とられてたまるか! 2.ビデオの赤外線コントロール編

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2.赤外線リモコンの波形を見る

まずは、8mmビデオをコントロールできるようにならなければ、防犯カメラで捉えた映像を録画することができません。私の持っているビデオは、映像信号が入れば録画開始というような機能を持ち合わせていないため、何らかの形で電源ONから録画の開始・停止をコントロールできるようにしなければなりません。ビデオのパネル部分を分解して、外部コントロールができるような端子を引き出してしまうのが一番手っ取り早いのですが、見てくれが悪くなってしまうので、できればこれは最後の手段ということにしておきたいです。で、その次に考えられるのが、リモコンの信号をマイコンで作り出してコントロールするという方法です。この方法なら、ビデオに手を加えることもありませんし、その気になれば、リモコンで行えるすべての機能を使えることになります。今回はこの方法を採用することにしました。最近の家電はほとんど赤外線リモコンがついていますから、リモコンを作るテクニックを覚えておけば、この先、ほとんどの家電を自分で作成したマイコンで制御することができるようになり、たとえば自分の机にほとんどの家電を一手に操作できる操作パネルを自作して....なんてことまでできるようになります。たくさんあるリモコンをひとつにまとめてしまえると結構べんりかと。

なんか話がずれてきましたので元に戻します。手持ちの8mmビデオを赤外線リモコンの信号でコントロールするにあたり、まず実際のリモコンからどのような信号が出ているのかを見る必要があります。その信号と同じものをマイコンで作り出してあげれば、8mmビデオが自由にコントロールできるようになるわけです。というわけで、まずはリモコンを分解して、赤外線LEDの電気信号をオシロスコープで観測してみます。赤外線フォトダイオードとオペアンプを組み合わせて別途赤外線受光機を作ってもよいのですが、面倒なのでリモコンを分解して、直接赤外線LEDにかかる信号を見てみることにしました。で、これがその波形。

 

    図2-1 リモコンのシリアル信号

     

 リモコンの、電源ボタン(8mmビデオの電源コントロール)を押した時の波形です。プロービングした場所が悪かったので、波形としてはいまいちですが(赤外線LEDの両端を差動プローブで尾プロービングしたら発振してしまったので、GNDとアノード間をプロービングしました)、必要な情報は得られました。まず、特定のデジタル信号を発振周波数43kHzで変調して送っていること、そして一回の操作で同じ信号を複数回送っていることなどがわかります。せっかくですから、この手の赤外線リモコンの信号についての基本的なことをさらっと述べておきます。

赤外線リモコンの信号は、デジタルのシリアルデータを送っているのですが、ただ単に、LEDを光らせたら1,消灯したら0としているわけではありません。なぜこの方法がだめなのか、その原理図を図2-2に示します。

一般に外来光には赤外線の成分も含まれています。そのため、赤外フォトダイオードは、その赤外線を検出してしまうので、その分が、赤外フォトダイオードの出力に、直流オフセットとしてみられるのです。このオフセット量がスレッショルドレベルを超えてしまうと、出力は常にHレベルに張り付いてしまい、正しい信号が受信できなくなってしまうのです。

     

     

    図2-2 変調なしで信号を送った場合

     

このような、外来光の影響をなくすため、実際には図2-3のようにデジタルデータを数十kHzで変調して送り、受信するときはこの数十kHzのフィルタを介して出力を得るようにします。外来光は直流成分ですから、フィルタにより直流オフセットとなってしまう外来光成分(直流成分)を除去してあげれば、外来光の影響をなくすことができるのです。

     

図2-3 変調ありで信号を送った場合

 

ということで、赤外線リモコンの信号を調べるにあたって、このように変調がかかっていることを頭においておかなければなりませんし、変調周波数を調べて、ちゃんと受信機についているフィルタの周波数にあわせておかないとおかないと、いくらデジタルデータを送ってもフィルタにより除去されてしまい、デジタルデータはあっているのにぜんぜん反応しないという結果になってしまいます。ということで、話を次に進めましょう。

この8mmビデオのリモコン出力、さらに詳しく調べると、以下のことがわかりました。

    ・変調周波数は25kHzから50kHzとばらつきがある。

    ・デジタルデータは、たとえば 図2-4のTA〜TEにおいて、TA,TB,TC,TCの時間比が大事であり、TAやTBなどのそのものの時間(絶対時間)はそれほど重要でない。

図2-4  このシリアルデータは、絶対時間より時間比の方が大事

 

    ・信号は、4から6回、およそ20msの間隔をあけて送信される。送信回数は重要ではない。

     

こうして、信号の性格がわかったところで、実際に必要なデジタルデータを読み出します。防犯ビデオとするためには、少なくとも電源のON/OFF,録画の開始/停止を赤外線コントロールできなければなりませんから、これらを操作をリモコンで行ったときのデジタルデータをオシロで観測して、この信号と同じ波形を、上記の信号の特徴を守りながら作り出してあげればいいのです。

ということで、これらの信号を作り出すプログラムを作って、実際に動作するかを、写真1のようにブレッドボード上にて実際に回路を作り試してみました。とりあえず、電源ON/OFFができることを確認したら、録画開始・停止のルーチンも作って、サブルーチン化します。それがこれです。

    transmit.c  (サブルーチンの部分のみ抜粋)

PICの回路は、単に出力ポートに赤外線LEDをつけただけの簡単なものです。赤外線LEDは瞬間的に大電流が流せるのですが(瞬間的に1Aぐらいまで流せる。これは強い光を発生させることを意味し、リモコンの到達距離を伸ばすことにつながる)、今回はビデオのすぐ近くに赤外線LEDをおくので、到達距離を伸ばす必要はありません。そのため、赤外線LEDには5mA程度しか流しません。これでも十分です。

 

    図2-5 送信回路

     

こうして、実際のリモコンの信号をオシロでみて、それと同じものをPICで作り出してあげれば、ビデオをコントロールできるようになることがわかりました。これで必要なときに録画動作を行えるようになったというわけです。では次に侵入者検出の要である焦電センサ(秋月のキット)を試してみることにします。

     

つづく