No.92

           大統領令と連邦法との関係


この欄のNo.88では、連邦規則と連邦の法律との関係について記した(2月3日)。

両者の関係で明々白々なことは、連邦規則は連邦法より下位の法形式である点だ。
その連邦規則の1つに、大統領令
(Executive Order)が存在する。

連邦憲法上の明文はないが、
イギリスの君主に由来する大統領特権
(Executive Privileges)の1つとして、
連邦政府の成立(1789年)とともに、かなり発せられてきた。

インターネットで見れば直ぐ判るが、
F.D.ルーズベルトの3721件を筆頭に、ウィルソン大統領の1803件など、
歴代大統領の実績が示されている(オバマ大統領は276件)。


大統領令は基本的に、政府の役人ら(軍人を含む)に向けられた命令である。
間接的に一般人も、その効力によって縛られうる。

オバマ大統領は、当初の2年だけ、議会の上、下両院で民主党が多数を占めたことから、
ウォール街やGMなどの救済措置など、折からの大不況、金融恐慌に対処したほか、
健康保険法(ACA)など、記念碑的な法制を実現している。

その後は、議会の上、下両院ともが、略何でも反対の野党主導となり、苦労した[1]。

しかし彼は、シカゴ大学で憲法を教えていたこともあって、
大統領令によって立法に変えるようなことは、極力避けている。

オバマ大統領がこの大統領令の「最大の信奉者だった」などとして、
これを多発したと報じているものがあるが(2,3日前、msn.com)、
事実と異なるばかりか、彼の経歴や、
その法学から来る考え方(合衆国憲法の基本に立った)を全く理解していない話しである。

反対に、三権分立の憲法原理を重く考えていた彼は、大統領令によることを抑えていた[2]。


** 注釈 **

[1] その後の議会共和党は“party of no”と仇名されて、その協力がまるで得られなかったため、
  不法移民のうちの未成年者の扱いなどで、大統領令に拠らざるをえなかった面がある。
[2] 120年前のクリーブランド(Grover Cleveland)大統領以来の少ない276件を発している
  (2017年1月23日、pewresearch.org)。


                                      2017年2月9日