〜 「浩之とあかり」番外編 〜
私と浩之ちゃんと
.....チリチリーン...
また鳴った。これで何回目だろう。
今日は朝から全くと言っていい程風が無かった。
僅かに霞を伴ってはいるものの、空はどこまでも青く晴れ渡り、水平線に近い所では巨大な入道雲がニョキニョキとその勇姿を見せている。
気温は相変わらずだ。今年の夏はいつにも増して暑い。
少し、風が出てきたのかしら?
軒先の風鈴を見ると、僅かに短冊が揺れていた。
夕方には雨が降るかもしれないと、朝の天気予報では告げていた。だとすると、これはその兆しなのかもしれない。
....ゥフォーン...
静かだったエアコンの音がまた高くなる。
日の光は空の一番高い所から徐々に傾きつつあるけれど、それまで貯めこんだ暑さを一気に解き放ち、人を冷気のある部屋から出られなくしているのかもしれない。
聞こえるのは遠くで鳴くセミの声と車の通る音、それに自転車のキコキコする音がたまに....
晴れ渡った夏の昼間って、昔からこんなに静かだったかなあ...
幼少の頃の記憶。この時間は毎日の様に、暑さを吹き飛ばす程の力強い喚声をあげて遊ぶ子供達の声で埋めつくされていたと思う。
もちろん私も、浩之ちゃんや雅史ちゃんに連れられて毎日の様に外に遊びに出た一人だったけど、その頃あまり身体が丈夫じゃなかった私はよく夏風邪をひいて、お部屋の中でつまらない時間を過ごす事も多かった。
お布団の中、聞こえてくるのは元気なセミの鳴き声と、いつも一緒に遊んでいる子供たちの声ばかり。
天井の木目をじっと見つめながら、あ、あの形は犬に似てるとかクロワッサンに似てるとか、そんな事を考えるしか無かったつまらない夏の風邪休み....
でも、夕方には嬉しい夏休みでもあった。
『調子はどうだー?早く直してまた遊ぼうぜ』
手にアイスクリームの入ったビニール袋を下げて、野球帽とすっかり日焼けした脚が眩しい半ズボン姿の男の子が私の目の前に立った時、ああ、私はこの夏に置き去りにされてはいなかったんだと涙が出る程嬉しかった。
すっかりクーラーが効いて涼しい部屋の中、私が寝ている傍らにストンと腰を降ろすと、夏の香りを伴った手がスッと伸びてきて、私の額の上に優しく置かれる。
少し汗ばんだ手の感触と、そうした夏の香りがとても心地良かった。
『熱は無いみたいだけどなぁ。オレの手の方が熱いからよく分からないや』
そう言って私を見つめる真っ直ぐな瞳はキラキラしていて、自分がこうして風邪をひいているのが恥ずかしい位だった。
私は顔が赤くなっていくのを気付かれない様、タオルケットを目元まで深く引き寄せると、「うん」と精一杯の言葉を返した。
.....浩之ちゃんの手、大きくて暖かかったなあ.....
そんな浩之ちゃんの手が目の前にフワフワと浮かんでくる。それは私の顔の前で左右にフラフラ揺れると...揺れると...
揺れている?...何で?
「あ!」
思わず声を上げてしまった。
ため息混じりに「またか」という声が聞こえてくる。
「なーにやってんだお前は。またいつものクセでボケーっとしてんのかぁ?」
広げた手を私の目の前で振りながら、浩之ちゃんは呆れた様に言った。
いけない、私ったらまたボーっとしちゃったんだ。
「ご、ごめんなさい」
私がそう言うと、浩之ちゃんは「しょーがねーなー」と言いながら呆れた様に私を見つめていた。慌てて目の前のテスト用紙に向き直ると、私はシャープペンを構え直した。そしてテストに集中する。
そんな私の様子に、浩之ちゃんの視線がフッと途切れたのが分かった。そして再びカッカッと規則正しい音が聞こえてくる。
チラリと見ると、ガラステーブルを挟んだ向かい側で真剣な表情をしながら問題に取り組んでいる浩之ちゃんの姿が目に入った。応接間にある大きめのガラステーブルなので、二人でテスト用紙を広げていても狭さは感じない。
そんな姿に安心して、再び私はテスト用紙に目を戻した。ええと、どこまでやったんだっけ....
ふう、と思わずため息が漏れる。
「あと三十分だ、頑張ろうぜ」
「う、うん」
再びそちらに目を向ける。
黒地に派手なプリント入りのTシャツを着た浩之ちゃんの姿は相変わらずだった。短く切ったジーンズから突き出る日焼けした脚がテーブルのガラス越しに覗いている。若干細めで、それでいながら鋼の様にガッシリとした男性の脚だ。
やっぱり、子供の頃とは全然違うんだなぁ.....
その考えに、思わず自分の顔が赤くなるのが分かる。
浩之ちゃんに気取られぬ様、今度こそ私は手元の問題用紙に集中することにした。
◇ ◇ ◇
「...マル、マル、マル、ペケ、マルっと。ふう、結構良さそうじゃねえか。そっちはどうだ?」
「えと、コレとコレとコレの分を点数から引くから....88点。浩之ちゃん凄い!今回は私、負けたかも」
「お!もしかしたら久々にお前の連勝ストップか?一寸待ってろよ計算計算.....ん〜っと、91点?くわー、なんだまたオレの負けかよぉ!」
ガッカリと諦めが混じった表情を見せながら、浩之ちゃんはそう言った。
「やった〜また私の勝ち〜。これで六連勝〜」
私は思わずガッツポーズをする。
「やれやれ、途中でボ〜っとしてても結局お前が勝っちまうんだものな。全く大したもんだぜ」
そのままドテッと後ろに倒れながら、浩之ちゃんはそんな言葉を漏らした。
私はクスクスと笑いながら言った。
「そんな事無いよ。だって浩之ちゃん最近メキメキと実力付けてきてるじゃない。一寸前だったら70点位でも『これ、本当にオレの点数かよ?』ってビックリしていたでしょ?でも、今ではそれが当たり前になっているんだもの」
「それはお前も同じじゃねえか。しかもオレより点数は上なんだぜ?さっきみたいにたまにボケッとする事があっても、やる時はキッチリやるものな。オレにはマネ出来ねえぜ」
「うふふふ、分かってないのね」
私のその言葉に浩之ちゃんは少しだけ首を起こしてこちらを見た。
「何がだよ?」
「水鳥はその姿は優雅でも、水面下では必死に水掻きしてるって事」
「水鳥ってお前の事か?」
「うん」
「...あほくさ」
ドテッと再び浩之ちゃんは寝転ぶと。両手両足を大の字に伸ばしながら大あくびをした。
それを真似するかの様に、傍らの座布団で横に転がっていた子猫のアジちゃんも眠そうなあくびをする。
私はテーブルに両ひじを付き、交差させた指を枕に顎の部分を乗せながら、浩之ちゃんとアジちゃんのそんな様子を見つめていた。
ミーンミーンミーンミーン...
近くの公園で鳴くセミの声が再び耳に入ってくる。人の声は聞こえない。エアコンの音が無ければまるで避暑地に来ている気分かもしれない、浩之ちゃんと二人っきりの夏の昼下がり。
受験生に夏は無い。それが本当だなと思ったのは、近くの予備校で募集していた現役受験生を対象とした夏期教室に初めて参加した時だった。
この提案は私の方からだった。受験生という事もあって、夏休みの殆どの期間を勉強に費やさなければならないと覚悟はしていたのだけど、どうせするなら自宅に籠りっきりになるよりは、こうした教室に通う方が効率的かもしれないと考えていたから。それに、浩之ちゃんが参加してくれるなら、こうした夏休みもきっと楽しいに違いない。そうも思っていた。
初めは渋っていた浩之ちゃんだったけど、教室は午前中だけというのを聞いて「なら参加してもいいか」と応じてくれた。
そしてその初日。
狭い教室にスシ詰め状態になりながらも、クーラーが程よく効いたその中で、教壇に立った予備校の教師は開口一番、こう言った。
「君たち!この夏、遊べると思うなよ!」
その言葉が気合いを入れる為だけに発せられたものでは無いと分かったのは、この日の授業終了一時間前に行われた総合テストの内容を見た時だった。国語1,2、数学1,2、英語1,2、日本史B、世界史Bなどの各問題が小テスト以下の量で程よくまとまったその総合問題は、一時間でこなすにはあまりに難易度が高かった。私は持てる力を振り絞って解答を埋めていったけれど、それでも半分も出来なかったに違いない。 ようやくそこから解放されての帰宅途中「何かスゲー難しい問題だったなあ。多分全滅に近いぜありゃ」と浩之ちゃんは気軽に言っていた。私も気持ちは同じだった。それでも「次回は頑張ろう」と、お互い軽い気持ちで考えていた。
そのテストの意味する所が分かったのは、翌日になってからだった。
翌朝、浩之ちゃんと共に向かった予備校の入り口近くの掲示板に張り出されたクラス分け一覧を見た時、私は愕然とした。
そこには昨日のテスト結果順に並んだ参加者全員の氏名と共に、それを大きく五つのブロックに分けて頭からA〜Eまでの五教室にそれぞれ行く様通達されていた。
私はまん中辺りでC。浩之ちゃんは後ろの方でDの教室だった。
「....浩之ちゃんとは、教室が違うんだ....」
ガックリと肩の力が落ちるのが自分でも分かった。
夏休み期間中、浩之ちゃんとは隣同士の席で頑張れると思っていたのに...
「....あかり、すまねえ」
私の横で同じく見ていた浩之ちゃんがそんな言葉を漏らす。
私はそんな浩之ちゃんの顔が見られなかった。別に浩之ちゃんのせいでは無いのは分かっていた。だけど....
浩之ちゃんに申し訳無いと思いつつ、私は黙ってうつむくしか無かった。
ポンッ
そんな私の頭に浩之ちゃんの大きな手が置かれる。それでも私は顔を上げられない。
「教室割りだけど、一週間単位で見直されるみたいだな。なら今週オレが頑張れば一緒の教室になれるじゃねえか」
「え!?」
私は思わず浩之ちゃんの顔を見た。
ニコッと笑う浩之ちゃんは、掲示板の方を顔で促していた。私はそちらに目を向ける。
そして、掲示板の最後の方に書かれている内容を何度も何度も読み返した。
「....本当だ。じゃ、じゃあ来週にはきっと一緒の...」
「ああ、今週の土曜にはまた同じ様なテストを行うって書いてあるしな。その時に頑張って二人一緒のクラスになろうぜ」
「うん!絶対だよ。絶対ね!」
私は思わず頷いていた。
良かった、ずっと分かれ分かれじゃないんだ。それに、浩之ちゃんが「頑張ろうぜ」って言ってくれている。
それだけで私はこの数日間、一人ぽっちの教室でも頑張れる気がしていた。
◇ ◇ ◇
「それにしても、あそこで出される問題には意地が悪いのが多いよな。引っかけもいい所だぜ」
台所からアイスコーヒーを二つ携えて戻ってきた私は、相変わらず寝転んでいる浩之ちゃんからそう言われてクスッっと笑った。実際、その通りだと思った。でも、そのおかげでそうした問題には簡単に引っかからなくなったもの事実だった。
四回目のクラス分け試験を明日に控えた今日の自主テスト結果では、お互いにまずまずの点数が取れた事で、私は少しホッとしていた。
これなら今回も浩之ちゃんと一緒のBクラスになれそうだ。教室内での席順は決まっていないので、私と浩之ちゃんはいつも隣同士だった。
それにしても浩之ちゃんは凄い。こうと決めたら淡淡としながらもやる事をキチンとこなすし、毎日の努力も怠らない。そして、それを無駄にする事無く実力として確実に自分の中に積み重ねていってる。
そうした浩之ちゃんの姿を見るのが私は大好きだった。その気になれば、私なんかあっという間に追い越してしまうに違い無い。
事実、DクラスからBクラスまで上がった人は、浩之ちゃんを加えても数える位しか居なかった。その意味で、私の方が今は浩之ちゃんに追いつくべく頑張っている状態なのだと思う。
それにしても、私がこんなに勉強に打ち込んでいるなんて今でも信じられない。浩之ちゃんと一緒じゃなければ、ここまでの自分は想像も出来なかったと思う。
浩之ちゃんはどう思っているんだろう?
浩之ちゃんがこんなに頑張ってきたのは自分の為だから?それとも....
カラン
グラスの中の氷が軽い音を立てた。ハッとして、私は自分勝手な想像を打ち消した。
それは考えても仕方の無い事だもの。
私にとって何よりも大切なのは、こうして浩之ちゃんと同じ時間を過ごせる事だから。
「お疲れさま。はい、浩之ちゃん」
「お、サンキューな」
起き上がった浩之ちゃんは私の手からアイスコーヒーを受け取ると、シロップを軽く入れて指でかき混ぜ、そのまま飲み始めた。
ストローがあるのにしょうがないなあと思いつつ、私はそんな様子をジッとみつめていた。自分のにはミルクとシロップを入れてストローでかき回す。
そんな間に一気に飲みおわった浩之ちゃんは、空いたグラスをテーブルの上にコトッと置いた。
「ふー、美味かったぜ〜。お前、こうしたの入れるのも本当得意なんだな」
「ふふ、ありがとう。アイスコーヒー用に豆をブレンドしてみたの。その場でミルを使って、コロンビア豆を加減しながら入れていくと美味しいんだよ」
「へー、大したもんだ。お前、マジで喫茶店でも始めた方がいいんじゃねえか?これなら十分店で出せるぜ」
「その時は浩之ちゃんも一緒に手伝ってくれるんでしょ?」
「ははは、まあ考えておこう」
そう言いながら浩之ちゃんは屈託の無い笑顔を向けた。私もストローを口に含みながら笑顔を返す。
思った通りの苦味と旨味。今度も上手くいった事に、私はホッとしていた。浩之ちゃんの言葉、お世辞なんかじゃなかったんだ。
そんな事が言える人じゃないと分かってはいても、やっぱり嬉しい。
「さてと、それじゃ今日は何をして欲しいんだ?」
「え?..あ、えっと...」
アイスコーヒーを飲みながら、その事を考えた。
最近は私の連勝で、やって欲しい事は殆ど残っていなかった。それぞれのお部屋の掃除、お風呂場、おトイレそして玄関の掃除、庭の水まき、日用品や食料の買い出し、アジちゃんの世話と、今では二人で当たり前に分担している事まで全て頼んでしまっている。
その度に浩之ちゃんは「おいおい、そんな事いつもやってるじゃねえか。他にはねえのか?」といつも聞いてくれていた。
でも、そうは言われても中々簡単には思い付かない。
「また考えてんのか。何だったら一昨日と同じ事でもいいぞ」
「え、でもそれじゃ悪いよ」
私にとっても、きっと浩之ちゃんにとっても、そうしたお互いへの願いというものは既に叶っているんだと思う。
これが浩之ちゃんの勝ちならなあ。そうすれば、私の方から浩之ちゃんに色々してあげられるのに...
でも、それだって気付いた事はいつも私からそうしているものね。浩之ちゃん、あまり自分からあれしろこれしろって私に言わないから....
そうか、私の方からそう言えばいいんだ。
「じゃあ、浩之ちゃんが私に頼みたいなって事をしたいな」
「却下。それじゃあお前が勝った意味がねえだろうが。しかも一番最初に禁止と決めた事だぞ。もう忘れたのか?」
「そ、そうだっけ?」
自主テストの点数で勝った方は、負けた相手に対してどんな事でも一回だけ要求出来る。浩之ちゃんが冗談で言った事だけど、「それでお互いが励みになるなら」と軽い気持ちで私はそれを受けた。
禁止なのは、昨日と同じ事はさせない、相手がしたい事をしたいというのは無し、無茶な事はさせない。この三つだけ。
でも、実際にやってみて直に分かった。そんな事をしなくても、もう互いが望む事をやったり自然に受け入れたりしていたから。
浩之ちゃんも私もその事に気付いてはいたけれど、それでも止めようとは言い出さなかった。
そうした約束事より、二人で点数を競う事の方がはるかに面白いからかもしれない。
「ああそうだ。そういえば最近、台所に青竹を縦に半分にしたやつ置いているだろ。あれって『踏み竹』だよな?」
私が考えていると、浩之ちゃんは思い出した様に声を上げた。
「え?あ、うん。お母さんが使っていたのを借りてきたの」
「足が疲れるのか?」
「う、うん。少しだけ」
勉強という事で、最近は一日中冷房の効いた部屋に座っている事が多い為、どうしても足腰が冷えて疲れが溜まってくる。
そんな私に浩之ちゃんは色々と気遣ってくれて、温度をこまめに調整してくれたり、足に掛ける薄手の毛布とか用意してくれている。けど、それでもやっぱり冷えたり、立ち上がった時に座り疲れで脚がだるくなっているのは自覚していた。
踏み竹は一寸おばさんっぽいかなって思ったけど、実際それで足裏を踏むと楽になるし、今ではすっかり必需品になっている。
「よし、決まった。それじゃ早速始めるぞ」
「え?何を?」
私の問いには答えず、浩之ちゃんはそのままリビングを出てトントンと自分の部屋に上がって行った。その様子に気付いたアジちゃんが起き上がって、その方向に向かって「ニャー」と声を上げる。
けど、直にトントンと戻ってくると安心したのか、また座布団の上に丸くなってしまった。
私は絨毯の上に座りながらグラスをテーブルの上に置きつつ、アジちゃんのそんな姿を見つめていた。
「ほれ、受け取れって」
そう言って渡してきたのは座布団だった。アジちゃんが使っているのと全く同じ物だ。普段は二階の押し入れに来客用として入れてある。
私は少し怪訝な顔をしていたのかもしれない。座布団を受け取ったまま止まっている私の姿を見て浩之ちゃんはニッと笑うと、それを再び私の手から取って絨毯の上に置いた。
「そこに上半身を乗せて俯せになれ。服はそのままでいいからな」
「な、何をするの?」
浩之ちゃんは悪戯っぽい目を私に向けた。
「さあ〜、なんでしょう?」
「へ、変な事じゃないよね?」
「直ぐに分かるって。いいからさっさと寝た寝た」
一寸心配だったけど、私は浩之ちゃんに促されるまま、座ぶとんの上に上半身を乗せて俯せになった。
今日は私、若草色で薄手のワンピースを着ているから、浩之ちゃんの前でこうして横になるのは一寸恥ずかしい。そう思うと余計に心臓がドキドキしてくる。
それにしても浩之ちゃん、何をする気なの?
「相変わらず小さくて可愛いらしい足だな、お前のは」
そう言いながら浩之ちゃんは私の右足を取ると、足の裏を確かめる様に指で押し始めた。靴下は付けていないので、浩之ちゃんの指の感触が直接素足に伝わってくる。
も、もしかして.....
コチョコチョ
「きゃ!く、くすぐったい!」
思わず足を引っ込めた。
パッと後ろを振り向くと、浩之ちゃんは更に悪戯な目をして私を見ている。
「もー。浩之ちゃんの決めた事ってこれなの?」
「ワリいワリい。そういう訳じゃねえんだ。いや、なんか見ているうちに悪戯心がこうムクムクとな」
「うー。私、足の裏弱いんだからぁ。それならもう起きるからね」
「あー待て待て。今度はちゃんとやるからよ」
そう言って起き上がりかけた私の背中をトンと押すと、再び座布団の上に俯せにさせた。
私はすっかり観念していた。座ぶとんに自分の顔を埋めると、全身を少し緊張させる。これなら今、お尻を触られたとしても驚かなくて済むものね。
「そんなに身体に力を入れるなよ。本当に変な事じゃねえからよ」
「でもぉ...」
「まあいいや。それじゃ始めるぞ」
「う、うん」
私は目を閉じた。浩之ちゃんが再び私の右足を取って、足裏を触るのが分かった。
聞き耳を立てるかの様にしていた自分の足裏から、親指と踵の間に張っている筋をキュッ、キュッとリズム良く押してくれるのが感じられる。
思った通り、マッサージをしてくれているみたい。その感触と力の加減から、両手を使って親指のお腹で押してくれているのが分かる。
やがて浩之ちゃんの両指が、私の最も凝っている部分を刺激した。
「うっ...」
思わず声が漏れてしまう。自分で青竹を踏むより何倍も気持ちがいい。じんわりと身体の緊張がほぐれていくのが分かる。
「ここが気持ちいいのか?」
「うん。お願い、そこ、もう少し押して」
「ああ、任せとけ」
そう言うと、浩之ちゃんはその部分を重点的にマッサージしてくれた。私は座布団の両角を掴んで、その心地良さに耐えた。
足裏の筋に添って踵の近くから親指の根元へと、何度も何度も往復する様に指圧を加えていく。踵からゆっくりと親指へ、そしてまた踵、そして親指...そして、また踵へ....
まるで、足裏の筋に沿って指人形が歩いているみたい。
それが何回続いただろうか。足裏の筋が十分解れたなと思った頃、浩之ちゃんの指は私の足の指一本一本をクイクイと軽くしごく様にしてくれた。
足の指は普段意識する事が無いので、そうされると指の一本一本に神経が集まる感じがして何とも心地が良い。
やがてそれが終ると、足首を持って爪先から足裏全体を上にグッと反らす様にした。まるで足の背伸びみたい。筋の奥の方までグッと伸びて痛い様に気持ちがいい。
次には踵からアキレス腱にかけて、親指と一差指のお腹で挟む様にしてグッ、グッと力を加えてきた。
「い、いた」
「ん?痛いか?でもそれだけ血の流れが悪くなってる証拠だからな。一寸我慢しろよ」
「うん、大丈夫。気持ちはいいから」
「そうかそうか」
自分のそんな所が凝ってるなんて思いもしなかった。浩之ちゃんは何でそうしたの知ってるんだろう?
ちょっと驚き。同時に、馴れない心地良さで次第に頭がボーっとしてくる。
「昔さ、ここに一時期じーさんが一緒に住んでた事があって、マッサージはいつもオレの役回りだったんだ。子供だったし体重も軽かったから、背中に乗ったりしてよくマッサージしていたっけ。その度に結構いい小遣いをくれるんで、オレはしょっちゅう『今日もマッサージしてやるよ』ってじーさんにねだってたんだよな」
そんな声が次第に遠くからに聞こえてくる。私はそのままの姿勢で浩之ちゃんに質問した。
「....だからなの?浩之ちゃんがこんなにマッサージが上手なのは」
「どうだかな。けど、何となく特技になっちまってるのは確かなんだよな」
そう言いながら、浩之ちゃんは既に左足にとりかかっていた。右足のでマッサージの内容は分かっているから、今度は心ゆくまで心地良さを感じる事が出来た。
私はもう黙ったままだった。何かを話せる状態では無かった。
このまま続けられたら、きっと眠ってしまうに違いない。実際、心地よい眠気が急速に迫ってきているのが感じられた。
「よし、終わりっと。どうだ、気持ち良かったろ?」
ぽんぽんっと、私のお尻を叩く浩之ちゃん。
えっちぃ〜という言葉が浮かんだけど、私は身体を起こせないでいた。座ぶとんに顔を埋めたままでボーっとしている私。
早く起きないと、浩之ちゃんに叱られちゃうかな....
「しょうがねえなあお前は。起こすぞ」
そう言って、浩之ちゃんは私をクルッと仰向けにすると、背中からスッと抱き上げる様に起こそうとした。
お姫様だっこみたいな雰囲気。浩之ちゃんの顔が近づくのが分かる。
チュッ
起こされる間際、私は少し伸びをして浩之ちゃんの唇を軽く小鳥の様についばんだ。
ビックリしたのか、浩之ちゃんの動きが止まる。
私は見上げた。やっぱり驚いた顔をしている。何だか嬉しくなった。
「お、お前はな〜」
「えへへ〜。マッサージしてくれたお礼だよ。口で言うより、この方がいいでしょ?」
「こんのやろお」
手刀がペシッと私のおでこに軽く当てられる。いつもなら大袈裟に避けるマネをするんだけど、今日はされるがままでいた。
そんな私に少し意外な顔をしていた浩之ちゃんだったけど、直に普通の顔に戻って、再び私を抱き起こしてくれた。
「鬱血している程じゃねえから大した事は無いと思うけど、また疲れが溜まってきたなら無理せずにオレに言えよな」
その言葉に私は一瞬ドキッとした。そして、おずおずと浩之ちゃんに尋ねた。
「...それって、またマッサージしてくれるって事?」
「ああ。あんまり頻繁にするのは良く無いらしいから、適当に日を開けてな。疲れが過ぎて痛くなってからじゃ遅えからよ」
「....約束してくれるの?」
「あ?ああ、約束だ。言い出しっぺはオレだから心配しなくてもいいぜ」
「.....私が勝たなくても?」
「あのなー...ったく、からかってんじゃねーよ」
私の顔を見て浩之ちゃんはそう言った。別にからかってるつもりはなかった。
今回だけじゃなくて、次もそうやってマッサージしてくれると聞いて、思わず口に出していただけ。
浩之ちゃんが、私の為に...
嬉しかった。
自分から浩之ちゃんに色々してあげる事も嬉しいけど、浩之ちゃんの方からそうやって私の為だけに約束してくれる事が何よりも嬉しかった。
それがどんな小っちゃな約束でも、必ず守ってくれるから。
浩之ちゃんと付き合う様になって、その事がよく分かったから。
浩之ちゃんなら、間違い無くそうしてくれる。例え、私が悪いからいいよって言っても『いいから』って言ってくれて。そうして、いつも人の事を心配してくれて...
何故なら、それが浩之ちゃんだから。そういう人だから。そういう人だって、昔から分かっていたから。
「...?どうした?急に俯いたりして」
「ううん、何でも無い。何でも無いよ」
不意に目頭が熱くなった。浩之ちゃんのそうした心遣いが嬉しかった。
良かった。この人が私の恋人で、本当に良かった。
「....泣いてんのか?そんなに痛かったのか?」
「あ、ち、違うのこれは。何か目にゴミが入っちゃって」
浩之ちゃんは疑わしそうな目をした。
「...典型的な言い訳のパターンだよな。本当は辛かったのを我慢していたんじゃねえか?だったらさっきの約束は無しにしても..」
「ち、違うの違うの。本当なの。本当に目にゴミが入っただけで..」
私は思わず両手をブンブンとさせていた。
浩之ちゃんは相変わらずジトーっとした目で私を見ていたけど、最後には「まあ、お前がそう言うんなら...」と言ってくれた。
危ない危ない。折角浩之ちゃんが約束してくれたのに、それが無しになっちゃうのはイヤだもの。
そんな事を考えていると、頭の中でピンと閃くものがあった。
「そうだ!私も浩之ちゃんにしてあげる」
「何を?...って聞くまでもねえか。マッサージか?」
「うん!」
私は大きく頷くと、浩之ちゃんの方に座布団を差し出した。それを受け取った浩之ちゃんは少し困った顔をしている。
「そりゃいいけどよ。それじゃあ賭けの意味が無えじゃねえか。大体お前毎日の様に夕飯作ってくれてるだろ?その上マッサージまでして貰ったら割り合わねえぞ」
私はゆっくりと首を横に振った。
「ううん、そんなの関係無いよ。それにこれは私の方から浩之ちゃんにしてあげたい事だもの。これって勝者の特権でしょ?」
「...そんなの特権って言わねーぞ。単に興味があるだけじゃねーのか?」
「いいからいいから。早く寝て寝て」
私は浩之ちゃんを促した。
それでも渋っていた浩之ちゃんだったけど、最後にはゴロッっと横になってくれた。
それとは逆に、寝るのはもう飽きた様子のアジちゃんが目ざとくタタタタタと浩之ちゃんの顔に近寄ってきたかと思うと、その鼻の辺りをフンフンと嗅ぎ始めた。
私も浩之ちゃんも、次にやるだろう事を黙って見守っている。
グリグリグリグリ
「ったくお前はよー。それは止めろってーの。毎日やられたら鼻の穴が広がっちまうじゃねーか!」
「クスクスクス」
浩之ちゃんは横になったままアジちゃんをお腹から抱き上げると、器用にクルクルと転がす様にした。
アジちゃんはそれが嬉しいらしくて、そんな浩之ちゃんの指にジャレたり噛みついたりしながら遊んでいる。
こういうのって、浩之ちゃん本当に上手だな...
「何でこいつはオレが横になると鼻の中に顔突っ込んでくるんだ?しかもいっつもオレにだけ。お前はやられた事無いんだよな?」
「うん。鼻の頭をペロペロ嘗められた事はあるけど」
「おっかしーよなー。潜り込めると思ってる訳ねえしなあ」
「それはわかんないよ〜。浩之ちゃんの鼻の大きさなら出来ると思ってるかも...」
しまった!と思ったけど、すでに遅かった。
「いったーい!」
浩之ちゃんは足の親指と人差し指を使って座っていた私の太股を挟むと、器用にキュッっとつまんだ。
まるで足にも手が付いているみたいで感心しちゃうんだけど、こうした時だけその技を披露するのは勘弁して欲しい。
「馬鹿な事言ってんな」
「うー、アザになっちゃうよー」
挟まれた所を思わずさする。
浩之ちゃんは脚を引っ込めると、笑いながら言った。
「心配するな。加減はしてっから。今までだって大丈夫だったろ?」
「それはそうだけど...」
実際、浩之ちゃんの言う通りだった。ふざけて叩かれたりする事はあっても、決して私の身体にダメージが残る様な事はしなかった。
私は心の奥底で感じていた。
この人の側ならそうした心配の無い事を。決して自分の感情だけで私を見ているのでは無いという事を。
それは勘というよりも、女性の持つ本能からと言った方が当たっているかもしれない。
「それとも何か?例の特権とやらで、足指ツネリは禁止にするか?」
浩之ちゃんは嬉しそうに私の顔を見てそう言った。まるで悪戯好きの子供の様な顔をしている。
私は頬を脹らませた。
「本当ならそうしたいけど、今回は特別だからね」
「遠慮はいらねえぞ。それならオレへのマッサージは無しだな。よっこらせっと」
「あー待って待って」
起きようとする浩之ちゃんを慌てて押し止どめた。
そんな様子を見てか、浩之ちゃんはまた横になった。
「なんだ、やっぱり興味があるんじゃねえかよ」
そうかもしれない。でもそれは浩之ちゃんの喜ぶ顔が見たいから。浩之ちゃんが「ああ、気持ちいいぞ」って言ってくれるのを期待しているから。ただそれだけ。
「あかり、一つ頼んでもいいか?」
「え?何?」
さっき浩之ちゃんがやってくれた様にしようと、右足に手をかけた所でそう言われた。
浩之ちゃんを見ると、少し真面目な顔をしている。
私は自然と首を傾げた。
「そのままオレの足裏を踏んでくれねえか。お前の足で」
「私の足で?そのまま踏んでいいの?」
「ああ、頼むぜ」
私は立ち上がると、浩之ちゃんに言われるがままに、上向きになっている浩之ちゃんの足裏に自分の素足を重ねた。
足裏を通じて、浩之ちゃんの体温と少しザラザラした皮膚の感じが伝わってくる。私のと違って、踵の方の皮膚がとても固い。
これが浩之ちゃんの足裏なんだ。
「この筋に添って踏めばいいの?」
「ああ、それでいい。それ以外の所はお前の好きに踏んでいいからな」
「うん」
いっちに、いっちに。
私は浩之ちゃんの足裏を踏み始めた。足元から上へと見上げると、座布団を枕にして腕を前に伸ばしながらリラックスしている様子が目に入った。そんな浩之ちゃんの指先では、アジちゃんが勝手にジャレ付いて遊んでいる。
浩之ちゃん、気持ちいいのかな?
「う〜、良い気持ちだ。たまにはやって貰うのもいいもんだな」
私の考えが聞こえたかのかもしれない。
良かったぁ。浩之ちゃん、気持ちいいっていってくれた.....
私は嬉しくなって、さらに念入りに足裏の筋を踏んでいった。
いっちに、いっちに....
「...なあ、あかり。オレ、お前に謝らなけりゃならねえかもな...」
いきなりそんな事を言われて、私は思わず足を止めた。何?謝るって?
私がそんな疑問を口にする前に、浩之ちゃんは言った。
「オレさ、実は最近やたら足裏が痒くてさ。もしかしたら水虫かもしれねえんだ。お前、今素足でベッタリとオレの足踏んでるだろ?感染(うつ)しちゃったかもしれねえな」
「........」
「すっかり忘れていたぜ。いやいや、ワリいワリい」
「........」
クスッ...いっちに、いっちに...
私は足踏みを再開した。
浩之ちゃんはしばらく黙っていたけれど、何事も無かったかの様に私がマッサージを続けているからか、慌てて後ろを向いてきた。
「おい、オレが言った事聞こえなかったのか?」
「聞こえたよ」
「だったらお前...」
「私が慌てて飛び退くと思った?」
浩之ちゃんは私の顔を見つめていた。そんな私はきっと笑っていたんだと思う。驚きから次第に「やれやれ」という表情に変っていくのが見て分かった。
「なんだよ。冗談だって分かっていたのかよ」
「ううん、知らなかった。それって冗談だったの?」
「え!それじゃあ....」
再び驚いて見上げる浩之ちゃんの瞳を捉えながら、私はゆっくりと言った。
「私にとって、そんなのは大した事じゃないもの。例え浩之ちゃんがもっと酷い皮膚の病気だったとしても、浩之ちゃんがそう望むなら私は喜んで素足で踏んであげる。だからもし痒いのが本当だったとしても気にしないで」
「.........」
「でも、もしかしたら痒いのは本当なの?それなら掻いてあげようか?」
「馬鹿たれ」
浩之ちゃんはフイと向こうを向いてしまった。そして、再び目の前のアジちゃんを相手にしはじめた。
私は黙って、今度は浩之ちゃんの踵のつけ根を踏んでいった。
しばらくして、浩之ちゃんは言った。
「....本当に馬鹿だな。お前って女は...」
「うん。自分でもそう思う」
きっとそうなんだと思う。どうしてこの人の事になると、そうした事が全然気にならないんだろう。
でも、自分では薄々分かっていた。そう思える心があるからこそ、こうして浩之ちゃんと一緒に居られるんだという事を。
もしかしたら、それは浩之ちゃんにしても同じなのかもしれない。ただ、私程には気付いていない。きっと、それだけのこと。
つかの間、私はそんな事を考えていた。
「....そんなお前を馬鹿呼ばわりするオレは、さらに底抜けの馬鹿って事だよな...」
「ふふっ。そんな人を好きになった私も、きっときっと負けない位にね」
そうでありたいという気持ちを込めながら、私は言った。
浩之ちゃんはそれ以上、何も言わなかった。
私は足踏みを続けながら、浩之ちゃんの背中を見つめていた。大きな背中だった。男の人の背中なんだなって思った。
相変わらずアジちゃんを相手にしている浩之ちゃんの手に視線を戻しながら、私はマッサージを続けていった。
ザ...ァァァァァアアアアア....
天気予報で言っていた雨が振ってきた様だ。
私は足裏のマッサージを終ると、浩之ちゃんに尋ねた。
「ふくらはぎの方も踏んであげようか?」
「ああ。足裏全部を使ってゆっくりな。出来るか?」
「うん。任せて」
私はふくらはぎの方に体重を乗せていった。アジちゃんは相変わらず浩之ちゃんの手で遊んでいる。
そのうち浩之ちゃんはすっかり全身の力を抜くと、ゆっくりと目を閉じていった。
そんな様子を見ながらも、私は無心に浩之ちゃんへのマッサージを繰り返した。
ザアアアアアアアアアアアアアアアア...
ひとときの夕立が最も勢いを増す瞬間。その雨の力強さに、回りの音が次第に埋めつくされていくのが分かった。
けれども私も浩之ちゃんも、その事には最後まで触れずじまいだった。
− 了 −
あとがき
どうも、作者のTASMACです。本日は「私と浩之ちゃんと」をお読み頂き、誠にありがとうございます。
この作品、流れとしては「とある日の二人」に添っており、何気ない日常の一エピソードをテーマとして綴ったものです。夏のお話しなのに花火もお祭りもプールも何も無い平坦なものではありますが、個人的にはこうした淡淡とした話しが好きなものですから、書き手の我が儘と思いつつあえて書かせて頂きました(^^ゞ。
お話しの内容に引っかける訳ではありませんが、来年に受験を控えている方々には本当、頑張って欲しいなと思っています(^^)。
本来でしたらこのSS、8月中には発表する予定でしたが、仕事に加えて暑さにやられてしまい、いつもの月よりペースが大幅にダウンしてしまいました(^^;)。当初の予定では、これの発表後にもう一本夏のエピソードで発表したいSS(今回の雰囲気とはかなり異なります)があったのですが、現状ではそれを出すべきか、スキップして次の作品を出すべきか悩んでいる状況です。
もし、秋だと言うのにそうした夏のエピソードを思い切り盛り込んだSSを発表したとしても、石を投げたりしないでくださいね(^^;)
それにしても9月に入ったばかり(現時点9月8日)だというのに、気候は既に秋の気配ですね。ようやく過ごしやすくなってきましたし、ここら辺りでペースを上げて発表サイクルを早められればいいなと(毎度の事ながら(^^;))考えています(^^ゞ。
恒例の「おまけ」は今回もごめんなさい(^^;)。次作では頑張りたいと思います。それと連載の方をそろそろ再開させる予定も考えています。こちらの方もどうぞお楽しみに(^^)。
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