詭弁猛虎学

その1 二分法(+論点のすりかえ)
 今、日本にはふたつの野球がある。頭を使う野球と、頭を使わない野球である。
 横浜の権藤監督、読売の長嶋監督はよく、「野球をするのは監督でなく選手である」と言う。これは一見正しそうに見えるが、その裏には恐るべき陰謀が隠されている。
 確かに選手が野球をするのだが、そのお膳立てをし、作戦を立てるのは監督である。その監督の役割を軽視するような意見が出るのはなぜか? 彼らはなぜ頭を使わない野球を推進しようとするのか?
 これは野球というスポーツを単純な形にし、できるだけ日本人の頭を使わせないようにしようとするフリーメイソンの陰謀なのだ。長嶋、権藤両監督はフリーメイソンのロッジから派遣され、日本野球を滅亡させようとする使者なのだ。監督が何もせず、選手だけが勝手に動く読売の野球がセ・リーグを征するとき、それは日本がフリーメイソンに支配されるときである。断じて防がねばならぬ。
 スパイ疑惑に乗じスコアラーの情報伝達も禁止しようとしたコミッショナーも、もちろんフリーメイソンの一員である。野村監督をパッシングする一部阪神ファンも、無論フリーメイソンリーである。

その2 相殺法
 確かに読売の選手層は厚い。厚すぎる。
 しかしこの厚い選手層にも付け入る隙はあるのだ。
 仁志は巧打だが自分勝手である。清水はミートがうまいが小技はできない。松井は確かに怖いがスケベである。清原は昔はいい選手だったが既に衰えている。高橋は凄い選手だがマスコミの評判が悪い。元木は曲者だが練習嫌いである。小田は肩が強いがキャッチングは下手である。ガルベスは剛球だが頭に血が上りやすい。桑田の投球術は巧いが借金が多い。入来はいい投手だが首脳陣の信頼がない。槇原は安定感があるが顔が駱駝である。これらの弱点を突いていけば必ず攻略できる。

その3 消去法
 さて、セリーグ各球団をひとわたり眺めてみよう。
 読売は確かに選手層は厚く、選手の実力はナンバー1である。しかし監督は長嶋、しかもヘッドコーチが原。これではとうてい優勝はおぼつかない。
 前年優勝の横浜は控え層が薄く、また中継ぎ投手が前年の酷使でへばっている。連覇は無理。
 中日は投手陣は確かにナンバー1である。しかし打撃陣が弱すぎる。ここも優勝には届く力がない。
 ヤクルトは投手陣、打撃陣共に層が薄い。
 広島は投手陣がひどすぎる。打撃陣もキャンプの猛練習ですでに疲れ切っている。
 となるとセリーグで優勝できそうなのは、残る阪神でしかあり得ない。

その4 部分否定は全否定
 横浜、読売、中日の優勝を予想する評論家も、その前提として、「主力選手の故障がなければ…」としている。しかるに見よ、横浜は五十嵐、読売は趙、中日は宣という主力が既に倒れている。つまり、この3球団優勝説はすでに根本から否定されているのだ。もはや阪神優勝以外の論理はあり得ない。 

その5 数字のマジック
  阪神は優勝できるかできないか、その2通りである。従って優勝の確率は2分の1。残り2分の1を残る5球団で分け合うとして、他の5球団の優勝確率は10分の1。つまり、阪神が優勝する確率は圧倒的に他球団より5倍も高いのである。

その6 足して2で割る裁定
  楽観的な予想だと藪18勝、川尻15勝、メイ12勝、中込13勝、湯舟10勝、金沢10勝、他20勝と阪神の勝ち星予測を立てている。いっぽう、辛口の評論家によると藪9勝、川尻7勝、メイ6勝、中込5勝、その他15勝と言う人もいる。ここは中庸をとって、藪14勝、川尻11勝、メイ9勝、中込9勝、湯舟6勝、金沢6勝、他18勝とするのが妥当だろう。それでも73勝。優勝に充分手の届く数字である。

その5 論点のすり替え
 確かに読売は強い。選手層は厚い。しかしその選手はどうやって連れてきたものか。
 広沢、清原、石井、河野は有り余る金に飽かせてFAの選手をかき集めて連れてきた選手である。
 上原、二岡、小野は他球団への入団が十中八九決まっていた選手を札束攻勢で寝返らせ、逆指名を取り付けて無理矢理連れてきた選手である。
 このように金に飽かせて作った球団に優勝させては野球のためにならぬ。否、優勝させては野球が滅びる。読売には断じて優勝させてはならぬ。読売には優勝する資格がない!

その6 主張の言い換え
 清原は自分が内角に弱いものだから、内角を執拗に攻める藪に怒り、「顔いがめたる」などと暴言を吐いたのだ。自分の欠点を棚に上げて他人を責めるゲス野郎である。読売の選手はみんなこのようなゲス野郎ばかりである。こんなゲス野郎の球団に優勝させるわけには断じていかぬ!

その7 超論理法

気に入らぬ球もあろうに佐々木かな
                 虎玉


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