マニラで私もぼったくられました

 (申し訳ない。撮影したデジカメのスマートメディアをどこかに紛失してしまったため、旅行前半の写真は無しです。まったく私ったらもう)

4月24日(月)
 9時半の飛行機でマニラに出発。
 フィリピン航空機は思ったより綺麗だった。シートも倒れるし、イヤホンも聞こえるし、いうことなし。問題は高機能過ぎて、使いこなせないこと。説明書きがどこにもないので、どれがテーブルやらイヤホンの穴やら、まるでわからない。テーブルを出そうと、全然違うところをいじり回していて、恥をかいてしまった。機内食のチキンカレーは、まるで辛くないのがちょっと拍子抜けだった。機内でリコンファームができるのは便利だな。マニラ・セブ間の国内線はリコンファーム不要だとのこと。

 2時頃マニラ着。マニラ時間では1時となる。約4時間半のフライトだった。ところが、それからが長い。ターミナルへの中継バスが来ないということで、到着してから、機内で延々30分も待たされる。エアコンも止まり、だんだん暑くなってくる。何しろ外気温は35度だ。到着と同時に荷物を持って通路で待っているようなせっかちな人は、30分間、この暑い中を立たされていたわけだ。ざまあみろ、という気になるが、こっちだって暑い。

 そして空港に到着しても、パスポートチェック、荷物と待たされる。みんな大荷物なのね。段ボール箱がやたらと出てくる。それを何箱もカートに積み上げる。出稼ぎのフィリピンギャルなのでしょうか。私の貧弱な鞄が箱の下から発掘され、ようやく空港を出たのはもう2時半だった。あ、両替忘れた。慌てて係員に説明し、なんとか空港に再入場。空港の両替レートは悪いものだが、ここでは1万円で3700ペソ。1ペソ=2.7円だからそう悪いとは思えない。昨日の新聞では2.75円くらいだったから、手数料を考えると妥当ではないか。
 そしてまた待たされる。マニラ空港のタクシーは観光客にふっかけるので評判が悪かった。そこで登場したのがクーポンタクシー。これは空港の事務所で運賃を前払いするので、吹っかけられる心配がない。ただし、若干高い。ホテルのあるエルミタ・マラテまでは280ペソ(約千円)だった。メータータクシーだと150ペソくらいらしい。ところがこれも長蛇の列。30分も待っただろうか。ようやく乗り込む。
 ところが運転手がホテルの場所を知らない。こちらもいい加減な地図しか持っていない。それらしいところを探し回る。バンコクと同じく、マニラも運転は荒っぽい。幅寄せ、割り込み、クラクションは当たり前。混雑していると反対車線に乗り込んだりもする。ようやくホテルにチェックインしたのは4時。「背中まで45分」という沢田研二の名曲があるが、私の場合はホテルまで2時間45分だ。やれやれ。これでは今日は観光は無理だ。運転手にチップをやろうと思って財布を探すが、あれ、千ペソと百ペソしかないぞ。しまった、タクシークーポンを買ったとき、慌てていてお釣りをもらうのを忘れた。くそ。やむなく、百ペソを渡す。こんなことするから、日本人ってやつは。

 ホテルは予想よりちょっと古びていた。エレベーターも一昔前の英国のように、鉄格子がはまっている。エレベーターが到着したら、ドアを手で開け、鉄格子も手で開けて乗り込む方式。これで5200円はちょっと高いような気がするなあ。それよりも気になるのは、周囲がやたら古びていること。スラムではないかというような崩壊しかけの建物が多い。でも設備は全部そろっている。洗濯物を掛ける紐さえある。ま、いいか。とりあえずビール。サンミゲルだ。料金表では45ペソと高いが、ええい飲んじゃえ。あたしゃ疲れたよ。
 睡眠不足のせいか日本とマニラの温度差に参ったか、はたまた心労のせいか日常の運動不足のせいか、疲れ切ってしまった。ベッドに倒れこんで人心地がつくまで休む。夕方、えらく大きな爆発音があって目が覚める。雷雨が襲っていたようだ。まだ眠い。日本で昼夜逆転した暮らしをしていたせいだ。昼過ぎに寝て、夜に起きる生活。時差が1時間しかないから、解消するわけもない。

 しかしこうしているわけにもいかない。髭剃りを買わねばならぬ。飯だって食わねばならぬ。ビールだってサンミゲル以外も試してみたい。6時から外出し食事。外へ一歩出ると、「タクシー、乗るか?」「オンナ、いらんか?」「カラオケ、パブ、セクシー」「撃ってみないか、ピストル、ライフル」としつこい勧誘が待っている。「コレ」と妙な手の握りを見せる端的な奴もいる。なんなんだよ。俺は今日バテているのだ。おねえちゃんよりも飯と酒なのだ。なんとか振り切ってレストランへ。お手ごろ価格で有名なフィリピン料理の店なのだが、時間が早すぎたか、店内はがらがらだった。
 カレカレという、豚肉と野菜をカレーで煮込んだ名物料理を頼む。うわ、量が多い。小鍋くらいの大きさの土鍋に一杯はいっている。豚肉は繊維になるまで、皮はゼラチン状になるまでとろとろに煮込まれている。野菜はいんげん、小茄子、ショウガ、竹の子に似た歯触りだが繊維が残る妙な野菜など。味は何だか頼りない。カレーに似ているのだが、香辛料の味がまるでしないのだ。とにかく煮込んで、ウコンで色をつけ、片栗粉でとろみをつけて、はいできましたよという感じ。学生食堂のカレーのようだ。そういえば機内食のカレーもそうだった。これがフィリピン流の味なのか。
 乏しい味にアクセントをつけるために、アミの塩辛のようなものをつけて食べるらしい。なるほど、塩辛さと発酵食品特有の匂いが追加され、少しは味がするようになった。それにしても量が多い。三分の二食べたところでギブアップ。ビールを頼んだら、サンミゲルの小瓶と氷の入ったグラスを持ってきた。ここいらではビールをオンザロックで飲むのだろうか。氷はなんだか怖いのだが、せっかくの親切だ。飲んじゃえ。

 帰りにコンビニで髭剃り、煙草、ビールを購入。「セーラム」「レザー」程度の言葉も通じず、情けなくなる。いやきっとタガログ語しか通じないのだ。きっとそうだ。それにしても、コンビニの入り口にはショットガンのような物をぶら下げた武装ガードマンが常時立っていて、なんだか気味が悪い。
 煙草は外国産の見慣れた銘柄ばかり。ビールはいろいろあった。サンミゲル(19ペソ)に次ぐシェアを誇るというビアナビア(17ペソ75)は、ちょっと妙な後味が残る。酔いが回りやすいような気もする。レッドホースビア(19ペソ)は、よくある海外格安ビールの味といったところか。ホテルのビールが市価の2倍強というのは、かなり良心的なところですな。それにしてもフィリピンは、やはり酒が安い。350ミリの缶ビールと50ミリペットボトルのミネラルウォーターが、ほぼ同じ値段。

 ホテルに戻ってから、夫妻に頼まれていた市外通話をかける。かけ方をオペレータに聞くのに一苦労。向こうは、「8をダイヤルして、2をダイヤルして」といっているのだが、こちらはしばらく、「8をダイヤル、TO……?」と誤解していたのだ。ようやく分かって電話したのだが、さてそれからが大変。こちらはともかく言いたいことだけ言う。それに向こうが聞き返してくるのだが、何のことやら皆目分からぬ。新規の予約と勘違いされたのかもしれない、と思って、「ミスター、アンド、ミセス某、リザーブ、オールレディ」などと言ったが通じたのか。とにかく、こちら「チェックイン、エイプリル、27日、フォーパーソン」などとこちらがたどたどしく言うことを、向こうは「オーケー、オーケー」と言うので、大丈夫だ、通じてる、と判断し通話打ち切り。本当に大丈夫だろうか。かなり心配。27日にはさっそく夫妻に電話してもらわねば。

 両替 空港で一万円を3700ペソ
 タクシークーポン 280ペソ(実質300ペソ……)
 運転手へチップ 100ペソ
 レストラン 225ペソ(カレカレ164、ライス20、ビール42)チップ25ペソ
 コンビニ 120ペソ(ビール2本37、煙草45、かみそり35)

4月25日(火)
 ラ・コロナは基本的な設備は全部揃っているのだが、壁が薄いのだか隣の物音がよく聞こえる。やたらおねえちゃんが出入りしているのも気になる。環境もよろしくない。ということで、チェックアウト。

 通りを歩いてエルミタ・ツーリスト・インに到着。まずはコレヒドール島のツアーについて聞く。明日の朝7時半に出発、1日ツアーで2800ペソとのこと。ついでに宿もここにとる。ここ出発なのだから、楽な方がいいやね。1泊660ペソ。おんぼろであちこちぶっこわれかけ、配線がむき出しになっていたり浴室のタイルが剥がれていたりするが、エアコンがあるのがいい。 

 そこまでは順調だったが、それからがいけない。ホテルに荷物を置いて、ロビンソンデパートに出かける。最近できた一大ショッピングセンターだ。とりあえず両替しようかと思っていると、誰かに声をかけられる。見ると、さっきのホテルの入り口にいた警備員ではないか。片言の日本語混じりに、親しげに話しかけてくる。朝から休みなので、子供連れで来ているとのこと。昼飯を食わないかと誘われたが断る。両替するのだと言うと、それはこちらだと連れていかれる。デパートを出て、どんどん歩かされる。この店のレートがいいのだと言う。聞いてみると1万円が3500ペソだ。空港でも3700ペソだぞと言うと、すぐ3700ペソになった。勿論ぼられているので、その後に行った両替屋は3900ペソだった。

 その後、俺の働いているオフィスにちょっと寄っていけというのでついていくと、そこが射撃場だった。だいたい、ついていくほうがどうかしている。入り口付近に数人のむさくるしい男がたむろしていて気持ち悪い。
 なんだかんだと銃を握らされ、撃たされてしまう。45口径だという銀色の銃の引き金を引くと、大きな衝撃があって薬莢が飛び、火薬の煙があがる。もっとしっかり持って撃つのだ、と言われるが、発射の反動で銃がぶれないように撃つのは容易ではない。俺が見本を見せてやる、と警備員が撃つと、見事に目標の人物像の心臓に続々命中する。「ビッグマグナム黒岩先生」という漫画で、主人公が射撃訓練で人物像の中心を外し、手足にばかり当てるので、教官が「ユーはポリスだな、それも、相当凄腕の」と見抜くくだりがあるが、ひょっとしてフィリピンの警官やガードマンは、有事には犯人を容赦なく射殺すべし、と教育されているのだろうか。
 2600ペソ請求される。むっとしたが、なにせ先刻の見事な射撃の腕を見せられているので、おとなしく支払う。むろんのこと暴利なので、後で会ったポン引き風の男によると、せいぜい1000ペソだと言う。45口径の反動がいかに大きなものか知ることができたのが、唯一の収穫といえよう。

 そうして歩いていると、後ろからまた声がする。さっきの射撃場の入り口付近でたむろしていた男のひとりだ。カタコトの日本語を話す。
「アナタ、さっきの射撃場で、いくら払った?」
 大きなお世話ではないか、と思いながらも教える。すると大仰に手を広げてポーズを作りながら、
「オー、それ高すぎるね。シューティング、せいぜい1000ペソ。あんな男に、ついていってはいけない」
 などというのだ。それからもその身を摺り寄せんばかりにして、かき口説く。
「マニラ、悪い人ばかりじゃない。いい人多い。でも、ちょっとだけ、悪い人、いる。さっきのガードマン、よくない。あなた、ガイドが必要」
 あんたはいい人だと証明できるのかよ、と心の中で毒づきながらも、半分は男の説を首肯した。このままでは3日のうちにかっぱがれて一文無しになるかもしれない。男はガイドの必要性を力説するので、話を聞いてみた。どうやらこの男がガイドなのではなく、ガイドをする女性を紹介するらしい。店に行って会った女性はなかなか見目麗しくもあるし、これから1日ガイドをして1700ペソだということなので、頼むことにした。
 女性は英語しか喋れないがなかなか有能だった。ポコ駅前にある高山右近の像を見たいというと、タクシーの運転手となにやらタガログ語で話しはじめ、車を出発させた。駅についてからもなにやら議論しながらあちこちと車を走らせ、ついに銅像を発見した。私ひとりなら、絶対に見つけられなかった。
 高山右近は今の大阪付近を領地にしていた戦国大名だ。敬虔なキリスト教徒として知られる。秀吉のキリスト教禁止令が出ると、大名としての地位を捨てて、当時ルソンといったフィリピンに渡り、その地で死んだといわれる。それほどの人間なのに、その顔に赤ペンキを塗って侮辱するというのはいかがなものか。敬虔なカトリックとしてのフィリピン国民の名誉が泣こう。
 その後、動物園を案内してもらう。暑いせいか、像も虎もライオンも鰐も日陰に隠れ、微動だにしない。わずかに手長猿だけが、元気に長い腕でブランコのように揺れていた。
 女性に心霊手術のことを聞いてみた。今でも心霊手術は行われているらしい。マニラにもその手の病院がいくつもあるとのこと。でも、治療費が高い。星新一が「きまぐれ体験紀行」で書いていたような一万円弱ではなく、数十万円はかかるとか。それじゃ、ちゃんとした手術の方が安いじゃないか。どうやら心霊手術は、近代医学に見捨てられた金持ちの最後の希望として存在しているようだ。

 女性と別れてから、ロビンソンデパートへ服を買いに行く。なにしろ現地調達主義なので、Tシャツを二枚しか持ってきていないのだ。いくらか買わなければ。
 服を買って外に出たが、なんだか見知らぬ風景。どうも裏口から出てしまったようだ。戻ればよかったのだが、なんだか面倒だ、行っちゃえと悪い癖が出る。どんどん歩いていくと、なんだかうらぶれた通りに出る。恒例により迷ってしまったようだ。薄暗くて薄汚い通り。上半身裸体の男が路上にうずくまっている。なんだかやばそう。

 突如、「コンニチワ」とカタコトの日本語をかけられる。無視すればいいのだが、反射的にふりかえってしまう。人相凶悪なふたりの男。非常にやばい。そのまま歩き去ろうとしたが、いきなり肩を掴まれる。すごい握力。振り向いたとたん、眼鏡を奪われる。これを返して欲しくば300ペソよこせ、などという。私は極度の近視なので、眼鏡無しではなにもできないのだ。まず眼鏡を返せ、そしたら払う。本当だな、などというやりとりの後、取り戻した眼鏡を掛けて財布を探り、300ペソ渡す。すると恐るべき早業でふたたび眼鏡を奪い、隣の男を指さして、こいつは兄貴だ、兄貴にも500ペソよこせ、などと言いやがるのだ。知ったことか、と言いたかったが眼鏡のためにぐっと我慢し、先に眼鏡を取り戻して500ペソ渡し、今度は眼鏡をしっかりと手に持って走り去る。幸い、それ以上は追いかけてこなかった。
 マニラではおちおち道に迷ってもいられない。フィリピン人はいい人もいるという話だが、私の体感では、いい人一人に対してぼったくり五人、ふんだくり三人、愚連隊二人、犯罪者四人が存在するようだ。コンビニの武装ガードマンが、なんだか頼もしく思えてしまった。

ガン 2600ペソ
ガイド 2000ペソ
動物園 12ペソ
タクシー 往復100ペソ
昼食 160ペソ
コレヒドールツアー予約 2688ペソ
両替 1万円を3700ペソ(ガードマン紹介の店)
   2万円を7800ペソ(飛び込みで入った店)

4月26日(水)
 コレヒドールツアーに出発。
 指定された時間に旅行代理店で待っているが、いつまで経ってもガイドが来ない。おかしいな。旅行代理店は開いていないし。思いあまって併設のホテルの従業員に聞いてみる。すると、ちょっと待ってろといってあちこち電話を掛けた。しばらくして受話器を渡す。ガイドの人らしい。どうやら、港で待っているということらしい。おいおい。話が違うぞ。
 どうやら代理店とガイドで話が行き違ったらしい。港ってどうやっていけばいいのだ、と途方に暮れていると、ホテルの従業員が親切にもタクシーを呼び、行き先を告げ、乗せてくれた。こんなに親切を受けたのに、こちらもおたおたしていたので、チップを払うのを失念してしまった。謹んで日本から感謝の意を表明します。

 港でチケットを受け取り、フェリーに乗り込む。ずいぶんと高速フェリーで、コレヒドール島まで一時間で行くらしい。ああ、しかし、船内でコレヒドールの歴史とか話しているらしいのだが、その英語がほとんど理解できない。大丈夫なのかな、まったく。

 というのは杞憂であることが島に上陸してから判明した。日本人が多いのだ。日本人男性とフィリピン人女性の夫婦数組を含めて、十五人くらい。島では乗り合いバスのようなものに乗って移動するのだが、日本人用に一台用意されていたほどだ。ガイドも日本語を話す。こうなると現金なもので、ちょっと日本人が多すぎるなあ、などと不満を漏らしたりするのだ。
 
 ガイドはずいぶんと老齢で、ちょっと水木しげるに似た容貌。これがあやしげな日本語を情熱的に喋る。腕が両方ある分、水木しげるの二倍元気なようだ。
「アメリカ軍、フィリピン軍、捕虜になりました。その後、アメリカ軍、反撃、しました。日本軍、捕虜いない。みんな、ギョクサイ、しました。天皇の軍隊ですから」
「ヒロシマ、ナガサキ、アトミックボム。平和、来ました。これ、天皇陛下の平和」
 天皇を褒めているのか貶しているのかよくわからない。

 島の道路はすべて舗装されている。
 十数年前にコレヒドールに来たことのある人の話によると、その頃は舗装もなかったし、大砲も塗装されていず赤錆だらけ、一部の砲は弾を込めたまま放置してあったという。あのまま放置すればすべて赤錆と化してしまうので、残った武器にすべて防錆のペンキを塗ったらしい。それでも、ジャングルの中では、いくつもの砲や戦車や戦闘機が、赤錆と化しているのだろう。
 島じゅうが瓦礫、瓦礫、瓦礫。すべてアメリカの兵舎である。
 しかし、あれだけの砲弾を受けて、骨組みだけでも残ったということは、逆に兵営の建築の優秀さを物語っているのではないだろうか? 兵舎をバラックというが、アメリカのバラックはずいぶんと丈夫なようだ。今の日本のマンションなら、絶対骨組みすら残らないはずだ。
 日本軍の兵舎は残っていない。ほとんどアメリカ軍の兵舎を再利用していたからだ。たまにあったオリジナルの兵舎は、例によって木だの竹だので立てた堀立て小屋なので、爆撃で木っ端微塵になってしまい、残るはずもなかった。

 日本人がいた安心感で帰りの船中、ビールを飲み、サンミゲルが30ペソってのはいいな、などといい気分になって寝てしまう。これがよくなかった。下船しタクシーに乗り込むと、札入れがない。船の中ですられたか、落としたか。あちゃあ。あれには昨日三万円を両替したばかりのペソが入っていたのだ。
 リスク分散ということで、日本円とカード類を入れた財布、ペソの札入れ、ペソの小銭入れを持ち歩いていた。そのうちペソ札入れを失ってしまったのだ。リスク分散もいいが、注意力も分散する。ううむ、私のような人間には三つの貴重品を保管することは無理だなあ。
 まあ、日本円は残っているので、なんとかなる。カードを失わなかったのも不幸中の幸いだ。しかし、これでちょっと残金が厳しくなったぞ。ボホール島でダイビングをする金が残っているかどうか。いくらか貸してもらわねばならぬかもしれない。

ショー(別会計) 150ペソ
昼食のドリンク ビール60ペソ ジュース70ペソ
タクシー往復 110ペソ
2万円両替 7800ペソ
酒場 2500ペソ

「あなたのアンチ・マニラ度チェック」というのを作ってみました。

1.優柔不断と言われたことがある
2.人の親切は無にしてはならないと思う
3.腕力には自信がない
4.人は話せばわかりあえると思う
5.人を怒鳴ることができない
6.勧誘電話に釣られ、「お得な旅行カード」「上達の早い英会話教材」「現代画家による作品展」「人格を向上させるセミナー」などの事務所に出かけて行ったことがある
7.いちどに三個以上の貴重品を見張っていることができない
8.単独行動が好きだ
9.外国語は苦手
10.自己主張が少ない

 以上のチェックポイントのうち、ひとつでも当てはまる人はマニラには行くべきではありません。3個以上当てはまる人は、バンコクにも行くべきではありません。5個以上当てはまる人は、東京や大阪などの大都会に住むにも適していません。私は全部当てはまります。しくしく。


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