No.88
連邦規則と法律との関係
日本でも良く似た状態であるが、
アメリカでは議会が作る法律は、粗々のことしか定めていないことが多い。
その場合、具体的なことを定めるのは大統領であり、
彼の政府が用意する連邦規則(federal regulation)である。
ウェストヴァージニア州は、その石炭(露天堀り)産業で有名である。
次は、同州のその産業についてNPRが伝える話しである(1月20日)。
ネルソン氏は、そこのある石炭会社で働く。
最近、夫婦の家のすぐ近くに石炭の選別・加工場ができ、
彼らの住む家も石炭の粉末で蓋われだした。
ネルソン氏の夫人は、酷い喘息に罹ってしまった。
彼は会社に掛け合ったが、相手にしてもらえない。
露天堀り弁償法のような1977年の法律があるが1、
上記の通り、粗々のことしか定めていない。
法律の下で予定されていた連邦規則は、
その後、作成のための着手はなされたが、10年近くかかって、
やっとオバマ大統領の任期最後の日に完成した(1200ページある)2。
ところが、全国石炭労働組合の弁護士に言わせると、
この連邦規則でも、ネルソン夫人の保護は十分でないという。
そこで全国石炭労働組合は今この連邦規則の改正に動いているが、
今回のネルソン夫人の病には、間に合わない
(この出来たばかりの連邦規則に頼るしかない)。
ところが、その連邦規則も、
発行されてから60日以内(議会の会期の日数で)ならば、
議会は簡単にこれを無効化できるという(その旨を定めた連邦法がある)3。
そうなると、たとえ不十分でも、
ネルソン夫人の保護に役立つ連邦規則が、無効になってしまうことになる。
政権交代とともに、共和党の議会はオバマ時代の大統領による連邦規則の多くを、
直ぐにでも反故にしようと考えていて、この連邦規則も、そこのリスト中に入っている。
**注釈**
1 Surface Mining Control and Reclamation Act of 1977
2 Stream Protection Rule
3 Congressional Review Act, 5 U.S.C.§801 et seq. (1996)
2017年1月30日