「井笠鉄道と産業遺産」シンポジウム |
・井笠鉄道で活躍した車両を鉄道車両史の視点から見る(吉川文夫さん) 井笠鉄道の車両史を顧みるのに、蒸機はコッペル、気動車はT型フォード、客車はボギー車という三つのキーワードを提示されました。コッペルは多くの説明は不用ですが、開業時から活躍したドイツ製機関車のメーカー名です。各地の軽便鉄道でも大量に使用され、軽便蒸機の「標準」ともいえる存在で知られています。T型フォードは、世界で初めて大量生産された乗用車のガソリンエンジンですが、井笠鉄道が1927年に導入した気動車(レールカー)のエンジンもT型フォードだったということです。当時はディーゼル機関もありましたが、小型化が難しく、気動車もガソリンエンジンが一般的でした。ボギー車は、2軸(車輪が4つ)の台車を車体の両端に配した形態の車両のことで、細いレールにかかる負担(軸重)を軽くするためだということです。パネルディスカッでは、こうした車両を遺産として残すことの大事さに加え、どうやってつくられたのかや、どのようにして動かしたのかという技能を残すことの大切さも強調されていたのが印象的でした。 |
・井笠鉄道の産業遺産と考古学的意義(堤一郎さん) 井笠鉄道沿線に残る遺産をスライドを使いながら紹介。沿線には全部で10カ所の遺産が残っており、以下列記すると、(1)笠岡駅西の跨線橋下のホジ7(2)大井村駅のプラットホーム石積み(3)井笠鉄道記念館のコッペル1号機とホハ1などの車両(4)七日市駅への道を示す石標(大正2年)(5)矢掛線の小田川橋梁の橋台(6)矢掛駅の駅建物、ホーム跡など(7)神辺線の出部駅付近の石標(昭和10年)(8)経ケ丸グリーンパークのホジ101とホハ8(9)両備国分寺駅のホーム石積み (10)湯野駅のコンクリート製橋梁(約10M)、です。とくに、ホジ7については、梅鉢鉄工所製のガソリンカーとしては唯一、現物が残るものとして貴重さを力説されました。文献ではホジ7のエンジンは、いすずDA45となっているそうですが、実際に残るエンジンにはDA48と刻印されているそうです。こうしたことからも、実物を残すことの大切がわかるということです。今後の目標として、鉄道記念館の目録などの整備に加え、こうした遺産をばらばらの点のままではなく、線でつないで面とし、井笠鉄道の遺産が示す軽便鉄道の標準的な姿を「システム」として残す方法を目指すべきだと提案されていました。 |