2009年2月20日
須坂市長
三木 正夫 殿

                                                     長野県自然保護連盟
                                                            会長 和田 蔵次

長野県下の高山・山岳地域における
大型風力発電施設建設中止の意見書


 市政発展を目指す日ごろのご努力に敬意を表します。
 近年、県下の高山・山岳地域に大型風力発電建設計画が進められ、自然や社会環境への問題を引き起こすことが懸念されています(伊那入笠山、須坂根子岳など)。国際社会は今、地球温暖化対策のために、化石・原子力エネルギー中心の産業社会とその文明を乗り越え、再生可能なエネルギー社会をめざし、多様な研究、実験、必要な政策の開発に取り組んでいます。このような時代状況の中で、風力、水力、太陽光などによる自然エネルギーの生産も多様な形で進展しており、私たちは、これら自然エネルギーの開発と生産の更なる拡大を願っています。しかし、大型風力発電については、自然環境への影響が大きく、先進国ドイツでも激しい議論が展開され、厳しい法規制がかけられるなどそのあり方が問われています。私たちは先に「信州にふさわしい自然エネルギーは何か」を主題にシンポジウムを開催し、山岳県長野におけるそのあり方を、科学的に探りました。そして以下に述べるように、山岳県長野の自然環境保護の観点から、大型風力発電施設の建設はふさわしくないとの結論に達しました。
 よってここに意見書として提起させていただきますので、真摯な対応をされますよう要請いたします。



1.エネルギー問題に対する基本的理念について
 化石燃料を大量消費し、大きな環境汚染を引き起こす破壊型のエネルギーの時代に代わり、生産し、栽培する新しい自然エネルギーの時代へと社会建設を基本的に転換することを、行政、企業、市民の共通理念とする。

2、風力の適地について
 大型風力発電施設は生態系を中心とした自然環境への影響が極めて大きく、どこにでも建設してよいものではない。長野県の貴重な高山・山岳地域は、その景観を含めて国民全体の共有資産・公共財産であり、一企業の利益に供してはなりません。
 また、長野県は、その地形・気象・生態的条件などから、大型風力発電施設の適地ではありません。 

3、風力に依拠しない多様な自然エネルギー開発について
 全国有数の日照時間を持つ長野県においては、太陽熱温水器や太陽光発電が公共施設、家庭などどこでも可能です。また、長野県は豊富な水力を持ち、全県で小水力発電が可能です。さらに豊富な森林資源を活用した木質バイオマスエネルギーなども可能で、環境に負荷を与えない大量の自然エネルギーの生産ができる適地です。これらのエネルギー生産は、行政が主導し、市民と共働で取り組めば、風力が持つマイナス効果をはるかにしのぐものとなり、地域社会はもとより、長野県全体の真の利益になります。
須坂市ではすでに「須坂市地域新エネルギービジョン」を策定しておられ、その中の新エネルギー導入の基本方針では"自然との共生と共存""天・地・人・歴史の恵み"を活かし、誇れる自然環境を次世代にとうたっておられ、太陽光、バイオマス、小水力発電があげられておる事は先進的なお考えと敬服いたします。

4、再生可能なエネルギー法制定にむけて
 ドイツ連邦政府は、「再生可能エネルギー法(EEG)」(2000年制定、2004年改正)のもとで、先駆的な政策を積み上げ、やがては電力の80%を自然エネルギーでまかなうことを目標にとり組んでおり、大きな成果をあげつつあります。私たちは長野県でも総合的な「自然エネルギー政策」を確立し、立ち遅れている国の法整備などにも反映すべきである、という提案をしております。

5、「自然エネルギー利用県民会議(仮称)」設置について
  以上の諸課題を効果的に実現するために、官・民含めた運動体「自然エネルギー利用県民会議(仮称)」を設置し、地球温暖化防止のための政策を全面的に推進すべきと提案しております。

私たちは「須坂市地域新エネルギービジョン」の精神にのっとり自然環境に多大な影響を及ぼす大型風力発電施設の中止を須坂市長に要請いたします。



長野県自然保護連盟・事務局     
長野市川中島町上氷鉋1332-1
電話026-284-5545 FAX 284-6431    

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