欧米介護サービス新事情  
(日経新聞から抜粋)

  まるで「お城」老後を優雅に 
(民主導で質向上)



 英国のロンドンから南へ車で1時間。サリー州コンプトン村の田園地帯に、レンガ色のしゃれた建物
が見えてくる。 杉の木と芝生に囲まれ、すぐ近くに湖。 まるで城のようだが、実は老人ホームである

 約40人が「優雅な老後」をおくる。フィリップ・ステプルトンさんは89歳。身内を失った4年前、「城」
に住み始めた。 訪ねた時、看護婦と話し込んでいる最中だったが、「ここなら、さみしい思いは全くし
ない」と満足げ。 看護婦は24時間待機している。

 ホームでは絵画など趣味を楽しむ老人の姿も多く、劇場などに出かけたければ手はずを整えてもら
える。 ボケを防ぐためにも、いろいろな「メニュー」えお用意している。料金は週440ポンド(約8万8
千円)。



 経営する BUPA社は民間企業。 全国に30カ所の老人ホームを持つほか、医療保険、病院、フィ
ットネスクラブなど幅広く手がける。 「健康管理のデパート」(ジョン・カスターニョ・商品開発部長)だ。 

 競争相手が多いから、サービスの向上に努めている。95年の税引き前利益は9900万ポンド(約
190億円)。 4年前の5倍という繁盛ぶりである。

 英国では、70年代末に民営化推進論者のサッチャー首相が登場して以来、福祉分野でも民主導
の機運が高まった。 医療にも、国が税金を主な財源として運営するナショナル・ヘルスサービス
(NHS)の人気は下がり、有料の民間医療制度を利用したがる人が増えている。 早く診療を受けられ、
入院時の病室の手配も素早いからだ。

 「ゆりかごから墓場まで」という英国の福祉国家のイメージはいまも変わっていない。 変わったのは
その担い手。 介護分野で民の存在が増している。



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