安保健+宮三女高演劇部 作 |
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登場人物 たかし 小学4年生 10才 へスース つばさ 小学4年生 10才 カルロ ホラ男 小学4年生 10才 パンショ 空男 小学1年生 7才(パンショと同じキャストで演じる。) へスースの故郷の子供たち 10才くらい 多数 |
突然、音楽 | |
三人が音楽に合わせて、へスースに近づいたり離れたりする。 | |
たかし | 両腕ないよ。 |
ホラ男 | 本当だ、あれ、ショートスリーブ、半袖だ。僕、初めて本物を見る。 |
つばさ | お前が切り落としたのか、ホラ男。 |
ホラ男 | 僕じゃないよ、僕のこれ、ダンボールだよ。それに血が付いてないよ。 |
つばさ | じゃあ、どうしてないんだよ、ホラ男。 |
ホラ男 | 僕のホラーが本当になったんだ。 |
たかし | ホラ男君のホラーって、ウソのホラ?それともホラーな世界のホラー?どっち? |
ホラ男 | 僕にもわからなくなってきた。 |
たかし | あ、あ!あの人、僕たちを見てるよ。 |
つばさ | ホラ男なんとかしろ。お前、ホラーが得意だろ。 |
ホラ男 | つばさ君、これ、僕のホラーじゃないよ。この場合、いつも人生に前向きなシンプルなつばさ君がいいな。 |
つばさ | うるさい、ぐじゃ、ぐじゃ言うな!お前が行け! |
ホラ男 | 僕には知識があるけど行動がともなわないんだ、代表的な日本の小学生だね、逃げこんにゃく!(コンニャクのようにグシャリと倒れる。つばさもクローズしてしまう。) |
ホラ男 | とにかく、あいつの両腕を切り落としたやつがいるかもしれない。日本のどこか、この近くで戦争が始まったかもしれない、ここは危ない逃げよう。 |
つばさ | うん。 |
たかし | 待って! |
つばさ | たかし、どうした! |
たかし | こっち見てるよ。 |
つばさ | いいから行いくぞ。 |
たかし | 困ってるみたいだよ。両手ないんだよ。困ってるよ。 |
つばさ | たかし、危ないぞ。近づくな! |
ホラ男 | たかし君、ホラーな世界が君を待ってるよ! |
へスース | ・・・。 |
たかし | ジュース飲む?おいしいよ。(両手のない少年にジュースを差し出す。) |
へスース | ・・・。(沈黙) |
たかし | ああ・・・腕がないんだ・・・僕・・・僕、僕そんなつもりじゃあ・・・。 |
へスース | Hi!
How are you? It’s OK. |
つばさ | ホラ男、あれ、英語か? |
ホラ男 | うん。 |
つばさ | お前、英語話せるんだろう、何とかしろよ。 |
ホラ男 | うん。 |
つばさ | お前、本当にできるのか? |
ホラ男 | うん、僕、一年生まで、アメリカに住んでいた。それに僕、小学校英会話スクールの優等生なんだ。 |
つばさ | いいから、ぐじゃぐじゃ言わず話せ!あと、帽子とってきて。 |
ホラ男 | Do you speak English? |
へスース | Yes. |
ホラ男 | 英語話せるって。 |
へスース | I terribly sorry I told you “To Stop”. Because I misunderstood you tried to cut their hands with your big knives. |
ホラ男 | These are made of ダンボール. |
へスース | Sorry for my misjudgment. |
ホラ男 | Never mind. |
ホラ男 | 君たちを助けようとして大声をあげたんだって。脅かして、ごめんだって。 |
つばさ | 本当か?もっと、長くしゃべってたぞ。 |
ホラ男 | 僕の訳は的確だから短いんだ。 |
たかし |
いじめる、つもりはないよ。友だちになり たかったの。それでジュース差し出したの。 手がないのに・・・ |
ホラ男 | I’ll never bully you. I want to be a friend. So I’ll give you juice though you don’t have hands. very sorry. |
へスース | Why don’t you think so? (笑いながら)I can drink without hands. I have a good mouse. I appreciated your kindness. |
ホラ男 | どうして、いじめだって思うの?いじめなんて思わないって。手がなくても僕には立派な口があるから飲めるって。確かに、口はついてるね、アハハハ。どうもだって。 |
へスース | I was very confused so I wanted to drink something cold. Give me your juice? |
ホラ男 | May I help you? . |
へスース | Yes, please. Will you take out my straw in my bag ?. |
ホラ男 | とっても、混乱したって、だから何か冷たいものが飲みたいって、ストローをバックから取って。 |
たかし | 僕、やっていい。 |
ホラ男 | He wants to .(少年頷く) |
へスース | yes, please. |
たかし、セリフ無しでバッグを開けるジェスチー。少年頷く。たかしのジェスターに少年が、その都度頷く。 | |
たかし | はい(2人が微笑むが、たかしに深く少年の悲しみが入り込み、啜り泣きを始める。) |
へスース | Thank you. |
つばさ | どうした、たかし?何で泣いてるんだ? |
たかし | ごめん、なんかしらないけど・・・。手がないんだよ。 |
ホラ男 | 同情は良くないよ、たかし君。 |
たかし | きっと、戦争で両腕を切り落とされたんだ。辛かったんだろうね。 |
ホラ男 | たかし君、生まれつきかもしれないよ。 |
つばさ | (たかしの言葉にぐっと来てる)・・・・泣くな、たかし・・。 |
たかし | うん。 |
つばさ | 泣くな!お前を見てるぞ。気づかれるぞ! |
へスース | (やさしく、泣いてるたかしに)smile smile laugh! Laughing makes you strong.〈少年がたかしに微笑む。〉 |
たかし | うん。(少年に頷く) |
つばさ | たかし、分かったのか。 |
たかし | (頷く)笑うんだね。 |
ホラ男 | そうだね。笑うことが僕たちを強くするんだ。. |
へスース | My name is Hesusu. |
ホラ男 | へスース君だって。 |
へスース | Japanese movie staff found me. They want to make a movie against the war. |
ホラ男 | 日本の映画のスタッフがへスース君を見つけて一緒に反戦の映画を作るため来たんだって。 |
たかし | 反戦? |
ホラ男 | 戦争と戦うことだよ。 |
へスース | I want to tell my country. |
ホラ男 | へスース君は自分の国のことを伝えたいんだって。 |
へスース | I want to tell many people. |
ホラ男 | たくさんの人に聞いてもらいたいんだって。 |
空男が飛んでくる。 | |
へスース | パンショ!パンショ! |
へスース | He is so similar to Pansyo.. |
ホラ男 | 空男君はパンショ君にそっくりなんだって。 |
飛行機の爆音。壁が開く。少年がゆっくり、すい込まれる。少年の故郷、少年の貧しいトタン屋根、10才のカルロが錆びた釘を直している。 | |
パンショ | へへへへへ、これ、いいだろ! |
カルロ | なんだ、ガラクタだ。 |
パンショ | 高く売れない、兄ちゃん、これ、銅だよ! |
カルロ | ば〜か、パンショ、鉄だ。 |
パンショ | じゃあ、これ?くつ買えない。 |
カルロ | サンダルも買えない。 |
パンショ | サンダルもダメか・・へへ、じゃあこれ?僕の取っておき!このカタツムリ大きいよ。くつ買えない? |
カルロ | ハハハ、食ったほうがいい。 |
パンショ | 食えないよ、石だよ、、このカタツムリ! |
カルロ | 石?見せろ!カタツムリじゃない! |
パンショ | じゃあ、なに! |
カルロ | アンモナイトだ! |
パンショ | なに! |
カルロ | 大昔のカタツムリだ。 |
パンショ | 大昔のカタツムリ、石なの、石なのに動けるの? |
カルロ | バ〜カ、動くわけないだろう。 |
パンショ | 兄ちゃん!僕のだ!返せ! |
カルロ | チェッ、ちっぽけなアンモナイトのくせに! |
パンショ | へへへへ |
カルロ | 惜しかったな、大きくて欠けてなかったら高く売れた。 |
パンショ | じゃあ今度はでっかくて、欠けてないの見つける。 |
カルロ | パンショ、おまえには10年かかるな。 |
パンショ | 10年!嘘だ! |
カルロ | ふん、百年だ!見つける前に、お前なんか死んでる! |
パンショ | 兄ちゃんなんか、兄ちゃんなんか、もう少しで兵隊のくせに!兵隊になって死んじまえ! |
カルロ | うるさい!そのころには、内戦は終る! |
パンショ | 終わらなーい。 |
カルロ | 終わる!終わる!終わる・・・。 |
パンショ | ・・・ごめん・・あんちゃん・・・あんちゃんが兵隊に行く前に終わってればいいね。 |
カルロ | うん。 |
パンショ | あんちゃん、何才? |
カルロ | 10才と4ヶ月。 |
パンショ | 12才の誕生日になると兵隊だから、後、1年と9ヶ月あるね。 |
カルロ | パンショ、1年と8ヶ月だ。 |
パンショ | まだまだね。 |
パンショ | ・・・。(へスースを見に行く。) |
カルロ | へスース兄さんは、まだ眠っている。 |
パンショ | ・・・母ちゃんは? |
カルロ | 市場だよ。・・・パンショ、どうした?(パンショがへスースの容態を覗いている) |
パンショ | ・・・・。 |
カルロ | パンショ、いい仕事ある。 |
パンショ | いい仕事? 僕、この前、新聞売り、クビになったよ。 |
カルロ | 今度はバスだ。 |
パンショ | バス! |
カルロ | うん。 |
カルロ | うん。バス乗って、行き先、叫ぶんだ。 |
パンショ | どうやるの! |
カルロ | にいちゃんがやって見せる。セントロ・セントロ・セントロステーション行き、パンショ、やってみろ。 |
パンショ | うん、セントロ・セントロ、セントロ・ステーション行き! |
カルロ | ホンコーネ、ホンコーネ、ホンコーネ行き。 |
パンショ | ホンコーネ、ホンコーネ、ホンコーネ行き、僕できる! |
カルロ | やるか。 |
パンショ | うん。 |
カルロ | 落ちるなよ。 |
パンショ | 落ちる? |
カルロ | バスからだよ。 |
パンショ | 大丈夫だ、あんちゃん。 |
カルロ | 本当か? |
パンショ | だって、僕、バス大好きだよ、落ちるわけないよ。 |
カルロ | パンショ、お前、バス乗ったことあるのか。 |
パンショ | あるよ! |
カルロ | かあちゃんに抱っこしてか? |
パンショ | 違う! |
カルロ | パンショ、バスからこうやって、体を半分出すんだぞ、危ないぞ、油断するとバスから落ちる。 |
パンショ | へへへへ、バスに乗れるんだ。 |
カルロ | じゃあ、明日ラ−マンさんのところへ行く。 |
パンショ | えっ!ラ−マンさん?あの太ちょの、毛むくじゃらの熊みたいな人、僕、怖いよ。 |
カルロ | じゃあ、この話、無しだな。 |
パンショ | ラーマンさんか・・・。 |
カルロ | (熊からラーマンの真似して太い声で)パンショ、お前、ずいぶん、チビだな、おれが怖か?ワハハ、やめるか?パンショ、お前チビだから、チビちゃい声しか出ないじゃないか、いいか、声が出なかったら、お前のことチビチビパンショって呼ぶぞ、ワハハ ハハ |
パンショ | ・・・兄ちゃん、それ熊? |
カルロ | ラーマンさんだよ。セントロ・セントロ・ステーション(ラーマンさんの真似で) |
パンショ | セントロ・セントロ、セントロ・ステーション!(ラーマンさんの真似で)次はエスピーノ、エスピーノ、へへへへへ |
パンショ | (兄を見て)・・・・へスース兄ちゃん、もう三日寝てるね。 |
カルロ | うん。 |
パンショ | 三日食べないと、僕、死んでる。でも、ひどいことするね。 |
カルロ | うん。 |
パンショ | へスース兄ちゃんの両腕、どこにあるんだろうね。 |
カルロ | ・・・政府軍は兄さんが二度と戦えないように両腕を切り落としたんだ。 |
パンショ | ひどいことするね。へスース兄ちゃん、もう、ハーモニカ吹けないね。あんなにうまかったのにね。僕、へスース兄ちゃんのハーモニカ大好きだった。 |
カルロ | パンショ、これ見ろ! |
パンショ | なに? |
カルロ | 地雷だ。 |
パンショ | えっ、これ地雷!おっきいね! |
カルロ | うん、これ、アメリカ製だ!高く売れる。 |
パンショ | 僕、こんなに大きいの初めてだ。 |
カルロ | 対戦車用だからみんな集まってくる。 |
パンショ | 何でも買えるね。ノートも、ガムも、チョコレートも! |
カルロ | パンショ、お前、本当は何が欲しいんだ? |
パンショ | 本当はノート欲しいんだ。 |
カルロ | ノート。 |
パンショ | うん、僕、字を覚えたいんだ。先生が言ってた字を覚えるといろんなことできるって。 |
カルロ | 偉いなパンショ。 |
パンショ | 靴はいいから、ノート買って。 |
カルロ | えんぴつはどうするんだ? |
パンショ | 母ちゃんの口紅!母ちゃんの口紅使う! |
カルロ | おまえ、ぶっ飛ばされるぞ。 |
パンショ | 大丈夫だよ |
カルロ | パンショ、これやる。 |
パンショ | これ、兄ちゃんの鉛筆・・。 |
カルロ | まだ、まだ、使える。 |
パンショ | 兄ちゃん、使わないの。これ、父ちゃんからもらったやつだよ。 |
カルロ | いい、もう使わない・・・。〈兵士になることを考えている。〉 |
パンショ | いいの、じゃあ、後はノートだね、兄ちゃん。 |
カルロ | うん、でも、これで薬かう。 |
パンショ | 薬・・・。へスース兄ちゃんのだね。ぼくのこれ(アンモナイト)も使って。 |
カルロ | パンショ、無理するな。欲しいんだろ。それに持ってると良いことあるんだぞ。 |
パンショ | 良いことって? |
カルロ | ことわざに、「良いことはカタツムリのように、ゆっくり行なわれるって」言われている。持ってると良いことある。 |
パンショ | カタツムリって偉いんだね。僕、今度、デッカイの見つけるから良い。 |
カルロ | そうか、じゃあ、あんちゃんも、もっと大物見つける。見つけたら買ってやる。 |
パンショ | 本当に! |
カルロ | その代わり勉強しろよ。 |
パンショ | うん、する。 |
カルロ | ラーマンさんでいいんだな。 |
パンショ | うん、いい。 |
突然、銃撃の音、2人が家の中に入る。へスースが 重体で横たわってる。2人の弟がへスースを家具やマットレスで守ろうとする。 | |
カルロ | 兄ちゃん、守るぞ! |
パンショ | うん! |
銃撃が強くなる。 | |
パンショ | 兄ちゃんが何か歌っているよ。 |
カルロ | 本当だ、歌ってる |
パンショ | 歌ってる、歌ってる! |
カルロ | 意識が戻ってきてる!兄さんの好きなボブ・マリーのワンラブだ!ハハハハ |
3人が歌い始める、襲撃の音とクロスして歌声が高らかに銃撃のフラッシュの中。 | |
ボブ・マリーのOne Loveが流れる。 | |
カルロが陽気にOne Loveを踊りながら歌ってる。両腕のない、へスースが登場、一緒に踊る。 | |
へスース | カルロ、どうした? |
カルロ | べつに? |
へスース | そうか? |
カルロ | うん、(明るくごまかす様に)にいさんこそ大丈夫? |
へスース | うん。 |
カルロ | 兄さんって、不死身だね。 |
へスース | そんなことない。 |
カルロ | みんな言ってるよ、兄さんは不死身だって。半年もたたないのこんなに良くなる兄さんは不死身だって。 |
へスース | パンショは? |
カルロ | 仕事だよ。 |
へスース | 車掌か。 |
カルロ | うん、バスから5回落ちたって、パンョ。 |
へスース | カルロ、お前と同じだな。 |
カルロ | パンショ。俺と同じで落ち方は上手いって、ラーマンさんが言ってる。 |
へスース | パンショも不死身だな。 |
カルロ | そうだね。 |
へスース | ラーマンさんはいい人だ。ちょっと、熊ににているけど。 |
カルロ | うん。パンショのやつ、初めはラーマンさんを嫌がっていたけど、今はうまくやってる。案外気が合うみたいだよ。 |
へスース | ・・・カルロ・・。 |
カルロ | (きっぱりと)俺、解放軍に行く。 |
へスース | ・・・・おまえが・・・・。 |
カルロ | うん、政府軍には絶対入らない。 |
へスース | ・・・まだ、お前は10才だ。12才の徴兵まで2年近くある。徴兵が嫌なら、ここを逃げることだってできる。 |
カルロ | ・・・見つかったら殺される、それに金がかかるよ。それに、そのうち10才でも徴兵されるって噂もある。それにテロも一緒に行く。それにデリートおじさんもあっちで待ってくれてる。それに、あっちでも楽しいことある。 |
へスース | カルロ、やめたほうがいい。銃で殺し合う。同じ仲間を殺すことだってある。人を殺したことを一生引きずって生きていく。母さんと何とかお前を逃がすこと考える。まだ、時間がある。カルロ、止めろ! |
カルロ | でも、もう決めたんだ! |
へスース | 俺のように二度と兵士になれないように、両腕を切り落とされることもある。カルロ、死ぬぞ、いいのか! |
カルロ | にいさん、どうしてそんなこと言うんだ! |
へスース | ・・・・辛い思いをするのは俺だけでいい。人の手を借りないと何もできないんだ。食事もトイレも満足にできない。何度死のうと思ったかお前に分かるか。 |
カルロ | 僕も兄さんのように戦いたいんだ。 |
へスース | この手があったたら・・お前を力ずくで止める・・。戦争はもういい・・。 |
カルロ | ・・・兄さん、俺、父さんが死んだ日・・・兄さんが母さんに話してたこと覚えてる。 |
へスース | ・・・・。 |
カルロ | うん。にいさんが解放軍に入ることを決めた日。みんなを自由にするために戦うんだって兄さん言ってた。人を人と思わない俺 たちを家畜のように思ってる汚いやつらと戦うって兄さん言っていた。この戦いは弱い人たちを助けるための戦いだって、にいさん言っていた。立ち上がらないといつまでもこのままだって。政府軍に入ることはやつらのために戦うことだって、政府軍に入るのは死んでも嫌だって兄さんいってた! |
へスース | ・・・・・かあさんには言ったのか。 |
カルロ | ・・言ってない。 |
へスース | ・・言わないほうがいい。 |
カルロ | うん。兄さん、本当は政府軍に入るのが怖いんだ。デリートおじさんがいい。 |
へスース | カルロ、大丈夫だ。デリートおじさんと一緒なら。 |
カルロ | うん、大丈夫。俺、兄さんのように不死身だよ。 |
へスース | そうだな。カルロ、いろいろ心配かけたな。 |
カルロ | 俺、兄さんが心配なんだ・・・。 |
へスース | 俺のことは心配しなくていい。 |
カルロ | 本当に大丈夫? |
へスース | うん、パンショがいる。 |
カルロ | そうだね。パンショが赤ん坊のころ、兄さんがおんぶして育てたんだもんね。 |
へスース | あれで、なかなか気が利く。 |
カルロ | 兄さん知っている、解放軍がエルサを解放したって。 |
へスース | 本当か! |
カルロ | うん、夜に、町じゅうにビラがまかれた。 |
へスース | すごいな、じゃあ、もう少しで、この町にも来るな。 |
カルロ | うん。 |
へスース | もう少しで内戦終がわる。 |
へスース | カルロ、ラジオをかけてくれ。(曲が流れる。) |
へスース | これ、お前にやる。 |
カルロ | 兄さんいいの。これ、父さんの形見だよ。 |
ヘスース | うん、いい。おまえにやる。 |
カルロ | いい曲だね。 |
へスース | カップで蓋をするともっと良く聞こえる。 |
カルロ | 本当! |
パンショが紙ほたる(ろうそくを入れて飛ばす風船)を持ってやってくる。 | |
パンショ | へへへへ、きれいだね、これ、もらった。 |
カルロ | この紙ほたるおっきいな。 |
パンショ | 明日、みんなで飛ばすんだ。 |
カルロ | 踊るぞ、パンショ。 |
パンショ | えっ、兄さんと踊るの。 |
カルロ | 嫌か? |
パンショ | 嫌だ。 |
カルロ | マリヤでなくて、悪かったな。 |
パンショ | マリヤって? |
カルロ | マリヤと紙ほたる飛ばすんだろう。 |
パンショ | 違うよ! |
カルロ | 赤くなってるぞ、パンショ。 |
友達1 | パンショ、行くぞ! |
友達2 | パンショ、早く行かないと、マリヤに怒られるぞ。 |
パンショ | 変なこと言うな、テロ! |
ラジオの曲が高くなり暗くなる、曲に合わせ紙ほたるが踊る。真っ暗になりバスのエンジン音〉 | |
パンショ | セントロ、セントロステーション、セントロ、セントセントロ、ロ、セントロステーション |
パンショが身を乗り出し何度もセントロステージョンを叫び、下手から上手に移動するが途中で銃撃戦の音、パンショが銃に撃たれ死んでいく。 | |
パンショ | 兄ちゃん!痛いよー! |
ハーモニカでone loveが明るく流れる。 | |
カルロ | パンショ、ノート買ってきたぞ!これで字書けるぞ!パンショ・・・パンショ、起きろ、起きろ!(死んでるパンショを揺す続ける。) |
銃撃の音の中、へスースが狂ったように走り回る。壁が閉じていく。 | |
へスース | うわあああああああ! |
たかし、つばさ、ホラ男の三人がへスースをつかえ、少しずつ落ち着いてくる | |
少しの間をおいて、へスースが吐き出すように言う | |
へスース | Pansho was only seven years old. |
ホラ男 | パンショ君、7才だったって。 |
つばさ | パンショ君は、空男と同じ年で死んだんだ。 |
たかし | カルロ君は? |
ホラ男 | What about Carlos? |
へスース | He is fighting for my country. |
ホラ男 | カルロ君は自分の国のために戦っているって。 |
つばさ | 本当に12歳で戦争に行くんだね・・・。 |
たかし | 僕だったら生きていけない・・・。死んじゃうかも・・・。カルロ君って強いね。僕も強くなりたいな。 |
つがさ | 泣くな、たかし。 |
たかし | うん。 |
空男が飛んでくる。思わずつばさが抱きつく。 | |
空男 | ぶーん、ぶーん、ぶーーん |
つばさ | 空男! |
空男 | あんちゃん、やめろ!気持ちわるいぞ!あんちゃん・・・・あんちゃん、どうしたんだ・・泣いてるのか。 |
つばさ | バカ、泣くわけないだろう。〈空男をごつく。〉 |
空男 | ワーン、ワーン、あんちゃんがいじめた。 |
つばさ | 泣くな空男、笑え! |
空男 | じゃあ、あれとって。 |
つばさ | こいつ、泣きまねしたな。 |
空男 | へへへへへ。 |
つばさ | カタツムリか? |
空男 | うん。 |
つばさ | お前、変なやつだな。カタツムリより兜虫のほうが良いんじゃないか?高くて取れないぞ。 |
ホラ男 | 空君、兄ちゃんに踏み台になってもらえばいいよ。 |
空男 | うん! |
つばさ | ホラ男、余計なこと言うな! |
空男 | あんちゃん、早く! |
つばさ | しょうがねえな・・・。(踏み台になり、空男がカタツムリを取る) |
空男 | やった!へへへへ(笑いながら下手へ消える) |
間 | |
たかし | へスース君、両手なくて大変だね。 |
ホラ男 | hard to live without hands? |
へスース | I'm good not to have hands. I killed a person. |
ホラ男 | ・・・really? |
へスース | Yes(静かに微笑む) |
間 | |
たかし | どうしたのホラ男君・・・へスース君、なんて言ったの。 |
ホラ男 | ・・・へスース君は人を殺してしまったんだって。だから手がなくていいって。もう、人を殺さなくてすむって・・・。 |
たかし | へスース君・・・(たかしが啜り泣く) |
へスース | (優しく)Smile. |
たかし | でも僕、でも僕・・・。 |
へスース | Look at the Sky so your tear stops. |
ホラ男 | 見上げると涙が止まるって。 |
たかし | うん。(涙がこぼれないように上を見て歩き回る。) |
へスース | |
Will you take me to the station? Japanese movie staffs are waiting now. | |
ホラ男 | Movie staffs! |
へスース | Yes. |
ホラ男 | すばらしいWonderful! Wonderful! |
つばさ | どうした、ホラ男。 |
ホラ男 | 今、へスース君を日本の映画スタッフが待ってるんだって。たかし君行こう。ひょっとすると、僕のホラー映画、〈七人のサダコ〉も作ってくれるかもしれないよ。 |
つばさ | おまえって、本当に変なやつだな。 |
ホラ男 | 玉こんにゃく(コンニャクのように倒れて丸くなる。) |
つばさ | おまえ、本当に、こんにゃく好きだな。 |
空男 | (へスースに)へへへへ、カタツムリだよ。 |
へスース | snail |
ホラ男 | Yes、カタツムリ |
へスース | カ・タ・ツ・ム・リ |
ホラ男 | yes! |
たかし | あっ! |
つばさ | どうした、たかし? |
たかし | あ!あそこにカタツムリが、いっぱいいるよ。 |
つばさ | 本当だ、いっぱいいる。あんなところまで登るなんて、空男、カタツムリは偉いな。 |
空男 | こんな、のろまが偉いのか、あんちゃん。へへへへ、僕のほうが偉いぞ。 |
つばさ | 生意気ゆうな、こいつ!〈空男の頭をごつく。〉 |
空男 | また、あんちゃんが、また、いじめた、あんちゃんのバーカ!〈空男が飛んでいく。〉 |
たかし | 僕もカタツムリのように高い壁をのぼりたいなあ。 |
つばさ | 行くぞ、たかし。 |
たかし | 僕、ここで蝸牛見ながら練習する。 |
つばさ | 練習? |
たかし | うん。僕、笑う練習する。僕、あの蝸牛のように高い壁を登る。僕、カルロ君みたいに強くなる。 |
音楽が流れる。たかしを残してみんなが立ち去る | |
たかしが壁の前に立って笑い方を練習する。 | |
壁が開く。カルロが銃を持って戦ってる。2人にポットライト、やがて2人は自分たちの未来の一点を真剣に見つめる。 | |
幕 |