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偏った光の話 〜君にも見えるハイディンガーのブラシ〜



空にあふれる光。 光は粒子としての性質と波としての性質を併せ持っています。 波としてみたときは「横波」であり、進行方向 (光が飛んで行く方向) と垂直な向きに波打っています。 進行方向と垂直な方向というと 360度ぐるりと選択肢がありますが、どっち向きに波打っているのでしょう?

太陽や電球などからやってくる光の場合は、いろいろな方向が混ざっています。 その混ざった中から、特定の方向に波打った光だけを取り出すことができます。 そうした、特定の方向にだけ波打った光を、(直線) 偏光といいます。 取り出すフィルタを、偏光フィルタと呼びます。 波打つ面がくるくる回る円偏光というのもあるのですが、それはここではおいておきます。

これを読んでいる人に一番身近な「偏光」は液晶ディスプレイの光でしょうか:-)。 ディスプレイの一番手前に偏光が崩れるようなフィルタがついている場合もあるのですが、 スマホの画面なども含めたいていの液晶ディスプレイでは偏光になっていると思います。 カメラ用の偏光フィルタなどをお持ちの方は、ディスプレイの前でくるくる回してみてください。 画面がほとんど真っ暗になる方向があると思います。

液晶画面の偏光(1) 液晶画面の偏光(2) 液晶画面の偏光(3)

他には、ガラスや水面に浅い角度で反射した光が、偏光成分が強くなります。 カメラ用の偏光フィルタは、水面などへの映り込みを少なくしたり逆に強調したりするときに使われます。 釣り人などが使う偏光タイプのサングラスは、水面の反射を取り除き、 水の中を見えやすくする効果があります。




空の偏光

そして、空にも偏光はあります。 まず挙げるべきは虹です。 雨上がりに現れる普通の虹 (主虹、副虹) は、強く偏光しています。 なので、偏光フィルタを使うと、虹を「消す」こともできます。 方向は、半径方向、即ち、弧の向きと垂直な方向なので、虹のてっぺんで消える方向に回したフィルタを、 そのままの方向で虹の根元に近いところに向けると、虹は見えます。

虹の偏光(1) 虹の偏光(2) 虹の偏光(3)

そして、青空も偏光しています。 偏光度合いは太陽からの角度によって違い、太陽に対して 90度の角度になるあたりが、 最も強く偏光しています。 方向は太陽に対して垂直な方向です。 この方向の空をカメラで撮るときは、偏光フィルタを使うと、 より深い印象的な青さの空として写すことができます。

青空の偏光(1) 青空の偏光(2)

強く偏光している辺りの空の偏光の方向を見れば、太陽が今、どちらの方向にあるかが判ります。 太陽が見えていなくても、です。 バイキングは、航海の際氷州石と呼ばれる透明度の高い方解石を使ってこの偏光を調べ、 日没後などでも方位を把握していたのではないか、という研究がなされています。 生物でも、蜜蜂の目はこの偏光方向をよく感知でき、方位の認識に使っているそうです。

生物でも偏光方向が判るとはおもしろいですねー。 人間も道具を使わずに判るといいのに、と思った人がいるかもしれません。 実は (ちょこっとだけですが) 感知可能です。 超能力などではなく、トレーニングなども必要なく、(たぶん) 誰でも見えます。




ハイディンガーのブラシ

人間の眼の、一番よく「見える」黄斑と呼ばれる部分の視細胞の一部が、 偏光方向によって反応がちょっと変わるのです。 ほんのちょっとなので、複雑な模様などのところ見ているときには全く判りませんが、 のっぺりしたところを見ているときには、偏光していると、 黄色と青色が十字になった小さな模様が見えます。 青色の伸びる方向が、偏光の方向です。

さっそく見てみましょう。 え? 空は曇ってるから偏光したのっぺりしたところがない? いえいえ、目の前にありますよね? (液晶ディスプレイじゃない画面など偏光してないディスプレイで読んでる人ごめんなさい^^;) 文字や絵の表示されているところだと邪魔されて見えませんが、大きな白い空白があれば、見えるはずです。

それではどうぞ。

見えましたか? いきなりは見えづらいかもしれません。 そこでちょっとしたコツがあります。 見ている方向を軸として、「回す」のです。 画面を回すのが難しい場合は、首をかしげるのです。 画面は明るくしたほうがよいと思います。 では、もう一度上の白いところを見つつ、せーのっ、はい!


今度は見えましたか? :-)


個人差がどの程度あるかは判らないので、ひょっとしたら何度か練習が要るかもしれません。 見えるか否か、どの程度濃く見えるか、など差が大きいかもしれません。 青か黄色、どちらかしか判らないかもしれません。 何度やっても見えないときは、また思い出したときにでも試してみてください。




偏光を探そう!

いきなり青空で試しても判るとは思いますが、 液晶画面などで何度か試してからだとさらに判りやすいでしょう。 慣れてくると、白い壁などでもそこそこ偏光になっていたりしてそれを検知できたりもします。 ひとたび見方が判ってしまうと、そんな感じであちこちで見えるところが発見できます。

さて、空ですが、太陽からそこそこ離れた青空部分を見て、ハイディンガーのブラシが見えたなら、 十字の黄色いほうを伸ばしていったところに太陽があります。 二箇所でブラシを見て、伸ばした線を交差させれば、完璧ですね。



よく晴れた日の日没後、暗くなってきて空が深い青色になったころに、天頂を見上げてみましょう。 見えづらかったら、ちょっと首を傾げてください。 うまくすると、かなり鮮やかにハイディンガーのブラシが見えるかと思います。 眼の中の現象なので、これは決してカメラでは捉えられない、あなただけの光景です。

ハイディンガーのブラシのイメージ


これは伝道師になろう! アドベントカレンダーの12/20分のの記事です。

2016/12/20
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