら、私のことが引っかかって自縛霊になるかも。
なつみ 意地悪ね。
あきな そうかも、いっぱい、意地悪されたから、意地悪になったかも。お互いに、そういう人がいると苦労するよね。
なつみ そういう人?
あきな 電話の人。電話聞こえちゃった。
なつみ

あなた、誰?

あきな だから、思い出して。
なつみ やっぱり、あったことないと思うけど。
あきな いいえ、会ったよ。
なつみ どこで、私の名前知ったの。
あきな 教えない。
なつみ いじわる。
あきな へへへ、だって、いつも、いじわるされてきたからね。
なつみ ひねくれているかも。
あきな だから、私は人に嫌われるかも。でも、ナツミさんもひどい。
なつみ ひどい?
あきな だって、そうでしょう、私にあんなことしておいて、全然、覚えてないもの。
なつみ

あんなこと。 

あきな そう、あんなこと。
なつみ わるいこと。
あきな さあ・・。
なつみ やっぱり、帰ります。
あきな 逃げるのね。
なつみ えっ
あきな 本当は死ぬ勇気もないんだあ。
なつみ そんなこと、あなたに言われたくない。
あきな へへへ、また、やっちゃった。好きな歌手は?
なつみ えっ
あきな だから、好きな歌手は?
なつみ

あなたに関係ないでしょ。  

あきな そんなこと言わないで教えてよ。
なつみ どおして、教えなきゃならないの
あきな どうしてって、友達になりたいの。あの時そう思ったの。
なつみ だから、あの時って、いつ?
あきな あの時はあの時よ。
なつみ そう言われたって。だから、教えて。
あきな だめ!
なつみ どおして?
あきな だって教えたら帰っちゃうでしょ。
なつみ それは、そうだけど。
あきな ヒント出そうか。
なつみ ヒント?
あきな ヒント出します。スマイル、今日のお空は笑ってる。        
なつみ これがヒント?
あきな

そう、ヒント。  

なつみ なに、やってるの。
あきな すずめ。
なつみ こんどは何?
あきな へへへ、なんでしょう。
なつみ ペンギン
あきな ブー、よく見て。
なつみ にわとり
あきな 当たり!笑った。
なつみ あっ。
あきな とっつ・ちゃっ・た−。嫌だった、ごめん。
なつみ どうして、わたしの写真とるの。
あきな 1枚、欲しかったんだ。気にしない?ありがとう。
なつみ

何しているの。

あきな 空の写真とってるの。スマイル、今日のお空は笑っている。
なつみ 私には笑ってなんかいない。
あきな 鳥になれたらいいのにね。自由に飛べて。あの空に吸い込まれたい。
なつみ 私にはそうは見えない。
あきな 私には飛び込みたいくらいきれいな空に見える。
なつみ 私には暗い空。
あきな いじめられているの?
なつみ ・・・。
あきな ケイコさんにいじめられているの。
なつみ やめて・・・。
あきな ごめん、私、そんなつもりでなかったの。
なつみ

そんな、つもりって。  

あきな あなたの心の中に土足で入るつもりなかったの。
なつみ もう、いいです。どおにもならないことですから。
あきな そんなことないよ。
なつみ どおして!
あきな 言えるから、いえるの。
なつみ 何もしらないで、言える訳ないと思います。
あきな そんなことないよ、知らなくてもいえることはあるよ、きっと。
なつみ 止めて、その話はもういいです。
あきな 良くないと思うけど。
なつみ いいかげんにして。私がいいっていてるでしょ。 
あきな 私、おせっかいかなあ。
なつみ なつみ  そう、おもいます。
あきな 私だったら、嬉しいのにね。
なつみ 嬉しい?
あきな あきな  うん、うれしい。
なつみ どおして?
あきな だって、自分のこと、心配してくれるんだよ。
なつみ 私、同情されるの嫌いです。
あきな 同情なんか、していないよ。
なつみ 同情です。人をみじめにします。
あきな 私、なつみさんをみじめなんて思っていないよ。
なつみ でも、いや。
あきな でも、それだけで死ぬなんて。
なつみ それだけ・・・。
あきな うん、それだけで死ぬなんてばかだよ。
なつみ ばか?
あきな あきな  うん、バカ。
なつみ そんな簡単に決め付けないでよ
あきな ごめん、バカ,バカ、バカって言われるから言うの慣れちゃった。バカって言われない。
なつみ 言われない。
あきな え-ー、それで飛び降りるの。もったいない。
なつみ あなたに関係ないでしょう。
あきな 関係ある。
なつみ ない
あきな ある。おめでとう。
なつみ えっ
あきな 誕生日おめでとう。
なつみ どおして知ってるの?
あきな へへへ、エプロンシアター始めます。(エプロンシアターを始める。)
エプロンシアター始めます。今日は9月13日ですね。さくら組みのみなさん。さあ、お姉さんのこのポケットから何が出てくるかな。たまごが出てきました。さあ、このたまごから生まれて来るのは何でしょうね。
(エプロンのポケットからヒヨコのたまごを出す)
たまごがコロン コロ コロ コロ ロン
たまごがコロン コロ コロ コロ ロン
(たまごを持って左右にゆらす。)
ミシミシ ひび いって
生まれて きたのは だあれ?
 (たまごの裏側のひびを見せる。)
さあ、だれかな?
たまごから、ひよこを出す。
 ピヨピヨ、みなさんこんにちは。
 まだ、ほかにもたまごがありますよ。
さあ、だれが生まれてくるでしょう?
たまごがコロン コロ コロ コロ ロン
たまごがコロン コロ コロ コロ ロン
ミシミシ ひび いって
生まれて きたのは だあれ?
 たまごさん、たまごさん、あなたはだあれ?
 <たまごに耳を近づける>
 フム、フム、氷の上でも平気なの。
 なつみちゃん、わかりますか?
 <ペンギン登場>
 みなさん、こんにちは。
次、行きマース。
この大きなポケットにはなにが入っていますか。
このポケットには、おかあさんが入っていました。
 このお母さんのお腹をみてくださーい。たまごみたいに丸いですね。お腹に何が入って入るのですか。そうです、あかちゃんです。おぎゃー、おぎゃー、あかちゃんが生まれてきますよ。おかあさん、なつみちゃんを生もうとがんばっていますよ。あっ、なかなか、なつみちゃん出てきません。おかあさん、がんばれ。やっと、おかあさんのお腹からなつみちゃんが生まれてきました。おかあさんは今、なつみちゃんをやさしく、やさしく、そっと、抱きました。そして、お空にむかって
なつみ 止めて!おねがい、止めて!
あきな やめるの。これからが、いいとこなのに。
なつみ 止めて下さい。
あきな ・・・。
あきな じゃあ、これ。<ポケットの中から布製のヒヨコを出す。>
なつみ どおしてですか。
あきな なにが?
なつみ だからどうして、私にこんなことするの。
あきな 喜んでくれると思って。
なつみ それは、少し、勝手すぎるとおもいます。
あきな へへへ、たぶん。でも
なつみ でも何?
あきな わかってくれると思って。
なつみ わからないと思います。
あきな そんなことないよ。きっと、わかってくれるよ。
なつみ ずいぶんだと、思います。人間、そんなに簡単に理解しあえるとは思いません。
あきな ずいぶん、硬いのね。なつみさん。
なつみ 普通だと思います。
あきな スマイル、ほら、虹!
なつみ えっ。
あきな ほら、あそこ。シャッターチャンス。
なつみ 私には見えませんけど。
あきな あそこだよ、あそこ。虹って、掛け橋。子供のころ、虹を掛かっているところにいこうといつも追いかけた。なつみさん、あるでしょう。
なつみ ええ。
あきな ねえ、どうやって、追いかけた。
なつみ 自転車で。
あきな 私も。やっぱり、虹は掛け橋なんだ。
なつみ なんの?
あきな あなたと私の。あの日も出ていたよ。忘れた。
なつみ あの日?
あきな 覚えてないの。
なつみ うん。
あきな あの日の朝、虹が出て、きっと、今日はいつもと違う良いことあると思ってたの。
なつみ ごめんなさい、やっぱり、思い出せない。
あきな 私はあの時からあなたが大好きになったの。あっ、いちゃった。ごめん。嫌いになった。私って、いつもこうなの。
なつみ わたしを好きって?
あきな か、勘違いしないでよ。変な意味じゃないから。
なつみ やっぱり、気になる。何処であったの。
あきな もういいの。
なつみ 何が?
あきな だって、目標、達成しともの。なつみさんにすきって言いたかったの。
なつみ でも、どおして、私が好きなの。
あきな ヒ・ミ・ツ
なつみ いじわる。
あきな 初めて人にいじわるって言われたかも。どれだけ、なつみさんが好きか教えてあげる。
なつみ どうやって?
あきな これで、21回目。
なつみ なにが?
あきな 「どうやって」とか「どおして」とか「なにが」って言ったの。好きなんだね、「どうしって」言葉。
なつみ そうでも、ないと思う。あまり、このごろ、人に使ったことない。子供のころは使っていたけど。
あきな じゃあ、今は私だけ。
なつみ そんな気がする。
あきな ありがとう。ますます、やりたくなった。
なつみ なにを?
    <あきなが新聞差し出す。>
なつみ 新聞?これで、なにするの?
あきな だから、どれだけ、あなたが好きか教えてあげる。これを、くしゃくしゃにしたり、丸めたりしても0K。
なつみ これを?
あきな うん、やってみて。(あきなが新聞紙の真似をする。)
なつみ なに、やってるの。
あきな 新聞の真似。そう、その調子。面白い。
なつみ なつみ  うん、
あきな よかった。もっと、やってみて。たのしいでしょう。
あきな こんどは丸めて。投げて、ビルから投げて、青空に投げて!飛ばした。
なつみ こう。
あきな うん、ブ〜ん、ブーン、あきなもいきます
  <あきなが飛行機になってビルから飛び降りようとする。>
なつみ やめって!やめって!
あきな いいんだよ、落ちて。
なつみ どおして!
あきな だって、あなたが好きだもの。
なつみ それは、おかしいよ。やっていいこと、だめなことあるでしょう。そんなことして、わたしが喜ぶの。
あきな ・・・・。
なつみ 私はあなたを死なせたことになるのよ。
あきな そんな、ことないよ。
なつみ そうなるの。残された私は苦しむよ。私はあなたの名前も知らないのよ。
あきな ごめんね。わたしって、やっぱり、ばかね。
なつみ もっと、自分のこと大切にしたほうがいいと思うよ。
あきな へへへ、そうだね、全く。また、やっちゃった。こうやって、みんな、私を避けていくの。いいこと、しようとするといつも、変なことするの。先生にいつも、おまえはバランスがわるい。もっと、考えて行動しないと苦労するって言われた。人と付き合うのにがてなの。私嫌いになった。
なつみ きらいじゃ、ないけど。
あきな よかった。本当は止めて欲しかったの。誰かに止めてもらいたかったの。へへへ。
なつみ あなたって、笑ってばかりいるけど本当は・・・
あきな 本当は、何?
なつみ さみしがりやなのね。
あきな へへへ、ばれちゃった。
なつみ 名前、教えて。
あきな さっき、言ったよ。
なつみ え?
あきな 飛び込むとき、言ったよ。
なつみ びっくりして、思い出せない。
あきな じゃあ、当ててみて。当たったら驚くよ。
なつみ どおして
あきな だって、驚くの。
なつみ 本当に?
あきな あきな  うん、当ててみて、なつみさん。
なつみ なつみ  当てるの?
あきな あきな  うん。
なつみ じゃあ、愛ちゃん?今日子さん?
あきな だから、なつみさんが驚く名前。
なつみ 教えて。
あきな 私の名前はアキナ
なつみ 本当?
あきな そう、なつみの夏とあきなの秋、実は私たち姉妹なの。
なつみ え!うそでしょう。私たちが姉妹なんて。
あきな へへへ、ばれちゃった。ごめんなさい、でも、あなたと姉妹ならいいなって思ってたら、自然に出てきちゃった。
なつみ うそはよくないと思います。
あきな でも、誕生日は同じなの。これは本当。もし、いっしょに死んだら、命日も同じね。あっ、ごめん。
あきな そうだね。
なつみ あなたって、どこまでが、本当でうそなのかわからない。
あきな でも、これだけは本当よ。あなたの味方だってことは。
なつみ 私の味方?
あきな うん、味方。
なつみ でも、どうして私の見方なの。
あきな 味方は、味方なの。味方がいるって心強いよ。
なつみ 本当に私と誕生日同じなの。
あきな うん、同じ。エプロンシアター始めます。今日はナツミちゃんの誕生日ですけど、もう一人、今日が誕生日の子がサクラ組にいますよ。ジャーン、このお腹の大きいおかあさんは誰でしょう。このおかあさん、うーん、うーん、苦しいよー、くるしーよー。おかあさん、苦しそうです。うーん、うーん、なかなか、おかちゃんが生まれてきません。おかあさん、がんばれ、がんばれ、おかあさん、でも、生まれません。大変です。あかちゃんの首にへその尾がまきついています。あかちゃんも苦しそうです。あかちゃんがんばれ。おかあさんがんばれ、あかちゃんがんばれ、あー、あかちゃんが出てきました。お母さんのお腹からやっと出てきました。あかちゃん、おめでとう。おかあさん、おめでとう。おかさんもあかちゃんもがんばりました。おかさんはあかちゃんを生もうと2日もねないでがんばりました。今、疲れて固く固く眼を閉じてぐっすり眠っています。あかちゃんもおかさんと一緒に2日もねないでがんばりました。あかちゃんも深い深いおねんねです。このあかちゃんはだれでしょう。このあかちゃんはサクラ組のあきなちゃんです。あきなちゃん誕生日おめでとう。
なつみ いいお話ね。
あきな うん。
なつみ おかあさんと仲良いいんでしょう。
あきな ・・・・。
なつみ どうしたの?
あきな へへへ、家に帰っていないんだ私。
なつみ そうなの。
あきな うん。
なつみ 学校は?
あきな いってない。
なつみ どうするの?
あきな どうしよう。なつみさん、勉強できるんでしょう。私、勉強、全然、わからなかった。難しいんじゃなくて、解からないの。なんども、同じ問題といても、いつも間違うの。へへへ、どうしようもないよね私。頭悪いんだもの。学校なんかなければいいなって思ったこともあった。せっかく、高校に入れてもらったのにね。なつみさん、すごいよね、私、なつみさんの学校、逆立ちしても入れない。
なつみ そんなことない。
あきな そんなことあるよ。すごいよ。
なつみ 止めって!お願い。
あきな ごめんなさい、また、やっちゃた。なつみさんも学校嫌いなのね。
なつみ うん。
あきな そうだよね。じゃなかったら、こんなところにこないものね。
なつみ 死にたいと思ったことある。
あきな へへへ、いつも。
なつみ いつも?
あきな うん、いつも。死ねたら、どんなに楽だろうなーって思う時あるよ。
なつみ 私も。そのエプロン面白いね。
あきな ありがとう。これ、部活で習ったの。
なつみ 部活?なんの部活?
あきな ちょっと、恥ずかしいけど演劇部。幼稚園でこれやったの。
なつみ お芝居好きなの?
あきな うん、大好きだよ
なつみ 私も。
あきな 本当?私、ちょっとだけ、舞台にたったことあるけど。1年生の時。
なつみ すごいね。
あきな そんなことないよ。なつみさんは?
なつみ 見るだけ。どうして、始めたの。
あきな へへへ、もう止めちゃったけど、自分を変えたかったの。違う自分になれるかもって。でも、難しいのね。できないんだよね。
なつみ できなかったの?
あきな ちょっぴり、できたかな。
なつみ 私もやってみたい。私も自分を変えたい。
あきな できるよ。きっと、なつみさんなら。
なつみ 私、できるかなあ。
あきな お芝居しよう、ここで。
なつみ ここで?
あきな うん、ここで。
なつみ でも、私、やったことないし。
あきな できるよ。やってみよう。好きなんでしょ。
なつみ 私のお母さんやって
あきな うん。
                           つづく

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