たまにはお仕事の話などを。

 今回は少し趣向を変えて、仕事の愚痴を聞いてください。

 私の会社はコンピュータシステムの運用、開発を行っています。
 この業種はおおまかに2つに分けられます。ひとつは、不特定多数向けのアプリケーションソフトを開発する会社。パソコンやオフコンを軽快に駆使してC言語やJAVAなど、時流の言語で開発することが多いようです。服装はラフ、勤務時間は午後から早朝、というのが一般でしょうか。ソフトハウス、というとだいたいこっちの方をイメージする人が多いと思います。

 もうひとつは私の会社のように、特定の企業向けにその会社のコンピュータシステムを請け負う会社。使うのはもっぱら汎用機。言語はFORTRANやCOBOLなど思いっきり時流に遅れたもの。服装はネクタイに背広。朝8時半に出社します。(若干嘘あり)要するに、サラリーマンです。

 そんな私の職場での会話。
「おい、この間開発したシステムの見積もりを作ってくれ」
「はい、いくらにしますか?」

 これ、本当はおかしい。見積もり、ってのはいくらになりそうかを調べるため、開発規模を概算して求めることなのだから。最初に請求金額が決まっているのなら、見積もりなんかする必要ありゃしない。
 でも、実状はこうなってしまっているのです。というのは、見積もりシステムが古すぎて役に立たないのです。

 見積もり作業は、開発費用の見積もりとコンピュータの定期処理費の見積もりに分かれます。

 開発費は、おおまかなプログラム本数を出してそれに1本あたりの金額をかけます。新規は何万円、変更は何万円というように。(他社ではステップ数で見積もるのが多いそうです。確かに、むちゃくちゃ長いプログラムも短いのも同じ金額、というのは不当ですが。まあ、見積もりだからそこまで細かいこと言わないように、ということで)

 定期処理費は、処理ステップごとに、処理データ量の予想とコンピュータ使用費を掛けて求めます。

 問題は、このプログラム1本あたりの開発費用、データ量あたりのコンピュータ使用費です。

 これ、私が入社した10年前から、1円たりとも変わっていないのです。

 いや、私が入社したとき渡された、見積もりマニュアル、もはや数回のコピーを経たような不鮮明な文書でした。おそらく、私が渡された10年前、すでに何年も経ったものでしょう。

 この十数年の間、社会は激変しました。
 物価は上昇しました。人件費ももちろん上昇しました。しかし、コンピュータは性能が格段に向上し、値段はかえって下がりました。

 そんなとき、十数年前の単価で見積もりを行うと・・・
 プログラム開発費は異様に安く、定期処理費は異様に高くなってしまうのです。
 どうにも使いものにならない金額が見積もられてしまうのです。

 こんな金額を使うくらいなら、最初から金額を決めて、それにあわせて数字を操作した方がまだましなのです。
 というわけで、現在我が社で行われている見積もりは、100%メイキングされた金額です。

 これはひどすぎる例ですが、これに限らず、ソフト会社は見積もりには苦労しているようです。
 だいたい、おおざっぱな数字しか出せないようです。

 1人の社員がが1ヶ月に開発できる量を1人月として、これに単価(1人月60万から100万くらいですか)をかけて請求するのが普通のようですが、これも変な話ですよね。
 優秀な社員なら早く終わるから安いし、無能なら遅いから高い。無能社員ほど値段が高くなる仕組みなのですから。(もっとも、優秀な社員は単価を高くして調整しますが)

 というわけで、私の会社でも、外注のソフト会社とのあいだで、
「じゃあ、このシステムは6人月ということで・・・」
「そりゃ高すぎる。4人月に負けてくれ」
などという会話が繰り広げられるのです。
 無形のものを数字に換算する作業は、難しいものです。


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