秋尾敏の俳句世界 : 俳句研究


 21世紀初頭の俳句結社のメディア志向                  ホームページに戻る


 このデータは、平成13年9月に、無作為に選んだ全国200の俳句結社に質問紙を送付し、134社から回答をいただいた結果です。
 本阿弥書店『俳壇』誌2001年12月号「俳壇時評」欄に結果の概略を記載しました。
 この調査結果は自由にご利用下さい。ただし、引用元が本ホームページであることを明記してください。

 <以下のデータの詳しい考察>


 1 貴団体の性格

@主宰を置く結社  A主宰を置かない結社 B同人誌 Cその他
100 8 21 5

  その他は、超結社誌や個人誌等です。

 
 2 貴団体の俳句誌が発行されている都道府県

東京 31 愛知 4 愛媛 2 沖縄 1
千葉 14 栃木 3 熊本 2 岡山 1
神奈川 14 山口 3 奈良 2 香川 1
埼玉 8 長野 3 徳島 1 高知 1
北海道 8 群馬 3 山形 1 兵庫 1
大阪 6 茨城 3 宮城 1 富山 1
静岡 5 京都 2 宮崎 1 福島 1
青森 4 岐阜 2 三重 1 新潟 1

 この数値は、回答をいただいた結社の実体ですから、各都道府県の俳誌の発行状況を表してはいません。
 また、アンケートの依頼数も、各都道府県の均衡を考慮してはいません。


 3 おおよその会員数(同人等も含むすべての参加者・雑誌贈呈者は含まない)をお答えください。

@50人未満 A50〜99 B100〜199 C200〜299 D300〜399 E400〜499 F500〜999 1000以上
19 33 22 5 13 17 20 2

 いわゆるM型分布です。200人から300人規模の結社は運営がむずかしいのでしょうか。
 それとも、人数が増えていく過程で、このあたりに壁があるのでしょうか。


 4 参加者のおおよその平均年齢を教えてください

20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳代 80歳代 不明
0 1 3 25 85 15 0 3

 各協会の平均年齢が70歳前後と言われていますから、納得のできる数字です。


 5 創刊以来何年になりますか。

@5年未満  A6〜9年 B10〜19年 C20〜29年 D30〜40年 E40〜49年 50年以上
15 21 24 23 18 6 27

 新しい結社もつぎつぎに作られていることがわかります。


 6 貴団体として主に参加されている団体をひとつお答えください

@現代俳句協会 A俳人協会 B伝統俳句協会 C口語俳句協会 その他 特定の団体には参加していない
51 62 6 1 7 12

 ある程度、全体の様子をあらわしていると考えられる数値です。


 7 作品の仮名遣い表記について

@旧仮名遣い A新仮名遣い B参加者に任せている
58 7 69

 Bが多くなっているのは、表記が表現の自由に関わるためでしょうか。
 参加者を増やすためにそうしているという話を聞いたこともあります。


 8 口語、文語の別

@主に文語である A主に口語である B参加者に任せている 未答
71 6 56 1

 これも上記7と同じ理由が考えられます。 


 9 団体の運営や連絡に部分的にでも電子メールはお使いになっていますか。

@使っている A近々使う予定がある B使う予定はない
22 19 91 1

 約3分の1の結社が、インターネットを指向しているようです。


10 現在、団体としてインターネットのホームページを持っておられますか。

@すでにある A検討中・作成中 B作る予定はない
15 27 88

 この質問からも、上記と同じことがわかります。
 使わないと回答した結社の中には、著作権の問題が解決していないため、という回答がありました。

 
11 ホームぺージに作品を発表する場合、横書きが一般的ですが、それについてはどうお考えですか。

@絶対横書では困る Aできれば縦書きにしたい B特に抵抗はない 未回答
14 56 41 22

 @を選んだ14のうち、すでにホームページを持っているところが2、検討中が1で、あとは上記の質問10で、Bと回答した結社でした。 


12 団体の作品をホームページに発表することについて、どうお考えになりますか。

@これからは必要 A必要を感じない Bその他 未答
45 58 14 17

 半々というところでしょうか。


13 電子メールをお使いになっている団体は、どのようにお使いですか(複数回答可)

@投句 A事務連絡 Bその他
15 19 11

 Bは、会のPR、会員同士のコミュニケーション等でした。


14 貴団体の活動と連携したいメディアを、次から3つ選んで、連携したい順にならべてください。

@市販の俳句雑誌 A新聞の俳句欄 Bテレビの俳句番組 C地域のミニコミ D県や市町村などの主催する俳句大会等 E俳句団体の主催する大会等 Fその他
1位 63 9 3 8 6 9 13
2位 3 16 10 6 11 7 0
3位 4 5 10 3 11 16 1
重み計 199 64 39 39 51 57 40

 「Fその他」には、非俳句雑誌、文学雑誌、地方テレビ等が記されていました。


15 今後の俳句団体の望ましいあり方について

@主宰を置いた結社が望ましい A同人誌形態がよい Bその他 C一概に言えない 未答
67 19 2 45 1

 20世紀の俳句を支えてきた、「主宰−結社」というシステムは、まだその有効性を信じられているようです。
 ただそのためには、実力ある指導者が、これからも育っていくことが必要です。「一概に言えない」という回答の
多さは、そのことを考えてのことと思われます。


16 次の@からEを、大切だと思われる順に並べてください(ご回答者個人の意見で結構です)。

1位 2位 3位 4位 5位 6位 重み計
 @江戸時代の作品を読むこと 29 6 18 16 18 32 -31
 A明治大正時代の俳句を読むこと 15 27 18 30 23 7 20
 B昭和初期(戦前・戦中)の俳句を読むこと 25 30 37 14 11 3 127
 C昭和後期(戦後)の作品を読むこと 21 31 31 28 8 4 100
 D現代のベテラン作家の俳句を読むこと 31 18 12 16 43 6 21
 E現代の若手の作品を読むこと 7 11 5 16 14 64 -188

 上記の「重み計」は、1位に3、2位に2、4位に-1、5位に-2、6位に-3の重みを掛けて合計した結果です。
 Eのポイントが低すぎるのが気になりました。現在の俳壇のリーダーたちが、若いひとたちへの関心を失っているのだとしたら、21世紀のリーダーは育ちにくいのではないでしょうか。


17 俳句総合雑誌・新聞・インターネットなどの活用について、ご意見がありましたら自由にお書きください。

    134の回答のうち、56件に記入がありました。うち1件は質問と違う内容の感想でしたのではずし、55件分を掲載します。
   内容の読みとれないものや、表現の不自然なものもそのまま掲載してあります。ただし、挨拶部分や結社名がわかってし
   まう部分は削除しました。分類は秋尾が振り分けました。推測で分けたものもあります)。

・メディア全般

 ・知るにこしたことはないので時間があれば活用すべし。
・特別ありません(あまり流されないようにしたい。)
・読んで活用するのみならず発表という形で活用したい。でもそれには編集長の眼力が必要になる。
・俳句総合誌、新聞等をインターネットで情報を一括化することが出来れば。
・俳句総合誌及び新聞俳句については、かなり片寄りが見られ、参考にする程度であるが、今後、インターネットによる俳句普及は年と共に旺んになるであろう。これからの俳誌はインターネットの活用をぬきにしては考えられないと思う。
・現在の俳壇の賞は公平だか 俳句団体の賞は功労賞めいて価値を認めにくい
・歳時記などに多くの結社の人からとり上げていけばもっと全国的になると思います。
・全体として文芸性をもっと昂揚してゆきたい。
・出版社に先導されている俳人、及び結社が不甲斐ない
・時間があれば目をとおした方がのぞましいが、必須ではない。本質的な研究の方が大切。
・新聞、綜合誌等のメディアは、大衆迎合ではなく、夫々の俳句に対する認識や見解を率直に表明し、それにそった夫々の特色の出た編集や記事を望みたい
・雑誌も新聞も事業であるから制約はあるとしても、ときには採算抜きでも、実験作を試みている人を採り上げることも必要なのでは。
・現在の商業主義的結社、世襲制結社は、やがて堕落し、同人誌的な傾向が強くなると思います。必ず。
・ほどほどにしたい。黙殺はしていないつもり。
・広告は出していますが多くを期待していません。
・俳句は含羞の文学である事がうすれている。同好の士があつまっても、研さんを忘れてはいけないと思う。大会が多すぎてはマイナス面ではなかろうか。自分の俳句を生み出すという事に心掛けたい。
・日本語を大切に守っていく心掛けは、特に俳句(省略文学)に求められなければならない。そのための活用を。
・主宰を置く結社といえども、主宰一辺倒で、他を顧みないのは好ましくない。発表することによってより広く他に関心を持つよい場と思う。
・現在出ている俳句総合誌雑誌でその名に値するものがあるだろうか、疑わしい。新聞社にも総合雑誌的なものを刊行しているが、視野に偏りがあってサロン的な観がある。俳句に貢献しているとは言い難い。むしろ堕落に力を貸しているようなところさえある。何れも必要なしと思う。
・我々自由律(俳句)系の者にとっては、近年総合俳誌を読む気になれない。進歩的結社誌、個人誌(短詩型、現代川柳等も)の主要論文やエッセイを見れる方法が望ましいのだが。まだインターネットの普及が少ないので、目的を達成できないでいる。
・結社だけにこもっているのではなく、俳壇に目を向けて行くことは大切だと思います。

・俳句雑誌
 ・同人誌の取り上げ方が悪いと思います。
・俳句総合雑誌は有用であるが、各誌とも特色をもつべきである。画一的では読まれなくなる。また初心者の教育指導は、書く俳誌に委せて、程度を高くすべきである。
・俳句総合誌への意見発表は一部の人達のもの。広告は高くてとても全部は附き合いきれぬ。
・俳句総合誌は経営上致し方ないが、その一部分に絶えず採算を度外視した文芸上の高い作品、評論を載せるべきで実作者を編集に加えること必要。
・俳句総合雑誌は、もっと結社に門戸を開いてほしい。
・俳句総合雑誌は、現代俳句のあるべき姿を正確に捉えているかどうかは疑問に思っている。
・俳句雑誌の場合大家と呼ばれる先生方の50句、100句の発表は考えた方がいいのではないかと思います。また有名俳人の句のみ現代俳句月評として採り上げる風習も一考を要すると思います。かくれた作家は沢山いるはずです。
・俳句総合誌は乱立の為、同じような企画、編集が目につく。又、広告で釣るような露骨な営利行為があるようで、商業主義に俳人が踊らされている。俳句総合誌の現状では活用など望むべくもない。
・読むに値するページづくりが肝要である。結社管理的な総合誌による<現代俳句>のレベルの低下は何とかならないものか。
・地方誌であるので、会全体で誌友の活動を会誌で充実している。従って総合誌等の活用は50余年に亘り効果は薄い。
・総合誌への期待 (1)本格的俳句論の登載 (2)魅力的新人群の発掘 (3)分県的俳句史の探求
・特にないが、20世紀はアマチュアリズム普及であり過ぎた。21世紀、改めてプロフェッショナルの意識と実践に尽くして欲しいと思う。
・特に総合雑誌については、『俳壇』7月号の提言(貴殿)の「人を共感させる詩的実力と相手を納得させる知恵と人間性」を前面に掲げた編集に集中されるよう希望したい。つまり詩的実力第一主義です。
・個人的に読むだけ
・この頃の記事の中心はspeakingですが(文章も短文ばかり)、昔のような30枚、50枚の評論文を中心にすえることが必要と思われる。
・俳句総合誌も多く、一長一短あり。
・総合雑誌編集者に新人の発掘を。
・流行作家ではなく、匿名の権威をどう育てるか、に期待がある。
・俳句総合誌は広告代が高すぎて貧乏結社には利用できない。県や市町村の主催する俳句コンクールや大会で、広告を当然のように送ってくるが、広告を載せるには印刷代が掛かることを配慮していない。勝手すぎる行動には腹が立つ。
・いわゆる大衆化現象とそれを利用しようとする商業主義、苦々しい現象が多すぎる。
・俳句総合誌が多すぎるように思います。
 ・新聞

・新聞は購読者の広さからとって大いに活用したい。
・新聞は商業主義で、俳句を扱うのをやめるべきである。
・もう15年も止めている
・新聞といっても地方新聞が主でこれも良し悪しである。

 ・インターネット
・会の作家の句作充実にとって直接関係はない。いわゆる情報か軽い教材程度の活用が可能なので有れば使うこともある。あえて個々の作家の研鑽のツールとしての機能は求めない。
・インターネットは今後絶対に必要だ。
・私の所属誌でもホームページがあり、メールによる添削ができるようにしているが、利用者は皆無(現在)。PCが自在に仕える年代が俳句人口の大半を占めるには10〜15年を要するか?それより俳句は座の文学。face to face が主流。
・投句も句会も各自在宅のまま出来る世の中になりそうな勢いですがどんなものでしょう。お互い顔を見合って膝をつき合わせてはじめて人間的な句会になる様に思います。古い人間です。
・時間的かつ距離的な制約を克服し全国が一体化できるインターネットはすばらしいことである。
・インターネットを利用した場合、どのような利点があるか知りたいです。
・地方誌としてささやかにかつ地方性(風土性)を発揮してゆきたい。したがって、将来ともインターネットの必要はないと思っている。FAXだけは設置している。
・俳句とともに連句をやっている。国際的に連句は広がるのでインターネットを大いに活用したい。
・何分私は年寄りですので昔のままでやっていますが、主宰(発行所)を若い人に変える時点には、現代風に変わることと思います。
・他の人が使うのは別に良いと思います。自分自身としてはあまり使いたいとは思いません。バイオリズムがついていかないと思います。
・自由律俳句の普及のため、今後は単に結社内に止まらず他誌とも交流を図り、インターネットによる活動もより一層やって行きたいと思っています。
・活用できる時までには墓場でしょう。だから見向かない。
・インターネットの活用は時代と共に仕方ないことですが、本来座の文学である俳句の本意味わい人との目と目で語り合える親しみが失われていくような淋しさをかんじます。あと横書きで俳句がかかれることも少し抵抗あります。
・(1)仲間づくり (2)作品理解→作者との対話 (3)高齢化対策とジュニア育成 月例会に出席することが困難な高齢者や、同人費や雑誌代の支払いが負担になる年金生活者(特に女性)が増え続けているが、インターネットを使ったボランティア活動として活用できないか。ジュニア育成の方法としても。
・インターネットもすべてがいいわけではない。あまり気にしていない。
・インターネットなどは顔の見えない分、恐いところがある。
インターネットの活用は、考える必要があると思う。
・インターネットがどういう新生面を開いていくか可能性はあると思うが、新しい詩観と詩学が見えてこない。
これからはインターネットの活用もよいでしょう。
         

 以上のコメントは、何の作為もなく書かれたとおりに掲載しています。
 こうしたコメントを集計すると、どうしても否定的な意見が多くなってしまいます。現状でよいと思っている人は何も書かないことが多いからです。この調査の裏にも78人のサイレント・マジョリティーが存在することを意識し、その上で上記のコメントを解釈していただきたいと思います。

18 このアンケートにご回答くださった方のお立場をお教え下さい。

@主宰・代表・編集長 A副主宰または副編集長 B編集委員 C同人 Dその他 未回答
118 2 3 3 4 4

 アンケートにご協力くださった結社の皆様に、心からお礼申し上げます。

 <このデータの詳しい考察>

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