信州へスキーにこられる中年世代にとって「八方尾根」は、ちょっとしたスキーの聖地めい た雰囲気がある。近く(白馬)に来たなら必ず参拝しないといけないといったそんな感じである。
八方サーキットと勝手に名付けているルートをめぐってみよう。
まずゴンドラを下りたらリーゼンスラロームを1本、リーゼンクワッドから兎平クワッドを乗り継ぎ、条件がよければ(=無風)リーゼングラートまで行き、一気にパノラマゲレンデの右端を突っ切り、ちょっと間がたがたのコブを我慢してセントラルコースの急斜面を走破、白樺からゴンドラに再度乗る。
またもやパノラマを、今度はテラスパノラマの脇を抜けてオリンピックコースの急斜面から咲花まで降りる。
咲花クワッドとスカイラインの長くて遅いペアリフトを乗り継いで、コブが好きな方はついでに黒菱第1ペアで上がって黒菱を滑り落ちて(私は決してしない)スカイライン・北尾根コース滑り、もう一度第2ペア、短い黒菱第2に乗って兎平をお好きな方はぴょんぴょん跳び(私は一番右の圧雪コースを行く)、兎平テラスでゴール。
ちゃんと圧雪整備されて視界がよければ、1周80〜90分。
根性と技量がある方は引き続いて2周目のスタートとなる。
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リーゼンを降りるところからスタート | 兎平を上がって |
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パノラマ右端からセントラルコースへ | 白樺ゲレンデまで急斜面を走破 |
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オリンピック滑降コースを下る | 咲花クワッドからスカイラインまではちょっとうざい |
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スカイラインコースを降りて遅くて寒いペリフト再び | 左の圧雪コースでも右のコブでもお好きな兎平を |
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![]() ゴールは「兎平テラス」 休憩してもよし、すぐに2周目スタートもよし。 |
途中霧がかかって視界が悪く、おまけにスキー場の手抜き(!)により圧雪されてなかった9日は2周。ちゃんと整備され晴れていた10日は3周できた。
しかし雪が止んで日曜日だというのに圧雪しないというのは、スキー場の安全管理上も、快適性の確保の責任上も断じて許せない。八方尾根しっかりしろよ。カナダでもニュージーランドでも毎日圧雪バーンはちゃんと整備いているのだから、義務だよ義務、航空機の整備、新幹線のお掃除と同じ。
さて、霧に閉ざされた八方尾根の上部がどうなっているか。本当は、そここそが八方が聖地たるゆえんなのだ。
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ウサギ平。またはピョンピョン平。ゴンドラを降りた上に広がっていて、長さは1キロほど。 かつては全面急なこぶ斜面で、ここで泣いた初心者は多いはず。しかし今では左半分は平らに整備されている。ウサギは足跡すら見たことがないが、こぶでピョーンと跳ばされるのでこんな名前になったのだろう。 写真の手前側からリーゼンスラロームコースが続く。 見てのとおり、遮るもののない裸の斜面なので、いったん吹雪くと、寒さは半端ではない。そんなときは、ゴンドラ降り場に隣接する「ウサギ平109」というレストセンターへ逃げ込んで、ビール酔っ払いと化すことになる。 ここの右手ゴンドラ降り場の向こうから「パノラマゲレンデ」がある。ここはたいてい圧雪が利いていて、長くはないが練習にはもってこい。 そのまま「咲花」「チャンピオン」「白樺」の一番下へ続いているので体力に自信のある方は一気降り可能。 |
黒菱。最近は「ブラックダイヤモンド」なんてハイカラに呼ばれているらしい。ウサギ平に架かるリフトを降りて右に回るとみえるボウル状の大斜面がそれ。 ウサギ平と並ぶハードなこぶ斜面。 整地された斜面を飛ばすのが好きな亭主は、たいてい丁重にご辞退申し上げている。 ここは、雪の消えた夏に来ると、あっと驚く様相になっている。斜面一面ハイ松にびっしり覆われているのである。歩くことすらできない。雪があるからこそ安心して(?)降りられるのである。実にスキーとは偉大な発明品であることを実感する。 ウサギ平と同じくここも寒い。逃げ場所は、写真手前右に隠れている「キャフェテリア黒びし」で、アルコールか糖分を摂取することになる。 |
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黒菱を降りて左へ曲がり、あるいはウサギ平の短い方のリフトを降りて黒菱の一番下(ここは整地)を降りたところにあるボウル状に開けた斜面が、「北尾根」ゲレンデ。文字通り北向き斜面なので、ここだけはリーゼンコースなどが「春雪」でも、しっかりと溶けずに締まっている。 むしろアイスバーンであることが多い。一番低い沢の底は圧雪が利いて滑りやすいが、そこへ続く写真右側の斜面は全くの圧雪なし。降ったばかりのパウダー深雪の場合は気持ちよいのだが、人が多く滑った後の荒れた状態や、変形のこぶというか不規則なでこぼこになっているとお断りしたいところである。 樹木の間を通らなければならないこともあり、ボードもスキーも相当のテクニックが必要なところなのでそのあたりは自分の「足前」とご相談の上選択を。 なお「宿舎が「和田野」「咲花(さっか)」の場合はここが帰り道。逆に「白樺=ゴンドラ」「名木山」方向に宿がある人は、転び師の一番下にかかるリフトの終了時間に注意。こいつが止まると、帰るのはとてつもなく困難で、スキーを担いで300メートル斜面を登ることになる。 リフト上から撮った写真だが、このリフトは遅くて、風のある日は限りなく寒いことも頭に入れておくように。 |
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リーゼングラート。ウサギ平、黒菱のさらに上にある、八方尾根スキー場の最上部。 長野オリンピック男子滑降のスタート位置を、ここにするかしないかで大もめしたところ(結局真ん中に見える建物がスタート地点)。 30度くらいの急斜面で一面雪ばかり。ちょっとでも風があると、まず来る気がしないほど寒い。 しかし、運よく、このように穏やかな晴天で、この日の半分くらいの人でならば、ここからリーゼンスラロームコースを一気降り(4キロぐらいある)すると、心の底から「八方に来てよかった」と思える。 勝負は脚力より、無駄にスピードを削らないことである。 |
![]() スキー場としての八方尾根のてっぺん。ケルンと呼ばれる石積みがある。「スキー場としての」と断ったのは、さらにスキーを担いで登ることができるから。一応滑走禁止エリアになっているが、晴れたこの日も担いで登る人の列があった。 なお登れるのは、写真のずっと左に隠れているルート。正面のケルンの先は崖である。 登るのはもっぱらリフトと決めている亭主には、無縁の話。 このように晴れて風のない日は、この反対側も絶景なのでぜひお越しを。 なお、ここも、夏に来ると同じところとは思えない。大きな岩が積み重なった、あっと驚く「山岳」である。 |
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![]() 白馬3山、左から白馬槍ヶ岳、杓子岳、白馬(しろうま)岳 雲1つ無い濃い藍色の晴天は滅多にないのでとくとご覧を。 まあ、白馬「猿倉」登山口から歩いて行くという奇特な人は、くれぐれも雪崩と滑落に気をつけて。 山は遠くから眺めて美しいので、亭主のようなリフトとゴンドラが好きという中高年スキーヤーは楽してこのような絶景を見ることができる。一体どこに苦労する必要があろうか? |
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外観 | 店内 | トムヤムクム・ラーメン |
ゲレンデ(名木山ゲレンデ)の下、タイ料理(カレーとトムヤムクンラーメン)の店「万国屋」である。
ここは、まことに美味しい。辛くて香りの強いタイ・カレーペーストもあまり手加減せずに使っている。
もっとも「目玉焼きカレー」という普通のカレーも出している、程よいいいかげんさもある。
店内は20人ほどしか入れない。外にもテーブルがあるので、天気のよい日はそこもよい、少々寒くても、辛さで汗が出ること請け合いである。
下にあるとおり、亭主のお気に入りの一つであるバレーホテルが閉めていたので、大いに心配したが、2008年1月、一応繁盛していたのでほっとした。いつものグリーンカレーはやめて「トムヤムクム・ラーメン」にしてみた。普段は汁は残すのが亭主流が、余さず完食であった、酸っぱ辛くてパクチーが利いて、うまさこの上なし。
店の雰囲気の怪しさ、適度な美味さという条件を満たしているので、スキー場B級グルメ1号店に認定しようと思っている。
なお第2号店は、同じく白馬にある五竜遠見スキー場にある、とてつもなく怪しい店にしたのでそちらを見ること。
雪が降った翌日、きれいに整地されたリーゼンスラロームで、思いっきり楽しんだ後の、兎平の上に、2005シーズン新しくオープンしたというレストランで、リッチな気分で昼飯を食うというのはいかがかな。
リフト降り場にくっついた、昨シーズンまでは、言い方は悪いが「ちんけな」食堂があったところだが、しゃれた赤い建物にリフォームされている。
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入り口からすぐは、普通のカフェ | 一番奥、カフェから隔絶されたところ。ちょっとしたVIPルームの雰囲気 | 落ち着いた雰囲気と調度。スキーブーツを脱いでくつろげる |
前菜と、パスタまたはスープ、メイン、いずれも数種類の中からチョイスできる。最後は、デザートまたはチーズというランチコース、3700円也。
このほかに、前菜とメインのコースと、パスタコースが用意されているが、アラカルトでも食える。
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前菜、大鱒のマリネ 蟹包み。赤ワインビネガーとオリーブ油のソース。これは美味しい。 | 前菜、きのこ入りキッシュ 生マッシュルームサラダ添え トマトソース。 | メイン、ブイヤベース。残念なことに、フュメドポアソンが薄く、トマトが抜けてオレンジ色のはずが黄色だった。 |
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![]() 「パスタランチ」の前菜 鴨の燻製と信州キノコサラダ ![]() トマトソース、ズワイガニのせ 葉っぱはルッコラ 信州地ビールとともに |
←窓際からの景色。このほか妙高山から麓の白馬の町並みまで見下ろせる席もある。
ワインも充実しているが、ハーフがなくフルボトルとグラスのみ。
パスタは、バジルソースがお勧め。フレッシュなジェノベーゼとアルデンテに茹でられた細めスパゲティが上手に合わさっている。
最近はここの食事だけを楽しみにくる中高年(主におばさま)もいて、平服でリフトに乗っているスキー場としては異様な光景が見られる(リフト券付きのランチセットがある)。
晴れた日には目の前に「黒菱」のコブ斜面に果敢にトライして「地雷を踏む」ガッツあふれるモーグラー(こぶ滑り=モーグルを好む、整地派の亭主からは変人に分類される)のチャレンジを観ることができる。
なお、心地よさに惹かれて飲み食いが過ぎると、こぶだらけの「ウサギ平」で、胃の中のワインとランチを雪面にぶちまけることになりかねないので、そこは大人の節度が必要である。
午後の休憩は、リーゼンコースから白樺ゲレンデへの連絡路の「底」にあるこのお店。
白馬バレーホテル。もちろんお泊りできるれっきとしたお宿の1階。とにかく心地よい。場所も、雰囲気も、大きなシフォンケーキも。むかし、店の前に、なぜか踏み切りの警報機が据えてあり、「集合は、あの踏切のところな」と言っていたものだが、今は玄関にしまわれている。
スキー場の飯もお茶も、下のほうがよろしいというのだ亭主の定説である。