"Walking into Clarksdale"
Album Review


Text by Makoto Honda, Update : 5/30/98

Jimmy Page Interview 
Steve Albini Interview

CREDIT Vocal : Robert Plant Guitar : Jimmy Page Bass : Charlie Jones Drums : Michael Lee All titles written by Page, Plant, Jones, Lee Produced by Jimmy Page and Robert Plant Recorded and Mixed by Steve Albini Studio Assistant : Paul Hicks Recorded, mixed and masterd at Abbey Road Studio, London String Pad and Programming on 'Most High' by Ed Shearmur and Oriental Keyboard by Tim Whelan String Arrangements on 'Upon A Golden Horse' by Lynton Naiff Photography : Anton Corbijn Design : Cally
TOTAL IMPRESSION   Jimmy Page Robert Plant(間にandはつかない。以降Page/Plant)の2nd Albumです。   前作"No Quarter"がMTVのアンプラグド企画におけるスタジオLIVE盤であったことを考えると、   実質的には初のスタジオ録音盤と言えます。      DrumsはMichael Lee、BassはCharlie Jonesと、前作のメンバーが起用されています。   全ての楽曲が「Page, Plant, Jones, Lee」名義であるのが驚きです。インタビューでRobert   は「必ずしも4人で曲を作った訳ではないが、彼等の協力によって完成した」という趣旨の事   を語っています。バンドのメンバーとして最大限の敬意を払っていることが窺い知れます。   アルバムは「抑制された渋さ」が全編に貫かれています。   一聴して耳に残るメロディーは殆ど無く、盛り上がるようなサビもギターソロもありません。   「元Led Zepplinのヴォーカリストとギタリストのアルバム」という期待感を込めて聴くと、   間違いなく失望することでしょう。   これは確信犯としてやっていることであり、インタビューでもRobertは「テンポが盛り上がっ   て全体がちょっと面白い感じになるけど爆発まではいかない。そういうのが良い」と語ってい   ます。拳を振り上げて盛り上がるような「ステレオタイプのロック」はやらない、という事で   しょう。   そのあたりを踏まえて聴きこむと、非常に面白いアルバムであることに気付きます。   アレンジは緻密かつ余計なものは一切ありません。エフェクトも最小限であり、楽器の存在感   を丁寧に再現しています。エンジニアとして雇われたSteve Albiniの功績なのでしょうか。   RobertのVocalはシャウトこそしていませんが、情感たっぷりの歌い方をしています。   Jimmyのギターはシンプルながらも様々なサウンドメイキングを施しています。   作り手によるお仕着せの感動の押し売りが無い代わりに、聴き手が自由にイマジネーションを   膨らませることができる作りになっています。   チャートを賑わすようなタイプではありませんが、音楽ファンに大事に聴き込まれて欲しい作   品です。一切のこだわりを捨て、真摯な気持ちで聴いて下さい。   ちなみにClarksdaleとはBluesの聖地で今はゴーストタウンと化しているミシシッピ州の地名   であり、「原点への回帰」をテーマにしている、と一般的には解釈されていますが....。   彼等のことですから、そんなストレートな意味とは考えがたいと思います。   もっとシニカルな意図が隠されているハズですので、皆でじっくり考えましょう。  P.S.   差し障りがありそうなので画像を載せませんが、日本盤の初回分だけジャケット写真の周りに   白い枠デザインが付いています。先行発売だった日本盤だけ差し替えが間に合わなかったから   だそうですが、ホントかな?
1. SHINING IN THE LIGHT    待望の2nd AlbumのOpeningはアコギの軽快なストロークで始まります。3本以上のギター    を重ねており、右chの甘いトーンの音はエレキだと思われます。アコギのブリブリした低音    の感じはGallows Pole等を彷彿させます。これらは紛れもなくJimmyのお仕事です。    Drumsは実にナチュラルな音に仕上げられています。タム音は殆ど左右に振られておらず、    リバーブやイコライジング感も希薄です。    Bassは極めてマイルドなトーンであり、バスドラの音に紛れて殆ど聴こえません。    Robertは抑え気味の歌い方であり、サビも絶叫型ではなく「肩の力を抜いた」感じです。    後半に行くに従ってエレキのリフが増え、サウンドが引き締まってきます。時折挿入される    乾いたストリングス音は、古えのアナログ楽器「Mellotron」です。    クリアなサウンドの中にあって、不安定なコード音が面白いアクセントとなっています。    - じわじわと高揚して行く感じがなんとも気持ちの良い、さりげない佳曲です。- 2. WHEN THE WORLD WAS YOUNG    Bassのペダルトーンで始まります。小刻みのライドシンバルにトレモロ・エフェクトをかけ    た甘いエレキが絡みます。Robertも「けだるい」雰囲気でアハンアハン言ってます。    「このままムード音楽で終わってしまうのか?」と危惧しますが、サビではエイトビートの    軽快な曲調に一転します。サビで聴けるエレキのリフは、センターポジションでナチュラル    に歪んだトーンであり、先のWorld TourでJimmyが多用していたセッティングです。    「まだ世界が若かった頃、僕は彼を知った」という歌詞より、この曲はPage/Plantプロジェ    クトの自己賛歌と解釈したいと思います。    - ストレートなサビが瑞々しい、彼等の新境地を感じさせる曲です。- 3. UPON A GOLDEN HORSE    カルチャークラブっぽいIntroのBassは洒落でしょう。    Tea For Oneに似たハードなIntroのリフでそのテの曲かと思わせ、白玉のスロー&ダーク    なAメロで肩すかしされます。Jimmyのエレキは空間系で、まんまケラウズランブラです。    中盤から入ってくるストリングスは不協和音でアレンジされており、曲に未曾有の緊迫感を    プラスしています。Jimmyも鋭いフレーズで絡んでいます。       - ステージでオケをバックにアレンジを膨らませて欲しい、LIVE向きの大曲です。- 4. BLUE TRAIN    前曲からメドレー風に続きます。基本はソフト&スローで、ささやくように歌うRobertの    VocalがCoolです。ここでのJimmyはエレクトリック12弦(多分)に深くコーラスをかけて    のアプローチです。サビではハードなリフを絡め、曲を引き締めています。    全編で刻まれてる特徴的なリフは一瞬Bassかと思いますが、後ろではちゃんとBassが鳴っ    ています。エレキのトーンをうんと甘くして弾いているのか、Bassをハイポジションで弾    いて重ねているのではないでしょうか。    4曲めにしてようやくギターソロが披露されています。12弦を用いた手グセっぽいプレイで    Ten Years Goneにそこはかとなく似ています。「外れているのでは?」と思える音もある    のですが、結果的にそこがJimmyらしい非凡さを醸し出しているから不思議です。        - 聴く度に発見のある、Jimmyのマニアックなこだわりを感じる1曲です。- 5. PLEASE READ THE LETTER    リフや曲の感じがJimmyのソロ作っぽい雰囲気です。(しかし、なんちゅうタイトルじゃ)    フロント強めのセンターポジションで軽く歪ませた、いわゆるJimmy Pageサウンドです。    軽快なAメロで前フリし、サビで「実は盛り上げない」という、これまでの4曲と逆の仕掛    けを施しています。Robertはダブルトラックでひとりハーモニーを楽しんでいます。    Michael Leeが独特のバタバタした叩き方をしており、ここでは良い味を出しています。    - 地味な印象ですが、Jimmyファンには聴き所の多い曲です。- 6. MOST HIGH    エスニックなパーカッションがフィーチャーされています。    Jimmyは変則チューニングのエレキ1本で、Kashmirを彷彿させる重厚なリフを繰り出して    います。コーラス系エフェクターによる軽いうねりとショートディレイが施されています。    ここでのDrumsはタムを左右に大きく振り、派手めで存在感のある音に仕上がってます。    "String Pad and Programming by Ed Shearmur, Oriental Keyboard by Tim Whelan"    とクレジットされてますので、終盤の唸るようなストリングスや浮遊感のあるアラビック    なメロディーは全てシンセによるシュミレートということでしょう。        - 前作No Quarterの流れを組む曲であり、エスニックRockのひとつの完成形と言えます。   7. HEART IN YOUR HAND    Jimmyはエレキにリバーブ/エコーを深くかけて単音リフを弾いています。    「朝日のあたる家」を彷彿させる曲調ですが、AメロBメロのみでサビにあたる部分があ    りません。Robertはつぶやくような歌い方であり、内省的な歌詞とあいまってひたすら陰    気な雰囲気を醸し出しています。    Drumsは殆どシンバルワークのみです。Charlieはウッドベースでミュート気味の乾いたフ    レーズを弾いています。    オーバーダビングされた短いソロではスライドプレイを取り入れています。曲の最後はメ    ジャーコードをジャラーンと弾くあたりもクラシックな感じです。        - 60年代の西海岸フォークロック的な、レトロな雰囲気の小曲です。- 8. WALKING INTO CLARKSDALE    マイナー調のリフで組み立てられた、ダークな雰囲気の曲です。強いて言えばブルースと    呼ぶのが一番近い気がしますが、テンポやリズムパターンが刻々と変わる不思議な構成で    す。メロディー感の無いセリフのようなVocalが、ダーク感をさらに色濃くしています。    終盤で挿入されるソロの前半はサックスにディストーションをかけたような音色です。ギ    ターによるシュミレーションである可能性もありです。後半はIn The Eveningで聴ける    ような空間系+歪みバリバリのサウンドです。        Most Highではなくこの曲をアルバムタイトルとした所に、Ever Onward(常なる前進)    に賭ける彼等のプライドを窺い知ることができます。    - 今のPage/Plantを象徴するであろう、ブルースの新解釈とも言える曲です。-     9. BURNING UP    アフリカンなリズムにハードに歪ませたギターリフが絡みます。    インタビューを信じると「ワンテイクのライブ録り」だったそうですが、Jimmyの弾きま    くりコードカッティングのおかげで音の薄さは全く感じられません。    Charlie JonesのBassはピック弾きのビキビキしたトーンで、存在を初アピールしてます。    Please Read The Letter同様、軽快なAメロで振っておいてサビで故意に盛り上がりを    抑制する構成になっています。    終盤の"Like Volkeno〜(火山のように〜)"という歌詞で、Robert以外の声のコーラス    が2声重ねられています。Jimmyは演奏で忙しそうなので、CharlieとMichaelでしょう。    - シンプルで勢いのある、Page/Plant流ロックナンバーです。- 10. WHEN I WAS A CHILD    ゆったりとした雰囲気が心地好い、本アルバム唯一のスローバラードです。    Jimmyはトレモロを深くかけたアルペジオを全編で弾いています。ソロもリバーブの波    の中に漂っているかのようで、深い余韻を感じるプレイです。    この手の曲を歌わせるとRobertは本当に巧いです。「絶叫=Robert」などという公式は    完全に過去の遺物である事に気付かされます。    - RobertのVocal/Jimmyのギターが程良くマッチングした、注目のバラード曲です。- 11. HOUSE OF LOVE    ループのリズムに生楽器が絡んでグルーヴを醸し出しています。前アルバムのYallah/    Wonderful Oneと同様なアプローチですが、今回はエスニック色は皆無です。    80年代初頭に流行したダブ・ミュージックの手法ですが、今聴くと新鮮に感じます。    ループのDrumsにはディストーションとフェイザーが深くかけられており、イコライザ    でこもった音に加工されています。中盤からは生Drumsも重ねられています。    Jimmyはお得意のワウワウを駆使し、アコギでクリアなカッティングも加えています。    Robertは伸びやかな歌いっぷりであり、バックのハモリにディストーションをかけて    いるのが面白いところです。    - Drumsループをバックに自由に演奏している、温故知新な1曲です。- 12. SONS OF FREEDOM    パンクを思わせるバタバタした曲調です。バタバタと言えばMichael Leeな訳で(笑)、    「鎖を解かれた猛犬のように」得意のバタバタDrumsで大活躍しています。    最後はテクノ・ミュージックを彷彿させるポコポコしたリズムマシーンによる電子音    で終わっています。うがった見方をすると、「70年代後半を席巻したパンクも、80年    代初頭のテクノ旋風も、今ではすっかり風化してしまった」ということを風刺してい    るのではないでしょうか?「ジャンルに囚われた音楽なんて空しいよ」という、彼等    なりのメッセージソングだと私は解釈しています。    - 冴えないパンク調の曲ですが、深いメッセージ色を感じる曲です。- [BONUS TRACK] 13. WHISKEY FROM THE GLASS    日本盤のみのボーナストラック、だそうです。    これまたドラムループをバックに4人のメンバーが演奏するパターンです。    ここでのJimmyはトレモロと似て異なる、音を断続させる不思議なエフェクト効果を    披露しています。ギターの片方のピックアップのヴォリュームをゼロにしてトグルス    ィッチをガシガシした感じに似ており、それを機械的にやっているようです。    Robertは本アルバム中で一番ハードに歌っており、そういうRobertが好きなファン    にはたまらない1曲です。    - JimmyとRobertのコラボレーション感の強い、単純ながらも奥の深い曲です。-
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