西南海観光鉄道
パワーユニット

 乗工社の製品に関する雑誌記事やWEBを探索していると、同社のパワーユニットに対する低評価があちこちで見受けられます。ブラス製の上回りの出来栄えに対しては賛辞を惜しまないアメリカのナローモデラーも同様です。「ラビットスタート」と揶揄されたスローが効かない走りや、集電不良などに対する不満が多いようです。とくに初期製品が積んでいたキャラメルモーターがやり玉に挙げられていますが、後にモーターはキドマイティに変わり、集電ブラシも改良されて、初期製品よりは評価も改善したようでした。私は、パワーユニットが搭載された最初の製品だったポーター亀の子のキットを中学生の時に買って組みました。工作はいたって簡単で、別稿でも書いたように塗装前には珊瑚模型店製の沼尻シボフ・ボハフ(真鍮製完成品)の2両を引いて快調に走り回っていました。長編成を必要としない軽便鉄道なら牽引力も満足です。ところが、塗装のために上回りと下回りをバラし、再び組み上げるとウンともスンともいいません。モーターの端子にパワーパックを直結してみたかどうかは覚えていないので、モーターの不良なのか、集電不良なのか、伝動関係なのかは定かではありませんが、ともかく原因を究明できずに投げ出してしまいました。そうした調整の難しさはあるのでしょうが、発売当時に調達可能な部品や技術で、それまではほとんど自作するしかなかったナローの小型車の動力装置を、鉄道模型のパーツとしては廉価で送り出した価値は認められるべきではないでしょうか。

 自分で組み上げた動力車が客車を引いて走る姿は、とても気分が良いものです。完成品を走らせる楽しみとは違った、鉄道模型の大きな楽しみのひとつを味わわせてくれたのが、ほかならぬ乗工社のパワーユニットでした。鉄道模型の入門者としてこの製品に接した私にとっては、「パワーユニットは使える」という刷り込みみたいなものが出来上がっています。MODELS IMONによるパワーユニット再発売(しかも乗工社ブランド)を機に、こんなことを思ったのでした。(02/12/05)


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