タイガース・ジョークよもう一度

 新聞記者のひとりが岡田監督に言った。
「あなたをひと目見ることができるなら、百万円出してもいいって人を知ってますよ」
「ホンマかいな。またあんたのお世辞ちゃうんかいな」
「いや、誓って本当の話です。その人は生まれつき目が見えないんですよ」


 ある日突然、ライブドアの堀江社長が阪神の手塚オーナーを訪問した。
「実は阪神タイガースを買いたいのです。百億円までなら払います」
「なんだって」手塚オーナーは驚いた。「阪神は人気球団ですよ。それをあなた、監督コーチ選手ぜんぶひっくるめて、たった百億円で買おうというんですか」
 堀江社長は腕組みをして考えこんだ。
「そうですか、ううむ……よし、岡田監督も入れてだったら、五十億円で手を打ちましょう」


 岡田監督は手塚オーナーに直訴した。
「ぜひともシーツを獲得してほしいんや」
 手塚オーナーは答えた。
「しかし君は、アリアスをなんだかんだとけなして干したあげくクビにしたり、わけのわからない起用でリガンを潰したりしただろう。何億もかけて外国人選手を獲得したはいいが、さて使えません使いませんでは、スカウトも困るんだよ。取ったからにはちゃんと長所を活かして使うという、保証がこちらとしても欲しいんだよ」
 岡田監督はかっとなって叫んだ。
「保証やて?! 信頼できる男の約束だけじゃ、アカンっていうんでっか」
 手塚オーナーは落ちついて答えた。
「むろん、それで充分だ。その男を連れてきなさい」


 岡田監督一年目は、中継ぎや抑えの投手もたいへんだった。なにしろ監督が準備のまだできていない投手の名前をいきなり審判に告げたりするので、準備不足でボコボコに打ち込まれることがよくあった。
 しかし二年目は、投手陣も岡田対策を万全に練ったので、去年の失敗は繰り返さない。
 きょうも球場では、ブルペンで左右ふたりの投手が入念に準備している。
 そのうち岡田監督が審判に継投を告げた。
「ピッチャー、福原に代えて安藤」
 ブルペンで投げこんでいた右投手が言った。
「おい、安藤だとよ。俺の出番だ……ちょっと、そこの16番のユニフォームをよこせ」


 阪神快勝。試合後のヒーローインタビューで。
 アナ「藤本選手、7回のみごとな逆転打のシーン、監督からのサインは何でしたか?」
 藤本「監督からのサイン? うーん、よくわからなかったけど、僕たちがやったのはヒットエンドランでしたよ」


 アリアスはなぜクビになったのか?
 「オカダの考え」を理解できなかったからである。
 スペンサーはなぜ阪神に入団したのか?
 「オカダの考え」を知らなかったからである。


 キンケードとスペンサーはどこが違うか?
 キンケードには死球がある。
 スペンサーには四球がある。


 では、キンケードとスペンサーの共通点は?
 打てないことは共通だが、それに岡田監督だけは気づいていない。


 久万元オーナーと手塚新オーナーは、どこが違うか?
 久万オーナーは岡田監督を、出来の悪い息子を見るような目で見ていた。
 手塚オーナーは岡田監督を、出来の悪い人間を見るような目で見ている。


 岡田監督が養護学校を慰問に訪れた。プレゼントを渡したり、生徒と仲良く遊んだりして、みんな楽しい時をすごした。次の日の新聞に、その記事が掲載された。写真入りで。
 その写真には、次のような説明文がついていた。
「養護学校の生徒たちと岡田監督(写真の右から2番目)」


 その翌日から岡田監督が試合に来なくなった。チームは勝ちだしたが、心配した球団職員が、最後に訪問した養護学校を訪れた。
「すいません、ここにうちの岡田が来たっきり、行方不明になってしまったんですが」
 学校の先生がすまなそうに答えた。
「申し訳ありません。ちょっと目を離しているあいだに、どれが岡田監督なのか、誰にもわからなくなってしまったんですよ」
「そんな無責任な! 能力テストでもすればすぐわかるでしょうに!」
「そのテストをやってみたんですが、ますますわからなくなってしまったんですよ……」


 セリーグの6監督がいっせいに死んで地獄に堕ちた。地獄ではサタンが6人を迎えた。
「おまえたちは地獄で責め苦にあうことになる。しかし、助かるチャンスがひとつだけある。なんでもいい、私のチームに野球で勝てば、生き返らせてやろう」
 落合監督は機動力で勝負をかけたが、強肩のベヒーモス捕手にすべて刺されて惨敗した。若松監督は沢村や大下など、死んだベテラン選手を総動員したが、呪文ひとつで灰になってしまった。堀内監督はベゼルブブやアバドンを引き抜こうとしたが、逆に舌を引き抜かれてしまった。山本監督はサンタクロースを投手コーチに招聘しようとしたが、サタンクロースがやってきて選手がみんな怪我をしてしまった。牛島監督は抗議に出て凄んだが、サタンのひと睨みで石になってしまった。
 最後に岡田監督が登場。
「ウチはまだ勝負できるチームやない。もう少し待ってくれ。鳥谷が成長すれば、本当のタイガースになるんや」
 サタンはその言葉を聞いて待った。待っているうちに老衰で死に、岡田タイガースは不戦勝となった。


 医者が失敗をしたら、墓土がその失敗を隠してくれる。
 警官が失敗したら、同僚や署長がその失敗を隠してくれる。
 監督が失敗したら、選手がその失敗を隠してくれる。
 独身者が失敗したら、死ぬまでその失敗と暮らさなければならない。
 オーナーが失敗したら、ファンと選手はその失敗の采配に耐えなければならない。


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