No.39

            再びUberについて


暫く前に、この欄でアメリカでのUber(タクシー代り)について採り上げた(第26回)。

問題となっていたのは、会社(Uber)と、自前の車を持った個々のドライバーらとの法律関係である。
そこでは「80プラスα百万ドル」で会社と和解したドライバーは、
「Uberの従業員ではない」、「互いに契約当事者の一方である」
式の法的解決によったと報じられていた。


6月14日のNPRは、この和解に対し不満を持つドライバーの紹介から始めている。

何が不満なのかと言えば、「Uberにもっと払わせられたのに!」というものだ。
法廷では、各別々のドライバーの代理人と称する9人の弁護士が立上って
裁判官に、4月に一旦まとまった和解案のやり直しを求めていた。

過去3年間にわたり、ドライバーの代理人として会社との間で和解を纏めたのは
弁護士Shannon Liss-Riordonである。

サンフランシスコ連邦地裁の一室で、改めて3時間以上にわたって持たれた会議で、
これらのドライバーは先ず、

「自分らは、会社に雇われている。実質的には従業員である
…時間外や社会保険料なども会社に負担して貰いたい…」
と主張した。


彼女がやっていた集団訴訟から離脱するドライバーがどんどん増えてくれば、どうなるか。

各自が独立して原告となって、それぞれやり直しができる。
しかし、これは1人の弁護士の言う通り、経済的に合わない。
1人1万ドル貰えたとしても、弁護士費用の出処が無い。

Shannon弁護士は、Uberの代理人との間で「歯と爪」
(tooth and nail)で闘ってきた
(その相手の代理人が、「彼女はよくやった!」と、
今や唯一人味方になる発言をその法廷でもしていた)。

そのShannon弁護士は今、和解案で定めていた自分の報酬を
「10百万ドル減らしてもいい」、と裁判所に申出た。
「この3年間、死ぬ思いだった、こんな大変な思いをした事件はない」と彼女はいう。

そのうえで、ドライバーらに言う。
「もっと戦い続けてもいいわよ。ただ、現実的に考えないとね」

彼女はその説得材料として、自らの経験を語る。

「タクシー会社Boston Cab宛に250百万ドルの申立をして勝ったことがある。
しかし、会社は控訴。そこでも彼女が勝った。すると会社は更に上告。
誰もがドライバー側(彼女)が勝つに決まっていると思っていたが、
昨春、マサチューセッツ州最高裁は、原決定を覆した。残ったものはゼロ。徒労だけ」


もう1つ、Skycap Workersの代理人として航空業界と闘った時も、
これに似た結果しか得られなかった。

本件でも彼女は和解の席で、裁判官に何回も、
「これがダメなら、どうぞ裁判
(trial)に行って頂戴。それでも結構ですよ!」

しかし実際の所、彼女は陪審による審理での勝ち目についてネガティブであった。
サンフランシスコはUberの町だ、と言ってよいからである。
誰もが、Uberの話をしている。
『呼びましょうか、どのUberを使っているの?』などなどの会話である。



                            2016年6月16日