安保健+宮三女高演劇部 作 |
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登場人物 たかし 小学4年生 10才 へスース つばさ 小学4年生 10才 カルロ ホラ男 小学4年生 10才 パンショ 空男 小学1年生 7才(パンショと同じキャストで演じる。) へスースの故郷の子供たち 10才くらい 多数 |
夏、小学生の子供たちの通学路、とても大きな壁のある、赤い自動販売機、赤い郵便ポストがある。 | |
ランドセルを背負った飛行機好きの少年、空男が飛行機の真似をして上手からやって来る。 | |
空男 | ぶーん、ぶーん、ぶーん |
一度下手に消えて、再び下手からやってくる。 | |
空男 | ぶーん、ぶーん・・・あっ! |
高い壁にカタツムリがいるのを見つける。カタツムリを取ろうとする。ジャンプしても取れないので、飛行機になって飛んで取ろうとする。諦めて、壁を蹴っ飛ばす。 | |
空男 | ちぇっ。ぶーん、ぶーん |
そのまま、飛びながら下手に消える。 | |
空男 | あ、忘れてた! |
下手から現れて、自販機のおつり口をあさる。お金を発見する。 | |
空男 | へへっ、ラッキー! |
音楽、空男が笑いながら下手へ退場。 | |
音楽の流れる中を小学4年生のランドセルを背負った、たかしがトボトボ歩いてくる。学校に行けなくて、たかしは壁にそって行ったり来たりする。つばさが上手からゆっくり登場、たかしを見つめる。たかしは高い壁を見つめて壁に顔をつける、まるで壁が、行き止まりのたかしの気持ちを表すように。そして、壁にカタツムリのようにへばり着く。たかしのランドセルがカタツムリの重い殻のように見える。ランドセルを背負った、赤い帽子をかぶっているつばさがゆっくり、たかしに近づく。 | |
たかし | この壁、高いなぁ・・・。 |
つばさ | どうした、たかし。 |
たかし | 僕の・・・僕のランドセル重いんだ。 |
つばさ | 何、入っているんだ、おまえのランドセル? |
たかし | ノートと教科書と消しゴムだよ。 |
つばさ | 鉛筆は入ってないのか? |
たかし | あ、入ってるよ。 |
つばさ | なんだ、俺と同じじゃないか。お前のランドセル、カタツムリの殻みたいだな。 |
たかし | ・・・・。 |
つばさ | 大丈夫か、たかし。 |
たかし | うん、、、。 |
つばさ | 学校で、何かあったのか?たかし。 |
たかし | ・・・。 |
つばさ | たかし、笑え。 |
たかし | 笑うの? |
つばさ | うん、笑えば元気出る。 |
たかし | 僕できないよ・・・。 |
つばさ | いいから、オレの後について笑え、ハハハハハ |
つばさ | しょうがないな、これ、特別、おまえにやる。〈ドリンクを差し出す。〉 |
たかし | ・・・何それ? |
つばさ | ばあちゃんの特製ドリンクだ。 |
たかし | 僕、飲むの?おばあちゃんが飲むんじゃないの?〈ちょっとせめるように〉 |
つばさ | 違う!ばあちゃんが作ったんだ。 |
たかし | つばさ君のおばあちゃんが作ったの? |
つばさ | そうだよ、いいから飲め。 |
たかし | 変な味だね。〈変な顔して〉 |
つばさ | へへへへ、赤マムシが入ってるからな。 |
たかし | 赤マムシ?〈顔を上げる〉 |
つばさ | 毒ヘビ、利くぞ。 |
たかし | わ、わああああっ!〈壁のところへ戻る〉 |
つばさ | へへへへへ、うそだよ。ニンジンだ。 |
たかし | 毒へびじゃないの? |
つばさ | ばあちゃん特製の朝鮮人参、高いぞ。 |
たかし | 本当に? |
つばさ | 本当に。 |
たかし | 〈ほっとして〉よかった、じゃあ、僕全部飲むね。僕、ヘビだめなんだ、怖いんだ。きっと、全部飲んだら死んでたよ。 |
つばさ | おまえって本当に弱いな、 |
たかし | つばさ君、ひどい。 |
つばさ | いいから飲め、ビール飲むみたいにぐっと飲むんだ。 |
たかし | つばさ君ビール飲むの?小学生なのに、えらいね。 |
つばさ | いいから、ぐっといけ、ビールは、のどごしで呑むんだ。 |
たかし |
つばさ君って、大人みたいだね 〈たかし、目をつぶりながら飲む。〉 |
たかし | は〜っ。 |
つばさ | どうだ、利いたか? |
たかし | うん、なんか元気でできた、この味、結構いけるね。 |
つばさ | そうか?へへへへ。(つばさがニヤニヤしている。) |
たかし | つばさ君、どうしたの? |
つばさ | いけるか?朝鮮人参って高くて買えないんだよな・・・へへへへ・・・ |
たかし | え? |
つばさ | たかし、よかったな、生きてて、ハハハハ |
たかし | つばさ君、ひどい・・。〈壁のところへ戻る〉 |
つばさ | どっちだっていいじゃないか 〈たかしを壁から引き剥がす〉生きてるんだから情けない顔するな、さあ、思いきり笑うぞ!ハハハハハ |
たかし、どうしようもなく笑うが、最後にヤケッパチになって大笑いする。2人は大笑いする。 | |
つばさ | たかし、苦しくなったら、今みたいに大声で笑うんだ。・・・おまえ、考えすぎなんだ。笑え、笑うといいことある。 |
たかし | 僕、のろまだし、僕にはいいことないよ、頭も、のろまって言われるし。 |
つばさ | 大丈夫だ、たかし、亀よりは速いよ、ははははは |
たかし | つばさ君、ひどい、僕を亀と比べるなんて。 |
つばさ | ごめん、たかし。とにかく苦しくなったら、笑え。88歳のばあちゃんが毎日言ってる。 |
たかし | つばさ君のおばあちゃん88歳なの、すごいね。 |
つばさ | うん、毎日、ヘビ食べてるから長生きできるんだ。ばあちゃん、毎日言ってる、つばさ、苦しくなったら、笑え、笑えば、百まで生きれる。 |
たかし | つばさ君っていいひとだね・・・ありがとう。〈たかしが転ぶ〉 |
つばさ | どうしたんだ、たかし! |
たかし | バナナの皮ですべった。このドリンク、僕のために持ってきてくれたんでしょう?それに僕のために、マラソン大会でワザとビリになってくれたじゃないか。 |
つばさ | 違う! |
たかし | つばさ君、ビリじゃなかったの?じゃあ、誰がビリなんだ。 |
つばさ | バーカ、おれがビリだよ。 |
たかし | じゃあ、何が違うの? |
つばさ | お前のためにビリなんかになったんじゃない。 |
たかし | だって、つばさ君、去年、3位だよ。ワザとじゃなかったらビリになれないよ。 |
つばさ | それがなれるんだな。急に腹が痛くなったんだ。 |
たかし | おなかが痛くなったの・・・。 |
つばさ | たかし、おまえの頭大きくてよ、足短いから、アンパンマンが走ってるみたいで、笑いが止まらなくなったんだ、ハハハハハハ |
たかし | つばさ君、ひどい。 |
つばさ | あっそうだ、アンパンマンは飛べるんだった。 |
たかし | ・・ふふ、ふふふ・・・僕、アンパンマンになりたいな。 |
つばさ | ・・・・あーあ、笑えね。 |
たかし | へへへへ・・・。 |
つばさ | どうした、たかし? |
たかし |
へへへ、つばさ君の頭も結構大きいよ、それ に、つばの顔のほうが丸くて、ホッペもふっ くらしてアンパンマンに似ているよ。アンパ ンマンのマント付けたらそっくりだね。ハハハ |
つばさ | 、、、、うるさい!行くぞ、たかし。 |
空男がアンパンマンのマントをきて飛んでくる。 | |
空男 | ブ〜ン、ブ〜ン、ブ〜ン、キューン、バババ、キューン、バババ |
つばさ | こらー!そら男、早く、家に帰れ!かあちゃんにゴンケツされるぞ! |
空男 | ブーン、ブーン、ブ〜ン、あんちゃんのバーカ! |
つばさ |
こら!(空男が下手に消える。) |
つばさ | たかし、行くぞ。 |
たかし | うん。(思い出したように手を叩く)あ!・・ああああ!僕のテストない! |
つばさ | ハァ?テスト? |
たかし | ここにかくしたんだ!! |
つばさ | おまえ、こんなところにテストかくしたのか?お前の12点のテスト、悪いやつに見つかったら、どこかに貼られるぞ。 |
たかし | 12点じゃないよ、14点だよ。 |
つばさ | たった2点しか違わないじゃないか。 |
たかし | 僕には2点の差は大きいんだ。 |
たかし、うなだれて | |
たかし | 僕どうしよう・・・テスト貼られたら生きていけない・・ |
ホラ男 |
ヒヒヒヒ、フフフフ〈ちょっとの間〉 |
ホラ男〈ホラーが好きな小学4年生〉が覗いてる。 | |
つばさ | たかし、どうした?変な笑い方するな。 |
たかし | 僕、笑ってないよ。 |
つばさ | ・・・・。 |
たかし | ・・・つばさ君、あそこに誰かいるよ。 |
つばさ | あそこって、、、、、。 |
たかし | あそこの陰。 |
つばさ | だれもいないぞ、嘘つくな。 |
たかし | 嘘じゃないよ、あそこにいたんだ |
つばさ | どんな顔してた?変な顔してたか? |
たかし | うん。 |
つばさ | ニコニコしてたか? |
たかし | うん。 |
つばさ | ニコニコ変態かもな |
たかし | うん。 |
つばさ | おまえ「うん」ばっかしだな。本当に見たのかよ、いないぞ! |
たかし | 見たよ! |
ホラ男 | ヒヒヒヒ |
一瞬の間 | |
たかし | 笑えだね、つばさ君、ハハハハ |
つばさ | オレ、笑ってないぞ・・・。 |
たかし | あそこ・・・。(たかし指差す) |
つばさ | どうした、たかし・・? |
たかし | さ・だ・・・ |
つばさ | さ・だ・? |
たかし | さだこーっ! |
つばさ | うわあーっ! |
逃げようとしているつばさに、たかしが抱きつく。 | |
照明が落ちて、ストロボの中をサダコが出てくる、実はホラ男で白い着物を身に付け白いランドセルを背負ってカメラを持って立っている。 | |
ホラ男 | ヒヒヒヒ、、、、やっぱり、君たちが一番驚いたな、ガシャ。僕、毎日、ここで、サダコちゃんになって、ホラー実験やってるんだ、ガシャ。こんなに激しく抱き合ったのは君たちが初めてだね、ガチャポ〜ン。僕の研究だと君たちが一番ホラーに弱いんだ。ガチャポ〜ン |
つばさ | ワァ! |
ホラ男 | つばさ君、このサダコちゃんルックスかっこいい?恋はタイタニック、ホラーはやっぱりサダコだね。僕、ランドセルまで白くしたよ。 |
つばさ | よりによってたかしと抱き合ってるところをホラ男に見つかるなんて、ホラ男はサダコのようにしつこくてネチネチで世界の終わりだ、みんなに言いふらされるホラーな世界が僕らを待ってる、僕たちは破滅だ、もう終わりだ、ジ・エンドだ、おいいおえおあおいいうあうあえ・・・・ |
ホラ男 | つばさ君、何、円周率みたいなこと言ってるの?僕、ちょっと、疲れたな。僕、座りたいな。ここにチェアーがあるといいな。君たち、チェアーって分かる?イスだよ、僕、ソフトなイスがあるといいな。 |
たかし | いいよ、僕なるよ。 |
ホラ男 | 僕、たかし君のブヨブヨのイスじゃなくて、つばさ君のちょっと固めな、ナイスなチェアーがいいな。つばさ君のイスでイスか?なんてしゃれ言ちゃって |
たかし | ふふふふふ・・・ |
ホラ男 | ハハハハ、ガチャポーン。つばさ君、はやくイスになってよ |
つばさ | いやだ。 |
ホラ男 | 僕のこの研究成果、発表しようかなあ。 |
つばさ | チェっつ。 |
ホラ男 | つばさ君、チェじゃなくて、チェアーだよ。たかし君、これプレゼント。 |
たかし | プレゼント?あーっ、これ。僕の14点のテストだ! |
ホラ男 | たかし君、このスペシャルも受け取って欲しいな。 |
たかし | これ、つばさ君のテストだ、すごい、91点だ! |
ホラ男 | たかし君、よく見なよ。 |
たかし | あっつ、16点だ!ふふふふふ・・・ |
ホラ男 | たかし君、つばさ君のほうが、ずっと分かりやすい所に隠していたよ。たかし君のほうがナイスだね、ハハハハ |
たかし | ありがとう、ホラ男君 |
ホラ男 | ワーっつ |
つばさ | なめんなよ、ホラ男 |
ホラ男 | きたねえ、なんで僕がおまえの顔、なめるんだよ? |
たかし | やめなよ、つばさ君、死んじゃうよ。 |
ホラ男 | 暴力ハンターイ。 |
つばさ | ・・・こいつ、俺たちのテスト盗んだんだ。最低のやつだ。おまえのテストも見せろ! |
ホラ男 | へへへ、、、ここにあるよ。 |
つばさ | 100点・・・。 |
ホラ男 | ガチャポーン、僕はとてもエクセレントな小学生なんだ。いつも100点なんだ。君たちと違って、とってもクレバーなんだ。 |
つばさ | うるさい、どうして、俺たちのテスト盗んだんだ? |
ホラ男 | 盗んだじゃないよ、拾ったんだ。 |
つばさ | どうするつもりだったんだ、俺たちのテスト? |
ホラ男 | 君たちがビリか、確認したかったんだ。 |
つばさ | ふざけるな! |
ホラ男 | ふざけてなんかいないよ。僕にとって君たちがビリだってことは、とっても大切なんだ。へへへ、ここに全員ぶんのテストがある。 |
たかし | 僕たちビリなの? |
ホラ男 | うん、そうだよ。でも、とても、いいことなんだ。 |
たかし | ビリがいいことなの? |
ホラ男 | 君たちが一番学校から遠い人たちなんだ。 |
つばさ | じゃあ、100点のおまえは一番学校に近いのか。 |
ホラ男 | 残念ながら、そうなる。 |
たかし | 学校がなければいいのにね。 |
ホラ男 | それはとってもHappyなことだね。 |
つばさ | ホラ男、マラソン大会どうしたんだ? |
ホラ男 | どうしたって? |
つばさ | ズルしたろう。 |
ホラ男 | つばさ君、スクールの意味おわかり? |
つばさ | スクールって学校に決まってるだろう、バカにするな。 |
ホラ男 | バカにしてなんかいないよ。もともとの意味だよ。 |
つばさ | こいつなに言ってんだ、もったいつけないで言え。 |
ホラ男 | ひまだよ。 |
つばさ | ひま? |
たかし | ひまってなに?ホラ男君。 |
ホラ男 | ひまって、時間がたくさんあるってことだよ。スコラ、ギリシャ語でひま。 |
つばさ | こいつ、なに言ってるんだ |
たかし | ホラ男君、それおかしいよ。学校って、みんな勉強勉強でひまじゃないよ。 |
ホラ男 |
そうね、みんなbusyね。本当に泣けるね。特 に、勉強のできない君たち見てると泣けるね こんにゃく。(コンニャクのようにグシャ シャリと倒れる。) |
つばさ | いいかげんしろよ、ホラ男。 |
ホラ男 | へへへ、とにかく、僕、もう学校へ行かなあい。 |
たかし | 先生に怒られるよ。 |
ホラ男 | いまのスクールなんか行ったってどうしようもない、ナンセンスだよ。 |
たかし つばさ |
ナンセンスって? |
ホラ男 | ばかばかしいってこと。 |
つばさ | ホラ男、日本語使え。 |
ホラ男 | 日本語?日本は滅びるよ。その前にスクールが滅びるかな。 |
つばさ | アーア、ホラ男のほら吹きが始まった。 |
ホラ男 | 僕の言ってることはリアルだよ。このままだと日本は必ず滅びる。世界にはいたるところにホラーがある。そして、回転こんにゃく。(たかしが拍手する)いや、毎年3万人自殺する日本は、もう十分にホラーかな。 |
たかし | ホラーな世界って、怖い世界?首が無くなったり、手が飛んだりするの?だったら僕生きていけないよ。 |
ホラ男 | そうだね、今のたかし君には無理だね。僕のヘルプがないと無理だね。 |
つばさ | たかし、ホラ男の嘘に騙されるな。ハハハハ、どうして日本がホラーな世界になるんだよ、ホラ男。 |
ホラ男 | つばさ君、僕たちが、もう少しで徴兵されるとしたらどうする? |
つばさ | 徴兵? |
ホラ男 | 兵隊になって戦争に行きたい? |
たかし | ホラ男君、僕たち小学生だよ。 |
ホラ男 | 世界では、今、僕たちと同じ年の少年たちが30万人、銃を持って、死に物狂いで戦ってる。 |
たかし | 30万人・・・。 |
ホラ男 | エルサルバトルの政府は内戦のとき12才で少年を徴兵した。 |
つばさ | 嘘だ! |
ホラ男 | 嘘じゃないよ本当だよ。イラクの北部のクルディスタンでは危険な地雷を子供が自分で雷管を外して売っている。 |
たかし | 本当に本当なの。 |
ホラ男 | うん、本当に子供がやってるんだよ。たかし君、ここから覗くと見えるよ。 |
たかし | これポストだよ。 |
ホラ男 | これは僕の作ったホラーポストなんだ。 |
たかし | ホントに? |
ホラ男 | 普通、こんな所にポストなんてないよ。このポストだけが世界と繋がってるんだ。 |
つばさ | 止めろ、たかし。ホラ男の催眠術にだまされるな。 |
ホラ男 | 穴が二つあるから、つばさ君も覗くといいよ。 |
つばさ | 止めろ、たかし! |
音楽が流れる。ポストから光がもれる。一人の少年が現れる。 | |
ホラ男 | あの少年の手がないのが分かる?あの少年は南アフリカのシエラレオネの少年なんだ。ダイヤモンドの利権争いで国が二つに割れ内戦が起きた。あの少年は無理やり拉致され少年兵にされ敵に捕まり二度と戦闘員なれないように手首を切り落とされたんだ。これをロングスリーブ、長袖って言うんだ。腕から切り落とされるとショートスリーブ、半袖っていうんだ。(照明もとに戻る。)たかし君、見えた? |
たかし | ううん、見えない。 |
ホラ男 | 君たちは暗記勉強ばかりさせられている。想像力がない。コンニャク、教育日本、最悪。バンザイ! |
たかし | 見えた気がする。僕、怖くなってきた。 |
つばさ | 騙されるな、たかし。こいつはホラー見すぎで頭が変になっている。 |
ホラ男 | 僕、騙してなんかいないよ。でも、君たちはいつも、騙されているんだ。 |
つばさ | 誰が騙しているんだ! |
ホラ男 | 日本だよ。 |
たかし | 日本? |
ホラ男 | うん、日本だよ。 |
つばさ | お前、本当に頭、変じゃないか。病院に行ったほうが良いんじゃないか? |
ホラ男 | 9・11テロ事件知ってる? |
つばさ | テロ? |
ホラ男 | テロ組織がアメリカのワールド・トレイドセンターに旅客機を突っ込ませた事件だよ、知ってる? |
たかし つばさ |
・・・・・。 |
ホラ男 |
知らないの?とても有名な事件だよ。500 0人以上の人が死んだんだ。事件の直後、イ ラクの人たちが手を叩いて喜んでいるシーン がテレビで流れたんだ。たくさんの人が死ん だのにイラクの人は喜んでると世界中の人は 思ったんだ。でも、そのシーンは嘘 だったん だ。湾岸戦争が終わって、良かったって喜ん でいるイラクの人たちだったんだ。つばさ 君、どう思う? |
つばさ | ホラ男、おまえ、なに、大人みたいなこと言ってんだ。 |
たかし | ・・・ホラ男君、本当なの? |
ホラ男 | 僕が嘘をついても何の得にもならないよ、本当だよ。世界中のテレビ局は間違いでしたって訂正したんだ。でも、日本はしていない。 |
たかし | 学校で教えてくれないの? |
ホラ男 | たかし君、教えてもらった? |
たかし | ううん・・教えてもらってない。 |
ホラ男 |
君たち小学生は、とても、シンプルで、お人 良しなんだ。特に成績のいいやつらは学校を 拒否できないから学校に疑問を持たない。 でもビリの君たちは学校に見放されてるから 学校に疑問を持てるんだ。つばさ君良かった ね、ビリで。おっと、つばさ君はビリから二 番目だったヒヒヒヒ。 |
つばさ | ちくしょう!俺をバカにしやがって! |
つばさがホラ男に飛び掛る。2人は取っ組み合う。 | |
たかし | つばさ君止めて! |
つばさ | たかし・・・。 |
たかし | 僕、学校が怖い・・・。先生の目が怖い。・・・テストで、みんながシーンとしている時、とっても、怖い・・・・。 |
ホラ男 | それって、十分にホラーだね。たかし君飲む?(ホラ男がジュースを自動販売機から出してたかしに渡す。) |
たかし | それ、本当にジュース? |
ホラ男 | そこで、買ったばかりだよ。 |
たかし | じゃあ飲む、ありがとう。これおいしいね。 |
ホラ男 | グット・テイストだよね。つばさ君にもあげるね。 |
つばさ | いらない、自分で買う。 |
ホラ男 | つばさ君って頑固だね。 |
たかし | でも、いいとこあるよ。 |
ホラ男 | そうだね、マラソン大会でわざとビリになったしね。 |
つばさ | 違う! |
たかし | やっぱり、僕のためにビリになったんだね。 |
ホラ男 | たかし君、そんなの誰だって分かるよ。誰が見たって、たかし君がビリだよ。亀は1メートル42秒で歩き、カタツムリは7分
22秒で歩く統計が出てるから、たかし君 はカタツムリよりは速いけど亀よりは遅い かな、ハハハハ |
たかし | ホラ男君、このジュースとってもまずいね。 |
ホラ男 |
ごめんね、まずくしちゃったね。糸こんに ゃく(糸こんにゃくのようにぐしゃりと倒 れる)。どうしたの、つばさ君。 |
つばさがジュースを取ろうと自動販売機のジュ ースの出口に手を入れている。 | |
ホラ男 | つばさ君、どうしたの?中から取ろうとしているの?とってもナンセンスだね。ちょっと原始的で、でもつばさ君らしいね。ハハハハハ |
つばさ | うるさい!ああああ・・・〈つばさの手が自動販売機から抜けなくなる。〉 |
たかし | つばさ君大丈夫?手抜けないの、僕が抜いてあげるよ。 |
つばさ | やめろ、たかし! |
たかし | ああああ・・僕の手も抜けない。ホラ男君、助けて! |
ホラ男 | いいよ。ヒヒヒヒヒヒ・・でも、僕、ホラ男だよ。ヒヒヒヒ・・・ロングスリーブ、ショートスリーブ、半袖、長袖。血だらけの両手のないつばさ君が歩いてくる、その後ろを血だらけの両手のないたかし君があるいて来る。これってダブルホラーね、ヒヒヒヒヒヒヒヒ、シャキーン(大きなダンボールのナイフを出す) |
つばさ | やめろ!ホラ男!あああああああ |
たかし | あああああああああああああ |
両手のないへスースが来る。 | |
へスース | No! Stop! Don’t do that! |
ホラ男 | わあーっ! |
ホラ男、たかし、つばさが這って逃げて退場。 | |
つづく |