世紀末!アメリカ横断ウルトラ出張記 中西部編(パート3) Update:1/16/99


Gund Arena
Jacob's Fieldに隣接するように建っていたのが Gund Arenaである。 プロバスケチームCavaliers(通称Cavs)の本拠地として有名であり、コンサート会場 としてもその名はよく知られている。Page/PlantのCleveland公演もこの会場だった。 渡米前の事前調査によると、ZEPPが77年ツアーで使用したRichfield ColiseumがCavs の本拠地であったが、94年のGund Arena設立とともに移転してしまったとのこと。 以来、Richfield Coliseumは廃屋と化していたが、99年春に取り壊されてしまったと のこと。もう少しこの渡米が早ければ、Richfield Coliseumの姿を一目見ることがで きたのに!なんとも惜しいタイミングであった。 しかし、この会場が現在におけるClevelandのロック会場であることは事実である。 「この会場でコンサート(ないしはバスケ)を観たい!」 私は会場の一角にあったチケット売り場に、吸い込まれるように近づいて行った。
チケット売場にイベント一覧を記載したパンフレットがあったので、すばやくチェッ クする。これによると、今夜CavsとAtlanta Hawksのバスケの試合があるとの事。 なんたる幸運!! さっそくチケットカウンターの列に並ぶ。 自分の番が来たので、カウンター越しに「当日券はありますか?」と尋ねる。私のク イーンズ・イングリッシュが通用するか冷や冷やであったが、意外にも係のおじさん は「もちろん」と即答、サッと座席表を見せてくれた。色によって細かく料金が分か れているらしい。 再び「どこの席でも買えるんですか?」と聞いたところ、おじさんは一瞬考えてから 一番高い席($58:約6千円)を指さし、「This is Good」と澄まして答えた。 「そりゃGoodだろ!」っと突っ込みたくなったが、滅多にない機会でもあり、なるべ く良い席で見たい。ここはひとつ、ジャパニーズとしては贅沢をしてみよう。 支払いは現金/カード/トラベラーズチェックどれでもOKとのことだったので、現 金の持ち合わせが乏しいこともあり、トラベラーズチェックで支払った。
Gund Arena Ticket

ホテルに戻って一休みし、開場の19:00に合わせて再びGund Arenaに。 入り口は数カ所あったが、正面の一番大きいところから入る。4、5人の係員がチケ ットを手でちぎる、というのは日本と同じ。 入場時になにやらチラシを受け取る。1枚は下敷き状のでかいボードで「Go Go Cavs」 という文字が大書きされている。おそらく、応援の時に手に持てという意味であろう。 もうひとつは小型のパンフレットで、選手だけではなく運営スタッフのプロフィール まで、詳細に説明されている。さらに驚いたのは、今日の日付と対戦マッチが表紙に しっかり印刷されていた事。毎試合、パンフレットを作っているということか? う〜む、すごい手間である。 通路には売店がずらりと並んでいたが、軽くチェックしただけでとりあえず席を探す。 各入り口には青いジャケットを着た係員が立っていて、チケットを厳しくチェックし ていた。私はイタリア人風の若い係員にチケットを見せ、106ゲートから場内に入る。 中は巨大なすりばち状になっており、プラスチック製の青い座席が目に鮮やかだった。 会場上方には巨大なビデオスクリーンが四方向に向かって吊されており、観客はどの 席からでもスクリーンを眺めることができる。非常に親切な造りである。 コンサート時の収容人数は約2万人とのことだが、この日は6割くらいの入場者であ った。私の席は前から6列目で、ゴールが斜め後ろから見えるなかなか良い席である。 コートでは中学生くらいの子供たちがゴールの練習をしていた。試合前に学生にコー トを解放しているものと思われる。巨人戦の前にリトルリーグの選手がグラウンドを 使わせてもらっているようなものであり、凄いサービスである。 とりあえず、通路に戻って食事を確保に。山盛りナチョスがおいしそうだったが、と てもひとりでは食べられない量なのであきらめ。食べやすいピザとコーラにした。
19時半キッカリに照明が落ち、スポットライトがグルグル会場を照らす。 大音量のロックナンバーが流れ、「ガンド・アリーナにようこそ!」とい うアナウンス。うわーー、ロック・コンサートみたい! やがて、会場の四隅の通路からチアガール軍団が飛び出してくる。アメフトのように グラマーな感じではなく、全員スリムな体型(オーナーの好みか?)。何はともあれ、 ポンポンを振り回し、元気良く踊りまくっている。 ひとしきり踊ってガールズが引き上げ、Atlanta Hawksの選手が登場。会場から軽く ブーイングが起こる。選手達の表情も暗く、全員うつむきがちに歩いている。 そして再びロックナンバーが鳴り響き、地元Cavsの登場。ひとりひとりの名前とプロ フィール(多分)をDJがアナウンスし、観客は一言一言に対し熱狂的な拍手と歓声 を贈っていた。こ、この光景は、どこかで見たような....。 そう、プロレスとそっくりなのだ。 それもエンターテイメント路線バリバリの、アメリカン・プロレス。この会場で繰り 広げられている光景は、まさしく「地元の英雄Cavsと悪役Hawks」のシングルマッチ そのものであった。
Cavs vs Hawks, at Gund Arena
試合中もあからまなヒイキが山盛りで、Cavsがボールを持っただけですかさずビデオ スクリーンには「Go! Go!」と表示される。Cavsがゴールを決めるとオルガンのファ ンファーレが鳴り響き、スクリーンに花火のCGがバンバンと上がる。 まぁ、このあたりは日本のプロ野球でも見られる光景だと思うが、Hawksのゴールの時 には全くナシ、というのが違うところだろう。もう、全くないのだ。ブーイングだけ。 これがアメリカのプロスポーツなんだな、と感心した。各都市ごとに野球/バスケ/ アメフトのプロチームがあり、ほとんど毎日のように試合をやっているのだ。いかに 人口が多いアメリカと言えども、客を集めるのはそれなりに工夫が必要であろう。 そこで、地元チームを熱烈に応援してもらうための演出が必要になる訳だ。 試合はCavs優勢のまま進み、観客は終始ご機嫌であった。 休憩時間にはチアガールズが登場し、ダンス&ダンス、またダンス。スポーツ用品を 客席に投げ込んだり、ピザをプレゼントしたりのサービス攻勢も尽きない。後半はチ アガールズが1F通路に出ずっぱりになり、ポンポンを持って観客を煽動していた。
Cheer Girls
感心しながらチアガールズに見入っていると、小さな子供が階段をトコトコ降りてい き、チアガールズのひとりにパンフレットを差し出した。ガールズにサインをねだっ ているのだ。ガールズはにっこり笑ってサインし、それを仲間に回した。渡されたガ ールズも応援の手を休めながら順番にサインをし、最後にその子供に渡した。これは なかなか感動した光景であった。まぎれもなく、彼女達もチームを盛り上げるスタッ フのひとりだったのだ。 試合はCavsのリードのまま終わった。時間は22時近くで、観客は行儀よく席を立ち、 会場から出ていった。私もひとり、高揚した気分のままホテルに戻った。
翌日、10時の開館とともに再びHall of Fameを訪れ、2度と拝めないであろう至宝の 数々に最後の別れを告げた。 ホテルに戻ってチェックアウトを済ませ、タクシーでCleveland空港へ。Washington 経由で最終目的地Bostonに向かう、今回最後の旅である。 ユナイテッド航空のカウンターで搭乗手続きを済ませ、荷物を預ける。そう言えば朝 食も食べていないことに気づき、カフェテリアに直行。「CINNABON」という店で巨大 なロールパンを食べる。 出発時刻は13:00。土産物屋を冷やかしながら時間をつぶしているうちに、搭乗アナ ウンスが流れる。さらばCleveland! 素敵な思い出をありがとう! センチメンタルな気持ちで搭乗口を出た私は、いきなり建物の外に出てしまったこと に気づかなかった。一瞬何が何やら分からなくなり、ハッと我に返ったその時には、 小さなプロペラ機の前に立ちつくしていた。 しまった。Cleveland-Washington DC間は超ローカル路線だったようだ。 2年前のLA出張で怖い目にあったウィーンウィーンの小型機に、またもや 乗るハメになってしまった。 「好事、魔が多し」 私は意を決し、オモチャのような飛行機に乗り込んだ。

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