ペアジャケット

 

屋上でのいつもの昼休み。

あかりの弁当をいつも通り一気に食べ終えたオレは,ゆっくりとお茶を飲みながら,

明日の祝日である休みの事をぼんやり考えていた。

あかりはまだ食事中だ。しばらくはボーっとさせて貰おう。そう思っていた矢先,

不意にあかりの方から声をかけてきた。

 

「浩之ちゃん。ジャケット着る?」

 

何だ?と思い,つとそちらに顔を向ける。相変わらず食べるペースはゆっくりの様だ。

弁当はまだ半分以上残っている。

 

「?ああ,よく着るぜ。お前と出かける時も着てるだろ?」

「うん。あれって結構前から着ているのだよね。浩之ちゃん物持ちいいなと思って」

「まあ,ちゃんと着られてダサくなければそれで十分だからな。服代も結構ばかに

ならないし」

「そうだよね。あ,でね,最近お母さん洋裁とかの方も始めて,無地のだけど男女物

のジャケットとか手に入ったの。少し薄手でジャンパーみたいなんだけど,浩之ちゃん

にどうかなと思って」

「へぇ。結構着られそうな奴か?」

「うん。実は今日持ってきているの。試しに着てみて」

 

そう言うとあかりはまだ残っている弁当を横に置き,スポーツバッグから紙袋を取り

出した。中から奇麗に折り畳まれたジャケットを取り出す。見た目布地で確かにジャ

ンパーっぽい感じではあるが,濃紺色で襟首辺りのカットが結構おしゃれに見える。

無地にしてはそんなに安っぽい感じでもない。ふーん結構いいじゃねえか。

何となく期待感がつのってくる。

 

「着せてあげる。制服脱いで後ろ向いて」

「そうか?それじゃ」

 

オレは立ち上がり,制服を脱いだ。「はい,じゃ左から」とあかりが袖を通してくれ

る。赤っぽいチェックの裏地が見える。「次は右ね」はいはい。袖を通し終わると,

思った以上に馴染むのが分かった。裏地の感触も悪くない。大きさもピッタリだ。

前のチャックを閉めてみる。うん,なかなかいい感じじゃねえか。

 

「大き目の選んだんだけど,どうかな?」

「丁度いいぜ。ピッタリだ。デザインも悪くねえし,気に入ったぜ」

「よかった〜。浩之ちゃん格好いいよ。ちょっと一回りしてみて」

「おうよ」

 

一寸格好つけて,あかりの目の前で一回りする。「うん,ステキステキ」と拍手する

あかり。そのオーバーな表現には笑ってしまうが,なんとなく嬉しくなった。

 

「結構いいやつみたいだけど,これ本当に貰っちゃっていいのか?」

「うん,そのために持ってきたんだもの。気に入ってくれて良かった」

「すまねえなわざわざ。今度何かお礼するからよ」

「あ,気にしないで。お母さんから貰ったものだし,私は一寸裁縫しただけだから。

浩之ちゃんが喜んでくれるだけで私嬉しいもの」

 

可愛い事を言うじゃねえか。おもわずあかりの頭を撫でる。「あ」というあかりに

「サンキューな」と照れ隠し。本当,愛いやつだ。ん?そういえば裁縫って?

聞こうとした時,あかりは再度紙袋をゴソゴソやりはじめた。

 

「えへへ。私のも持ってきたんだ。ちょっと着てみるね」

 

そう言うと,制服の上からジャケットを羽織る。制服の上からでも結構似合ってる。

 

「どうかな?」

「うん。いいんじゃねえか?お前のも中々よく似合ってるぜ」

「フフ,嬉しい。これで浩之ちゃんとお揃いだね」

 

そう言うと,目の前で踊る様にクルリと回る。

 

「ねえねえ,これ着て明日約束してた映画行こうよ。お揃いで嬉しいな」

「...」

「私,前から浩之ちゃんとこうしたお揃いの着て一緒に遊びに行きたかったんだ。

あー早く明日にならないかなあ。晴れるといいなあ」

「....」

「楽しみだね,浩之ちゃん....?どうしたの?何か固まっちゃってるけど?」

「...あかり」

「あ,何?」

「一寸後ろ向いてくれるか?」

「え?う,うん。じゃ,はい」

「首だけ後ろ向けてどうすんだよ。そういうお約束はするな。身体全体回れ右だ」

「お約束とかのつもりは無いんだけど..じゃ,はい」

「......」

「どうかな?ジャンパーみたいだったから,無地だと一寸寂しいかなと思って後ろ

に縫ってみたの。少しハデかなと思ったんだけど,最近の若い人ならこの位は普通

だってお母さんが..」

「そのパッチだかは何だ?」

「えっとね,浩之ちゃんから見て右からニワトリのお母さん,で,その子供のヒヨコ

で,最後のコが結構可愛いでしょ?頭に被ってるのタマゴのカラなんだよ」

「...そんな事聞いてんじゃねえよ。それ,お前が自分で選んだのか?」

「う,うん。こうしたパッチお母さんが沢山持っていたから貰ったの。本当はクマが

良かったんだけど,ペアだといいのが無くて,これが一番可愛かったから」

「ペアってまさか...オレのジャケットにも縫ってあるのか?!」

「うん。浩之ちゃんのは一寸格好いいニワトリのお父さんで,あとヒヨコも..」

「あかり!!」

「は,はい!ああびっくりした。どうしたの?あ,これ気に入らなかった?」

 

オレは頭を抱えた。本当は怒りたい所だが,お礼を言っちまった手前,いきなり頭ご

なしという訳にもいくまい。ここは諭す様に言うのが一番だろう。オレ心を落ち着ける

べく深呼吸すると,あかりに顔を向けた。

 

「なあ,お前は親切心でやってくれたのかも知れねえけどさ,例えば二人でこれ着て

街とか歩くとするわな?回りはそれを見てどう思うか分かるか?」

「え?どうって..見て可愛い〜とか,仲の良さそうなカップルだとかじゃない?」

「...普通こう思うんじゃねえか?『何だあいつら?子供みたいなパッチ付けて。

恥ずかしくねえのか?』って。多分オレでもそう思うぞきっと」

「そ,そうかな。でもカップルだったらこういうの着てる人もよく見るよ。私は結構

いいと思うんだけどなあ」

「...そのカップルって二人の間に子供が居たりしてねえか?」

「え?あ!そうか。そう言われてみるとそうだよね。浩之ちゃん観察力さすがだね」

 

ペチ!

 

「あ!」

「茶化すな。あかりワリイけどよ,オレとしては将来自分の子供が出来たとしても,

こういう格好だけは勘弁して欲しいと思ってんだ。てなわけで好意だけ有り難く受け

取っておくぜ。明日はいつもの格好で行かせてもらうぞ」

「え〜!着てくれないの?折角縫ったんだよ?私は可愛いと思うし,変じゃないと

思うし,似合うと思うし,久しぶりの映画お揃いで行くの楽しみにしてたのに〜」

 

以前なら簡単に引き下がったくせに,最近は「こう」と決めたらとことん粘る様に

なってきた。ここは一発ピシッと言った方がいいな。

 

「あかり!いい加減にしろ!お前がよくてもオレはイヤなんだよ!何で好き好んで

こんな○美屋の『のり○ま』みたいな格好しなきゃならねえんだ!二人して街中の

笑い者になる気か!」

「う..で,でも..」

 

あかりはガックリとうなだれてしまった。可哀想だと思うし,出来ればあかりの希望

に応えてやりたいとは思うが,さすがにこの申し出だけは承認する訳にはいかない。

少なくとも街中の笑い者になるより,あかりの損なった機嫌を後で回復させてやる方

がなんぼかマシだ。ここは心を鬼にしなければと自分に言いきかせていた。

 

「やほ〜。お二人さん元気してる〜?」

 

ゲ〜〜!!志保の奴なんてタイミングの悪い時に!!つきあいが明かされてからは

最近ちょくちょくチョッカイ出しに来てはいたが,まさかこんな時に来るとは!!

脱ぐんだ!早くジャケットを!あ,あれ?あれれ?おかしな?なんで!なんでこんな

時にチャックが引っ掛かるんだよ〜!!クソ!この!この!!

 

「さっきからアンタ何やってんの?」

「あ!い,いや。何でもねえ何でもねえよ」

「フーン,まあいいわ。あ,あかり〜。このお弁当食べないの?貰っていい?」

「え?あ,うん。食べかけだけどいいの?」

「ぜ〜んぜん平気。誰かさんのと違って奇麗なものよ。モグモグ。うん,いける!

あかりまた腕を上げたわね〜。いや〜学食でたまにはダイエットメニューなんつっ

てウドンだけで済まそうと思ったけどやっぱ駄目だわ。余計おなかが空いちゃって

さあ。あ,このタマゴ焼き美味しい。うーん幸せ」

 

さっきから脱げないジャケットに悪戦苦闘しつつ,志保に対して「早く失せろ!」

とテレパシーを送っていた。幸い気付いていないみたいだし,後は何とか脱げれば

 

「あれ〜?あかりそのジャケットどうしたの?あ,ヒロも着てるじゃん。何よもし

かしてペア物?ヒュ〜ヒュ〜。学校でよくやるわね〜」

 

万事休す!オレはジャケットを脱ぐのを諦め,背中を見せない様志保に向き直った。

 

「ねえねえ見せてよ。結構良さそうじゃない。どれどれ」

「志保!ワリイんだけど,今,あかりと大事な話しをしていたんだ。一寸席を外し

てくれねえか?」

「大事な話しぃ?何よ。私がいちゃマズイの?」

「ああ,思い切りマズい..じゃなくて真剣な話しなんだ。な?だからここはおとな

しく引き下がってだな」

「真剣なって,たかだかジャケットの事でじゃないのぉ?それとももしかして..」

「え?もしかして?」

「...あかり,別れてくれ。とか言うんじゃないでしょうねえ?」

「ばっ!んなワケねえだろう!とにかくいいからサッサとだな」

「な〜んかアヤシイわねえ。まあいいわ。悪いけどお弁当終わるまで待ってね」

 

そう言うと,再びあかりの弁当をパクつきはじめた。くっそ〜。なんでコイツは

こんなに図々しいんだ。オレはあかりを手招きし,志保に聞こえない様に話しはじ

めた。

 

「(早くそのジャケット脱いで仕舞っちまえ。志保には絶対見せるなよ)」

「え?何で?後で志保に見せようと思っていたんだけど」

「(バカ!もっと静かに!それにそんなの見せたら後で何言われるか分かったもん

じゃねえぞ!)」

「志保なら可愛いって言ってくれると思うよ。結構こういうの好きみたいだから」

「(そういう事言ってるんじゃねえんだよ!こんなのペアで着てたらそれこそ

あいつに格好のネタを与える様なものじゃねえか。バレたら『のり○まカップル』

なんてネタで噂を広められるかもしれねえんだぞ!)」

「何その『のり○まカップル』って?」

「え?....わぁーーーーっ!!い,いつのまに?!」

 

こ,こいつは神出鬼没か?! いつのまにか志保が近くに寄ってきていた。

 

「何よいきなり大声だしてぇ。うるさいわねえ。食べ終わったから来ただけじゃ

ない..って,あ!あかり一寸後ろ見せて!何よこれ!可愛いじゃない!これ

あかりが縫ったの?へ〜,上手ねえ〜。市販のよりいいわ。さすがよね〜」

「そ,そう?志保はいいと思う?」

「もちろんよ。この最後のヒヨコなんて頭にカラを乗せてて最高気に入ったわ!」

「あ,やっぱり?これが決め手になったんだ。ありきたりだけどいいなと思って」

 

2人して盛り上がっている。こ,これはチャンスだ。今のうちにこの場を抜け出し

て校内へ...ってこんなの着て歩けるか〜!!どうしたらいいんだ〜!!

 

「ヒロ〜。ねえヒロってばあ」

ギク!

「な,何かな?志保君」

「ヒロのも見たいな〜。後ろ見せてよ〜」

「いやあ,とてもお見せ出来るモノじゃあねえぜ。そ,そんな来るんじゃねえよ」

「いいじゃないのよ〜。私とヒロの仲でしょお?。とっても見た〜い」

「何らしくねえ声出してるんだよ。オレのはいいって言ってるだろ?。お,お前

なあ..志保!オレの後ろに立つな!」

「ふふふ,そこまでよゴ○ゴ13。大体そんな金網に背中付けてると,校庭から

丸見えじゃないのお?」

「なっ!」

 

一瞬怯んだのが命取りとなった。「スキあり!」志保は素早くオレの背中を取る。

お,終わった...全ての終わりだ〜!!

 

「な!うっぷぷぷぷ!なによヒロそれ〜!あ,あっはっはっはっは!あはははは。

いいわそれ!ヒロもう最高!あんたのイメージ変わるわこれ!あっはははははは」

 

とうとう志保は笑い転げはじめた。それを見てオレは一気に脱力感に襲われ膝を

付く。あかりはどうしたもんかと困惑した顔で立ち尽くしていた。

恐るべし,あかりのジャケット...これで今日から「のり○まカップル」の

誕生だなと,志保の笑い声を聞きながら何か他人事の様に考えていた。

 

                          ◇   ◇   ◇

 

その夜。自分の部屋で雑誌を読んでいたオレは,ふと壁にかけたジャケットに

目をやった。闘鶏を思わせる逞しい姿態に精悍な顔つきの雄鳥。それに付き従う

雄鳥の子供であろうヒヨコ。生意気にも雄鳥を真似て鋭い目つきをしている。

見ていて思わず笑ってしまうデザインだ。あかりのはレグホン系の優しい感じの

雌鳥だった。子供のヒヨコも母親似で可愛らしかったから,多分人間での女の子

なんだろう。そうするとオレのは男の子か。

その芸の細かさから,あかりがオリジナルのパッチに手を入れて,色々試行錯誤

しながら作り出した事が容易に想像できた。

いかにもあかりらしい細やかさだなと思った。

それと共に,自分のデザインを見もしないで怒ってしまった事を後悔していた。

多分,これを作っている時のあかりは期待に胸を膨らませていたに違いない。

オレとお揃いの...いや,二人一緒ではじめて意味のあるこのジャケットを

着て遊びに行く,そんなささやかな望みをオレは一喝しちまった訳だ。

「ごめんね浩之ちゃん。これ,無かった事にするから」と言ってオレの手から

引き揚げようとしたジャケットを「いいよ,折角お前が頑張って縫ったんじゃ

ねえか。ありがたく貰っておくぜ」と受け取った事がとりあえず唯一の救いか。

今でもこれを着て街に行くと考えると躊躇しちまうが,あかりに悪い事をして

しまったのは間違い無い。

しまったよなあ。

明日は謝ろう。どう謝るかが問題だが。

しかし志保のヤロ〜。あんな大笑いする事ねえじゃねえか!床に転げ回ってまで

笑いやがった後,何言うかと思えば「あんたねえ,折角あかりが縫ったのを着な

いつもり?薄情な男ね〜」なんて言いやがって。相変わらずむかつく奴だ...

でも,結果的には今回もあいつに助けられたのかもな。全くおせっかいな奴だぜ。

 

読みかけの雑誌を放り出すと,ベッドの上にゴロっと横になったまま,明日約束

しているあかりとの映画について,色々と思いを馳せていた。

 

                          ◇   ◇   ◇

 

ピンポーン,ピンポーン...

「浩之ちゃん起きてる〜?」

ガチャ

「おう!起きてるぜ。時間通りだな相変わらず」

「おはよう浩之ちゃん。もう出られるの?」

「ああ,その前に一寸寄りたい所があるんだけどな」

「え!寄り道するの?何処へ?」

「何処だと思う?」

「えっと..分かんないけど」

「バーカ,お前ん家だよ!」

 

そう言うと,首だけ出していた玄関の扉を全開にする。「あっ!」と声を出す

あかり。そりゃそうだろう。オレだってギリギリまで悩んだんだから。

 

「そ,それ着てくれるの?」

「勘違いするなよ?今日だけだ。それで良ければお前も着てこいよ。一人で

こんな格好するのはさすがにハズかしいぜ」

「ひ,浩之ちゃん..ありがとう。私,嬉しいよ..」

「いきなり朝から湿っぽくなるんじゃねーよ。よし,それじゃ行くぞ!」

「うん!」

 

その後,あかりの家に寄ったオレ達は「あらっ!まあ浩之くんそれ似合ってる

じゃない。一寸待ってて写真写真」とあかりのお袋さんに引き止められた。

逃げる事も出来ず,あかりとのツーショットを何枚も撮られたのには本当まいった。

あかりの奴,ここぞとばかりに腕に抱きついてきて嬉しそうにしやがって。

「ほら,浩之くんもっと嬉しそうな顔して。そうそう,いいわよ〜。それじゃ

今度は後姿で二人でこっち振り向いてる所ね。一緒に手ぇ繋いでみて」

まだ撮るのかよ〜。もうそろそろ解放してくれねえかな〜。

そんな撮影会からようやく解放され,お袋さんに見送られながら隣街の映画館

に行く為,駅に向かう。その間あかりはずっとオレの腕に抱きついたままニコ

ニコと笑顔が絶える事が無かった。今,オレ達を後ろから見たならば,雄鳥と

それに続く目つきの鋭いヒヨコ,その後ろに続く雌鳥と娘のヒコヨ達,最後尾の

年少にはタマゴのカラ帽子付きの図が展開されているだろう。

く〜なんとも背中がムズ痒いぜ。まあ,今日一日だけだしな。

 

「浩之ちゃん」

「ん?何ださっきからずっと嬉しそうだな」

「うん,凄く嬉しい。私,今日一日このままずっとこうしていたいな」

「バーカ,それじゃあ映画終わっちまうじゃねえか。本来の目的はそれだろ?」

「エヘヘ,そうだよね....ねえ,浩之ちゃん。あのね...」

「何だよ?言い難い事か?」

「うん...その...また,これ着て歩ける時が来るといいね...」

「...ああ,そうだな」

 

あかりの言いたい事は分かっていた。オレとしては,そう返事をするのが今は

精一杯だった。まあ待ってろよあかり。そのうちだ。そのうちな。

さっきまでの背中の痒さもだいぶ癒え,オレもこうした日を目一杯あかりと楽し

もうという気になっていた。

 

                                               − 完 −

 

後日談 (おまけ)

 

「何だよ志保,こんな所に呼び出して」

「わざわざスミマセンねえお代官様。今日は一寸見せたいブツがありまして」

「誰が代官だ!それに何だよそのブツって。また何か企んでるのかお前は?」

「いえいえ企むなんてとんでもない。あたしは単に代官様の保身となる話しを

持ってきただけでして」

「何だよそれ?まあ,話しだけは聞いてやるから,とりあえずはそのブツと

やらを見せてみろよ」

「さすがお代官様お話しが早い!で,これなんですがね」

「?....こ,これってまさか!何でお前がこんなモノ持ってんだ!!まっ

まさか,あかりから?」

「いえいえ,あたしの方から友達にそんな無粋な事はできません。これは街

であかりのお母様に会った時,特別に提供して頂いた一品でしてねえ」

「そういう事かよ。くっそ〜。その写真こっちによこせ!」

「おおっとお,そうはいきませんよ。私としても苦労して入手した一品。

ちとお値段が張りますがね」

「苦労って..単にあかりの母親に会って貰っただけじゃねえかよ!しかも

それって完全に脅しじゃねえか!...わかったよ。自販機のカフェオレで

どうだ?」

「ご冗談を!これだけの品ともなれば,相場としてはヤックのスペシャルセッ

トが妥当かと」

「てめえいい加減にしろよ!オレでさえ滅多に口に出来ないスペシャルをお前

みたいな悪人の口にさせられるかよ!しかもオレの貴重な金で!」

「あたしはいいわよぉ。前にアンタが心配していた私からのクラスへの御披露目,

今日やろうかな〜。この写真付けて。そうそう『今明かされる!のり○ま

カップルの真実!』なんてどうかしら?これはウケるわよ〜」

「お前!あかりの事忘れてるだろう!あいつにまで迷惑がかかる事になるん

だぞ!」

「そんな事は無いわよ。こうした話しってのは大抵男子の方に矛先が行くん

だから。あかりは皆に評判がいいし,ヒロの事好きなの皆知ってるから,

笑われるとしたらアンタだけよねえ?」

「あ,悪魔!お前は悪魔だ!!」

「お誉めいただき光栄ですわ。オホホホホ」

「くっ...スペシャルでいいんだな?」

「ブルーベリーパイも付けてね」

「わーったよ!!..志保屋,貴様はワルよのお!」

「いえいえ,お代官様にはかないませんわよ(笑)」

 


あとがき

 

こんにちは。作者のTASMACです。本日は「ペアジャケット」をお読み頂き

ありがとうございます(^^)。

考えてみれば,このHPでの初の完結小説という事になりますね(^^ゞ。

実を言うと,私はHPに発表する以前には,こうした二次創作にせよ,小説と

いうものを生まれてからこのかた一度も書いた事がありません(^^;)。

そうした人間にこうして何かしらSSを書かせてしまう「ToHeart」というゲーム

は凄いの一言に尽きます。

そのいきさつについては色々面白い(と思っている(^^;))話しがあるのですが,

それは「浩之とあかり」が完結した時にでもまとめて「あとがき」とさせて頂く

予定です(^^ゞ

今回のこの作品は「浩之とあかり」の一遍として書いてみました。本来なら

「二人の日常」でやろうかと思ったネタですが,伏せ字が多かったのと,

朝昼夕夜のどれかに収まるという感じでも無かった為,構想のみでお蔵入り

となっていたものです。今回「ショートストーリー物が読んでみたい」という

方の要望を受けて日の目を見る事となりましたが,如何でしたでしょうか?

感想お待ちしています(^^)


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作者へのメール:tasmac@leaf.email.ne.jp