阪神歳時記(1998年度版)
俳諧ブームと言われて久しく、今ではすっかり若い人の間にも定着した観があります。今回は、阪神タイガースを主題にした情念迸る俳句で知られる虎玉宗匠に、阪神俳句の季語についてまとめていただきました。皆様もこの歳時記を活用して季節感あふれる俳句を詠んでください。
春の季語 花曇り郭李の球はへろへろと
今年こそ 開幕前の季語。
優勝や 開幕前でないと恥ずかしくて使えない季語。大阪弁ではない。
指を折り 開幕前の投手の勝ち星予想にかかる季語。なぜか合計が80勝以上になる。
勇ましき 開幕前の他球団のレベルを知らぬ新人選手を表現する季語。
水ぬるむ キャンプインの季語。
よき便り オープン戦で早くもベストメンバーを揃え、2軍選手ばかりの西武に勝った場合に使う言葉。
首位に立つ 開幕戦で勝利した場合に使う言葉。他の場合には使えない。もう10年使っていない。
咲く花や とりあえず1勝したとき、後先のことは考えず使う季語。
散る花や 開幕後半月以内に借金が5を越えた場合の季語
鎬合う 中継ぎ投手の酷使で5月まで5割ぎりぎりでいる場合の季語。
平塚や 「他の誰も四番を打つ資格が無い」という暗喩をこめた季語。
情けなし 「開幕前はスタメン構想に入ってなかった選手がリタイアしたからって、打てない言訳にするなんて、おまえらそれでも1億円プレイヤーか!」という罵倒をこめた季語。
リベラ立つ 中継ぎの酷使でやっとのことで逃げ込んだ勝ちゲームの季語。不甲斐ない先発投手への怒りもこめている。
遠山や たっぷり3年間登板したことのない、打者転向したはずの選手が1軍の緊迫した場面で登板しているのを見たときの驚きを表す季語。投手陣の情けなさと昔懐かしい選手への好感がない交ぜになった複雑な感情をこめている。
関川や 「おまえはそんなに捕手が嫌いやったんか」にかかる季語。
いつか来た 「最下位」にかかる季語。
今年もまた 「最下位」にかかる季語。
お決まりの 「最下位」にかかる季語。
定番や 「最下位」にかかる季語。
例年の 「最下位」にかかる季語。
定位置や 「最下位」にかかる季語。
哀れやな 「最下位」にかかる季語。
夏の季語 夕涼み豆に麦酒に負け景色
死のロード 夏の甲子園期間を表す言葉。昔は過酷なロード日程で負けが込むため、高校野球期間中をこう呼んで恐れた。今はホーム・ロードに関係なく負けるので「死の公式戦」と呼ばれている。死語の季語。
あてどなく 優勝は愚かAクラスへの望みも絶たれた状態の季語。
ぼろぼろの 薮の一発病、伊藤と葛西酷使でリタイア、新庄5三振、桧山打率急降下、パウエル腰痛、星野と今岡合計4エラー、和田リタイア、大豊不振に悩んで毛が抜ける、山田リード外角ばっかり、吉田監督中継ぎ使い過ぎ、福本コーチ口ばっかりで何もしない、などのいずれかの現象、もしくはこれらの現象が全て起こった場合に使用する季語。ひねりも何もない、俳諧にしては余りにストレートすぎる言葉だが、この時筆者はすでにひねるような余裕を失っている。
恥を知れ もはや俳句でも何でもない。筆者は激怒している。
腹を切れ ただの罵倒文句である。
馬鹿共め 他人に見せる文章ではない。
夏舞台 「阪神選手のいない淋しいオールスター」にかかる季語。
天の川 「阪神の借金なんて、この広大な宇宙に比べたらちっぽけなものじゃないか」という逃避行動を意味する季語。
パウエルや 「きょうは二軍に行ったやら」にかかる季語。
秋の季語 蔦の葉や椎を見上げて黄色かな
ふたけたや 「今年もいない」にかかる季語。
蔦枯れて すべての希望を失った阪神にかかる季語。
秋の夜の そんな阪神の行うお寒い試合にかかる季語。
アルプスの そんな試合の行われる甲子園のアルプススタンド。「がらがらの」が枕詞としてつく。
若き芽よ シーズン終盤にどうでもよくなって起用した2軍出身の若手選手が偶然活躍した場合の季語。若手選手はなぜか翌年も2軍にいることが多い。濱中と矢野はいつ一軍に上がるんだ。
シリーズや 日本シリーズ開催中に発表される監督解任にかかる季語。
ひつそりと 監督の去り際にかかる季語。
冬の季語 白星を欲しやと泣いて年の暮
去る人や 自由契約、引退、トレードで阪神を去ってゆく選手にかかる季語。トレードの場合は去るどころか、翌年は他球団で大活躍してスポーツ紙を賑わすことが多い。
来る人や 自由契約選手のテスト入団にかかる季語。1盛りいくらで入団する。その9割は翌年「去る人や」と言われる。
若武者の ドラフトで獲得する予定の大物新人にかかる季語。巨人を逆指名するか、くじで外れることが多い。
FAや フリーエージェントで獲得する予定の大物選手にかかる季語。巨人に取られることが多い。
頼もしき FAで偶然巨人に取られず獲得できた選手にかかる季語。頼もしいのは来年の開幕まで。
荒野立つ 新監督にかかる季語。「よくもまあこんな球団に来てくださって」という敬意をこめている。もっともこの敬意は翌年5月までしか続かない。
来年こそ 「こそ」という強調表現には特に意味はない。「良いお年を」程度の言葉。