連載コラム・藤子な瞬間


週刊FFMM 92号(2001/05/24)より




▼その8「まんが道」

 現実の出来事や日常生活の中でふと「こんな場面がマンガにあったな」と思う事はありませんか。それが「藤子な瞬間」です。ここでは私が体験した「藤子な瞬間」を紹介していこうと思います。第8回はA先生のライフワークとも言える「まんが道」です。

 前回の「藤子な瞬間」の原稿を書き上げた後の話です。3月末に原稿を出した後、月刊藤子MMは休刊となり、月刊で連載していた記事は週刊に移行することになりました。この移行のどさくさに紛れて、「藤子な瞬間」は1か月お休みしてしまったのです。4月は、それまで担当してきた「SF短編PERFECT版」のレビューも終わり、毎月締め切りと戦っていた月末に余裕ができたのでした。
 で、代わりに本職方面の報告書など、いくつか別のモノを書くことにしたわけです。ところが、パソコンに向かってキーボードの上に手を置いても全く作業が進みません。そうこうするうちに5月になり、再び「藤子な瞬間」の締め切りもやってきました。ところがなんと、これも筆が進みません。結局遅れに遅れた原稿は週刊MMの発行を一週飛ばさせる一因ともなり、今に至るわけです。

 ここで思い出したのが「まんが道」で、主人公の満賀と才野が東京で売れるようになり、初めて帰省したときのことです。2人は仕事を持って帰省したものの、故郷では全く仕事に手が着かなくなりました。並べるのもおこがましいですが、私の筆が以前に増してはかどらなくなったのと共通するところがあると思うのです。長距離走でもそうかもしれませんが、一定のペースを守っているときには多少きついと思うくらいでも続けられるものです。しかし一度休んでしまうと、再び元のペースに戻ろうと思ってもなかなかうまくいきません。
 そんなわけで「今回の原稿がとっても遅れたのはペースが崩れたからで、ペースが崩れると原稿が遅れるのは満賀や才野とも同じなので、許してください。」というしょーもない言い訳をもって今回の「藤子な瞬間」に代えさせていただきます。ダメ?

<『まんが道』あらすじ>

 終戦後間もない頃、富山県高岡市の小学校で2人のまんが好きな少年が出会った所から始まる、藤子不二雄の自伝的作品。掲載誌を変えながら描き続けられ、今も続編の「愛…しりそめし頃に…」が連載中(隔月刊ですが)。

<収録>

●愛蔵版「まんが道」全4巻(中央公論社)
●単行本「愛…しりそめし頃に…」(小学館)
 ほか

藤子不二雄メールマガジンのバックナンバー
http://chinpui.shiratori.riec.tohoku.ac.jp/ffmm/