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診療報酬を上げれば医者はハッスルするが患者は逃げる


厚生労働省は医者にやらせたいことがあるとその診療報酬を増やします。しかし、診療報酬の3割を負担させられる患者さんは厚生労働省の目論見とは逆に動きます。

病院と診療所で再診料の差がついたのは、もともとは、病診連携と言って、外来診療は診療所で、入院治療は病院で、と役割分担を進めるため、病院が外来患者を診ても儲からないようにするため、病院の再診料を下げたのです。

しかし、患者さんは再診料が安い病院のほうに集中し、勤務医の負担が増えていまいました。待ち時間がいくら長くても患者さんの多くは病院に集まりました。

患者さんは政策とは逆に、再診料が少しでも安い病院に集中したわけです。

総合病院を退職してまだ3年目の私はまだ病院の内情をわかっているつもりです。

次回の改定でも病院に支払う診療報酬を上げるのであれば、手術代などの技術料を上げてほしいと思います。病院の再診料を上げないでほしいと思います。

かつて中国の指導者が「黒猫でも白猫でも、ねずみをいっぱい捕る猫がいい猫だ」と言いました。これは病院経営者にとっても同じで、「とにかく稼いでくれる医者がいい医者」なわけです。

手術代を上げれば、手術がうまいという評判の医者の稼ぎがよくなり、院内の経営会議での発言権が大きくなります。

一方、再診料を上げれば、重症でもない外来患者を抱え込んで、予約枠を再診患者で満たし、リスクのある新患を診ようとしない医者の発言権が強くなります。

大病院には最新の診断・治療機器がそろっているのです。そこで、何ヶ月も同じ薬を処方しているだけの患者を抱え込むのは、設備投資の無駄です。

大新聞の社説を書く人はよく勉強してから意見を書いてほしいと思います。

病院は外来部門が黒字になってはいけないのです。入院患者の診療によって初めて黒字になるように仕向けなければなりません。

でなければ、ブラックジャックたちへの待遇が悪くなり、ブラックジャックたちが立ち去ってしまいます。

立ち去ったブラックジャックたちはどうなるでしょう。手塚治の原作通り私費で成功報酬を受け取る、請負契約のゴッドハンドになったりして。

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