"Tales of Matsumoto"
Symbol-3 : Houses of the Holy Glory Night(その3)
「お、おぬしは....ホーリー・チャイルド?!」
「え!?!?!?」
驚く顔の一同を尻目に、その子供はゆっくりと口を開いた....。
「〆ゞ仝★≠∴∞℃¢*§☆◎△※〒∋◆!!」
それは、聞いた事のない『言葉』であった。
『言葉』は一同の頭を突き刺すように鋭く響き、耳を塞いでもその痛みは緩和されなかった。
「う....ダメだ...」耳を押さえながら、柴田が地面に崩れるように倒れた。
「な、なんて声出すんだ!......やめろ!」大西が苦しげに叫ぶ。
「〆ゞ仝★≠∴∞℃¢*§☆◎△※〒∋◆!!」
「〆ゞ仝★≠∴∞℃¢*§☆◎△※〒∋◆!!」
「〆ゞ仝★≠∴∞℃¢*§☆◎△※〒∋◆!!」
「〆ゞ仝★≠∴∞℃¢*§☆◎△※〒∋◆!!」
「〆ゞ仝★≠∴∞℃¢*§☆◎△※〒∋◆!!」
「〆ゞ仝★≠∴∞℃¢*§☆◎△※〒∋◆!!」
「〆ゞ仝★≠∴∞℃¢*§☆◎△※〒∋◆!!」
子供は『言葉』を発するのを止めない。むしろ『言葉』は段々大きくなっており、それに従い
膝から崩れて地面に倒れこむメンバーが一人、二人と増えていった。
「.....耳の良い順、つまり、トシの若い順にやられているようですね」
そう言って、沼田女史の次に佐々木が倒れていった。
「青柳さんの次が私か....あれ? 大西さんと木村さんはどっちが上だったけ? えーと....」
この期に及んで、つまらないことを考える本多。
「ワシがみんなの骨を拾ってやるよ....」苦しみながらも、山田は余裕の笑みを浮かべた。
ヒュ〜〜ン....バリバリバリ!
突然、子どもの近くで閃光が走った。七色の火花が周囲に飛び散り、あたりが白煙に包まれる。
東急ハンズで購入した「打ち上げ花火/プロスペック」が、無謀にも水平撃ちされたのだ。
「ひぃっく!...なんだなんだ! お、おれ様のことを仲間はずれにしやがって!
ドンっと鳴った花火が、キ、キレイだな、っと」
泥酔して部屋でマグロになっていたハズのYasが、チャッカマンで手当たりしだいに花火に点火
しまくっていた。筒を振り回しているので、どこに飛んでいくのか予測がつかない。
「うわわ!!!!」逃げまどう、生き残りのメンバー。
「あちちち!!!」尻に直撃を受けた青柳が、水を求めて走り回る。
阿鼻叫喚の地獄絵図
「おらおら〜〜!鬼畜米英〜〜!(エリックごめんね〜〜)」
雄叫びと共に、袋一杯のロケット花火が子供のいるあたりに打ち込まれた。
パパパパパパパパン!!!!!!....
シャレにならない炸裂音が響き、まきあがる白煙で辺りは何も見えなくなった。
「...どうして、Yasさんだけなんともないの?」木村女史が地面に伏せながら言った。
「あまりに泥酔してて、感覚がマヒしてるんだよ!」ほふく前進で逃げながら大西が答える。
「....『言葉』が聞こえなくなった?」白煙が収まった頃、本多がつぶやいた。
「みんな、生きてる?」木村女史が声をかける。
「なんとか、ね」大西が答えた。倒れていた一同も、一人、また一人と復活していった。
「あの子供がいないわ!」スカートの泥を払いながら、中村嬢が叫んだ。
「...あ!あそこに!」佐々木がコテージの方を指差した。
例の子供はコテージ裏の岩山を登っていた。花火攻撃で服が焼け焦げたのか、ほとんど裸の状態
である。
「なんでまた、あんなところを...」水の入ったバケツに尻を突っ込みながら、青柳が言った。
子供は山の頂上まで登りつめると、大きく手を広げて夜空を見上げた。
そして、次の瞬間、かき消すように姿が見えなくなってしまった。
「ねぇ、ホーリー・チャイルドって?!」「あの子供は何なんですか?!」
一同はせきを切ったように、管理人の山田に質問を浴びせた。
「うむ、わしが若い頃の話じゃて、すっかり忘れておったんじゃが....。
− 管理人山田氏の回想 −
「戦後まもなく、この辺りにも進駐軍が繰り出して来ての。
若い娘さんに手を出したり、乱暴を働いたりで、みんなに恐れられていたもんだった。
しばらくして、進駐軍の1個小隊が、山に入ったまま行方不明になる事件があったんじゃ。
アメさんはもとより、村の若い衆も駆り出されて山狩りをしたもんじゃが、結局何の手掛かりも
なくての。やがて進駐軍も本国に引き上げてしまい、みんなこの事件のことを忘れてしまったん
じゃ。
それから5年も経った頃じゃったか、村の衆が山ん中で外人さんが倒れてるのを助けたんじゃ。
ワシの弟が中学の英語の教師をしてたんで、駐在に呼ばれて事情を聴いたんじゃが....
そん男、いつかの行方不明になった進駐軍のひとりだと名乗ったそうじゃ。
なんでも、1個小隊が訓練で山道を歩いてた時に、一人の子供に出会ったそうでの。
行く手をさえぎるので、脅しのために銃を向けた、ってところまでは覚えているが、その後は
全く記憶が無いようじゃった」
「ひょっとして、その子っていうのが?」柴田が訊ねる。
「金髪の子供で、男は『ホーリー・チャイルド』と呼んでたそうじゃ」
「.....」
「男はその後、東京に護送されたが、警察も新聞もなぜかこの話については一切触れようとせん
での。わしも、自然に忘れ去ってしまったんじゃ」
「不思議な話でしたね」山田氏が引き上げた後、ズッキーがつぶやいた。
「...こーいうことは考えられませんか?」何やら考えにふけっていた柴田が、突然言い出す。
「ホーリー・チャイルドは聖跡の守り神であると。
その進駐軍は、はからずしも聖跡に近づいてしまったので、ホーリー・チャイルドに殲滅されて
しまったという....」
「で、今回、聖跡を目指す我々を殲滅しに来た訳ね。迷惑な話だわ!」
先程まで人一倍迷惑をかけていた沼田女史のセリフに、青柳が一瞬拳を握り締める。
沼田女史はショックですっかり正気に戻っており、何事もなかったかのような涼しい表情だった。
Yasもしばらく地べたで爆睡していたが、これまたゾンビのごとく復活していた。
「とにかく、例の謎のうち、ホーリー・チャイルドはクリアした訳です。一歩前進ですな」
本多が脳天気に叫んだ。
「とりあえず、皆さん、コテージに戻りましょう」ズッキーが号令をかけた。
祝砲をぶち上げるメンバー
コテージに戻ったメンバーは、各々酒を飲みながらくつろいでいた。
やがて、ひとり、ふたりとベランダに集まり、夜空を眺めながらの宴会となっていた。
大西がアコギを持ち出して弾き始めると、Yas、青柳がそれに続いた。本多がMandolin、佐々木
がコンガで参加し、いつの間にやらZEPP曲のSESSIONとなっていた。
「それじゃ、ZEPPのFirst Albumから順番に演ろう!」
深夜のZEPP SESSION
大西の提案により、"Good Times, Bad Times"から演奏はスタートした。
弾けない曲は即座に飛ばす、歌えない歌詞は鼻歌でごまかすというイージーなノリで、真夜中の
即席ZEPP SESSIONは進行して行った。
「これで『III』の曲は終わりだね」
大西がそう言ってタバコに火を付けた時である。
「うわっ!!!!」突然のまばゆい閃光に、一同は思わず目を覆った。
光に慣れて恐る恐る見上げると、目の前には信じられない光景が広がっていた。
それは、巨大な光球であった。
その物体は、白色にまばゆく輝きながら、コテージの上空高くを浮遊していた。
コテージの周りは光球の放つ輝きで、昼間のようにこうこうと照らされていた。
「これは、一体....」柴田の問いにも、一同は声も出ない。
「....移動してるわ!」
木村女史が鋭く叫んだ。光球はしばらく一点に留まっていたが、やがて尾を引くように軌跡を
残し、ゆっくりと東の方に移動していた。
「消えた????!!!!」
光球は2、3度ふるえたかのように見えると、山の稜線に吸い込まれるようにしてふっと消え
失せてしまった。
あまりに超自然的な出来事を目の当たりにし、一同は呆然とベランダに立ち尽くしていた。
「...なんだったんだ、今の」すっかり酔いが醒めたYasが、始めに口を開いた。
「流れ星や彗星にしては、動きが変でしたよね」佐々木がコンガを手にしたまま続けた。
「あれって、いわゆるUFO、ってやつじゃなかったんでしょうか?」青柳がおずおずと発言した。
「俺、マイケルシェンカーはキライなんだよ!」大西がすかさず突っ込む。
「そういう問題じゃないと思いますが...」と柴田。
「これだ!!!」本多の言葉に、一同が注目する。
「我々は、ついに鍵を開けたんです!
例の写真の裏に、『第参の教典を星辰に捧げ』って言葉がありましたよね?
これは、『ZEPPのIIIを夜空の下で歌え』って意味だったんですよ!」
「じゃ、あの光球は、聖跡へと導く道しるべってことね?」沼田女史が目を輝かせて言う。
「ズッキー、あの光球が吸い込まれていったあたりはどの辺?」中村嬢が尋ねる。
「あ、あそこはですね。確か展望台があるあたりだと思いますよ」
「よし、そこに行ってみよう!」本多が一同を見回した。
続劇
[次回予告]
使徒の旅もクライマックス
原子心母とは? 祝福の塔とは?
最後の謎が、今解き明かされる
それよりも、何よりも、
強引'g my wayの展開に、どれだけの人がついていけるのか?
次回、最終話、"The End of Matsumoto"をお楽しみに!
第4話に続く
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