恐怖新聞

 あなたは、死んだ人の霊魂……というものを信じますか?
 こんな体験をしたことはありませんか?
 だれもいないはずの場所で……なにかがそこにいるような「気配」を感じて、ゾッとしたことは?
 夢で見たことがじっさいに起きた……つまり、「正夢」を見たことは?
 いったことのない場所を訪れて、なぜか前にも来たことがあるような気がしてならない……いわゆる、「デジャブ」現象は?
 こんなことが起こりそうだ……そう、なんとなく思っていたら、その通りになった、……「予知」をしたことは?
 ちょっとでもそんな気がする人は、これからのぼくの話を聞いてください。

 ぼくはつい最近まで、スポーツ好きな、ただの中学生でした。
 ところがある夜、そんなぼくの枕元に、ふしぎな新聞が配達されたのです。
 真夜中の十二時、ヒタヒタヒタ……というぶきみな足音と共に、どこからかやってきた訪問者が、ぼくに新聞を投げていったのです。
 ああ、なんということでしょうか。
 それこそ伝説の新聞、未来のできごとを予言する新聞、一回読むごとに百日寿命が縮まるという、恐怖の新聞だったのです。

 ことん。
 ああ、今夜も配達されてしまいました。
 いっしょに見てみませんか?
 ただし、百日寿命が縮まりますけどね。
 ほら……

お前ら日大三”イカ”じゃ
今岡三タコ桧山四タコ広沢三タコ
ああ二十五イニング連続0行進
解説の福本あきれ「タコヤキですな」
井川六回零封も援護なし
ノムさん俯くばかり「これが実力や」
赤星も失速……出塁できない走れない
藤田太陽は鳴尾浜でブラックホール

 そう、ぼくに配達されるのは、明日のプロ野球の結果を報じ、読めば百日寿命が縮むという、「恐怖スポーツ新聞」だったのです。

 怖ろしいのはそれだけではありません。
 この新聞、実は先週のコピー&ペーストなのです。
 新聞配達人、サボってやがって、毎週同じ新聞をよこすのです。
 これでも寿命が百日縮むのかと思うと、なにか理不尽な気がします。
 明日の新聞もわかってます。「ハンセル見殺し、打線に繋がりなし、中継ぎ川尻哀れ二発KO」なんです。

 本当に怖ろしいこと……それは恐怖スポーツ新聞ではなく、毎週同じ事をやって負けている球団……そちらかもしれません。
 いや、あの球団、去年も同じようなことをしていませんでしたか?
 いえ、もう数十年間、同じ事を繰り返している気がしている気がしてなりません。
 ひょっとすると……これがデジャブ現象なのでしょうか?
 そうだとしたら、ああ、なんと怖ろしいことでしょう。

 先日整理していたら見つけた、週刊ベースボール昭和59年10月8日号に興味深い記事を見つけたのでご報告します。
「大山鳴動してネズミも出ない?(予想通りというべきか……)阪神改造(悪?)計画の”竜頭蛇尾”」という記事です。
「やれ岡田が出される、真弓で商売を、と阪神の周辺が騒がしいが、実際のところ、阪神にはどんな改造案があるのだろうか? たしかに、あるにはある。が、それは現実性と実現性に乏しいもので、結局、カケ声だけに終わりそうな気配。要するに、熱意が欠けているのだ。その理由をたどっていくと、いつもながらの”阪神の体質”にいき着いてしまうのだが……」
「小津、安藤体制にメスは入らず
 今期、ペナントレース終了を待たずに、阪神は安藤留任を発表した。比較的冷静に阪神ファンは安藤留任を受け入れた。その真意は『しゃあないやろ。他にだれもおらんし、だれがやっても優勝でけんのやし』。実はこの思いは、安藤留任を決定した上層部も同じ。『五年契約だから』表向きの留任理由も、それでしかなかった。一年目三位、二年目四位、そして三年目の今期が四位以下のBクラス決定。だれが見ても評価できる結果は残っていない」
「コーチ専任になった藤田に退団説
 肝心の安藤体制は、コーチ陣の内から崩れ始めている。島野コーチは胃潰瘍の悪化のため退団を申し入れた。安藤監督にとっては片腕をもがれた気持ちだろう。さらに藤田平の処遇だ。藤田は選手兼任という形で今期内野守備コーチに就任した。しかし藤田の選手としての使われ方は、決して戦力としてではなく、単なる記録への試合数稼ぎでしかなかった。代走、守備固めなどでの出場に藤田は納得いかなかった。『もっといい場面で使ってほしかった』と、監督采配に注文を付けた。首脳陣の一員でありながら首脳陣批判をやってのけた藤田には、今期限りで退団説も出ている」
「真弓で左の10勝投手を狙う”甘さ”
 タイプ的に見て、今期以上に勝ち星を計算できる投手はひとりもいない。投手陣の大改造はトレードしかない。小津球団社長は『大きなものもある』とブチ上げた。だが現実は、どうやら不可能といえる。10勝投手、まして左となれば、どの球団も簡単には手放せない。そのうえ、阪神には大型トレードに応じるだけの選手はいない。クリンナップを打つ佐野でさえ『商売にならんよ』と他球団から敬遠されている。そこで焦点になるのが真弓である。パンチ力に加え人気面でも魅力のある選手。しかしこれとて、”10勝できる左投手”などという虫のいい話は、まずない」
「『契約した以上、その期間監督業をやり遂げるのは当然のこと』と安藤監督はあくまで強気。しかしその自信の裏付けとなる未来への展望は、今のところ何も拓けていないのである」
「『いいじゃないか、オレは別に強いから阪神を応援しているわけじゃないんだ。ただ阪神が好きなだけなんだ』……実は阪神の甘い体質は、そのファンが作り出しているものかもしれない。勝つことと、観客動員数――つまり球団が儲かることとは、阪神の場合、何の関係もないのである」


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