10000Hit記念SS 〜 「浩之とあかり」番外編 〜


雨の日に





 鉛色の重たるい雲からシトシトと雨降る日の下校時間は足早に引き上げる連中で校庭が川の様に埋まり、さながら傘の百花繚乱とも言える様相を呈している。
 一様に校門という河口に向かって流れるその花達は殆どが同じ速度を保っているが、中には小さな集団を作ってグルグルと入れ換わったり、何を急いでいるんだか川の縁を素早く流れたり、かと思うと二つの花がゆっくりと流れて周りがそれを迷惑そうに追い越したりとそれぞれに特徴があって面白い。
 晴れている日は蜘蛛の子を散らすだけの下校時間が、雨が降っただけでこうも変化するというのは実際どうでもいい事ではあるが、それを面白いと感じる様になったのはつい最近の事だった。
 以前のオレなら、そんな事は考えもしなかっただろう。
 放課後ともなれば掃除当番でも無い限り足早に帰宅するか適当にブラブラするか誰かを誘って遊びに行く。約束でも無い限りこうして教室にとどまってはおらず、パッと川の流れに身を投じていたに違いない。
 だが、オレは今教室に残って窓際の机上に座り、こうしてボーっと外の景色を眺めている。飽きもせず、イライラする事も無く。
 待ち合わせ...という訳では無い。何となく...と言った方が近いだろう。
 そんな気分...というのが多分当たりだ。
 チラと教室の中を見回してみる。
 三人..四人..と、残っているのはオレを含めても僅かなものだった。
 窓の外に視線を戻し、再びボーっとした時間を過ごす。

 サアアァァァァ....

 雨脚がさらに強くなった様だ。
 小さくても力強い雨粒が窓の外を大きく濡らし、一面に滝の様な流れを作っている。
 その勢いに押されるかの様に花の流れは一瞬大きく膨らみ、やがて確実にその数を減らしていった。
 それでも依然喧騒の中にある外の様子と、静寂を取り戻しつつある教室との対比。そこからは、何か取り残された様な寂しさが感じられる。
 だが、そうなればそうなる程、不思議とオレの心は落ち着いていった。むしろ、こうした様子を楽しむ余裕すら生まれていた。

 ....ジジイになったもんだ。

 まだ十代であるオレのセリフじゃないなと思いつつ、そんな事を考えている自分が可笑しくて笑いが込み上げてくる。端から見たら危ない奴だと思われたに違いない。

ガララッ

 教室の戸を開ける音で直ぐに分かった。オレは窓の外を見下ろしたまま問い掛ける。

「終わったのか?」

 一瞬の間。次にはパタパタと近づいてくる音。
 そして側まで来ると、最後にはジィーっと横からのぞき込む仕草。
 そうやってオレを見つめるその瞳からは、驚きから嬉しさへと大きく気持ちが溢れてくるのが見て取れた。

「もしかして待っててくれたの?」

 少し息を弾ませながらの明るい声。
 「嬉しい!」と間髪を入れずに俺の腕に抱き付いてきた。

「おいおい、どうしたんだよお前は。大胆な奴だなぁ」

 まだ返事をしていないのになと思いつつ、わざとおどけてそう応える。

「えへへ〜。でも、もう誰も居ないから大丈夫だよ」

 そう言われて見回すと、確かに残っているのはオレたちだけになっていた。他の連中はいつのまにか帰った様だ。
 その事には気付かず、こいつが開ける戸の音にだけ敏感になっていた自分に思わず苦笑する。
 再び傍らに目を向けると、相も変わらずしっかりとオレの腕に抱き付いたままニコニコと嬉しそうにしている姿がそこにあった。

『私、幸せだよ』

 少し前にそう言われた事が、ふと思い出される。
 一年以上を経て、こいつとの恋人としてのつきあいにもすっかり慣れたと思っていた矢先に言われたその言葉。それを聞いた時、正直オレはドキッとしていた。
 そして、その時ようやく自分の中ではっきりと何かを掴めた様な、暖かな感覚に身を包まれるのを感じていた。

『この笑顔をいつまでも守ってやりたい』

 キザで、本人にはとても恥ずかしくて言えない言葉だとは分かっている。だが、それはオレの偽ざる本心だった。
 それを気取られない様、オレは話題を振る事にする。

「それにしても随分と長かったな。木下先生に色々と聞かれたのか?」

 オレたちの担任は木下綾子という四十を越えた女教師になっていた。
 ふっくらとした感じの温厚な女性で、教え方の秀逸さもさる事ながら何事にも親身になって接してくれるので、クラスでは男女を問わず絶大の人気を誇っている。
 正直オレも、最後の学年でこんないい先生が担任になってくれて本当にラッキーだと思った程だ。

「うん、色々とお話してたの。進路の事もそうだけど、勉強の事とか普段の生活の事とか。どっちかって言うと雑談が多かったかな。木下先生って本当に優しくていい先生だね。そうそう、あの先生って結構バラエティの番組好きでよく見てるんだよ。昨日見た番組の内容で二人で大笑いしたりして...あ、浩之ちゃんが待っててくれてるの分かってたらもっと早く帰ってきたんだけど...」

 そんな少し申し訳なさそうな表情を見て、オレは笑いながら言った。

「別に約束してた訳じゃねーんだ。気にする事は無いさ。それよりも進路の方はどうだったんだ?」
「うん。今のペースをもう少し上げれば大丈夫だって。最近よく勉強してるみたいですねって褒められちゃった」

 ペロッっと少し舌を出して嬉しそうにそんな事を言う。
 なんだか、オレの時と大分違うな。

 『藤田クン。勉強の方、最近努力している様だし、学力もメキメキ向上しているのは確かだけど、この希望だともっともっと頑張らないと駄目よ』

 そう言われたんだっけ。それでもその後に『その心掛けは百点満点ね』って褒めてくれたんだよな。
 小学生を褒めるみたいだなとは思ったが、その事が素直に嬉しくて、オレは『ありがとうございます』と自然と頭を下げていた。
 今までの担任にはそんな素直な言葉は一度たりとも言った事の無いオレだったが....
 単に女性だからというだけでは無い、人間的魅力に溢れた人だからこそなんだろうな。

「それでね、その先生から私、プレゼント貰っちゃった」
「プレゼント?何だそれ?オレはそんなもの貰わなかったぜ?」
「それは浩之ちゃんの面談が先だったから。だから私が貰ったの」
「??ますます分からんぞ?」
「えへへー」

 いかにも嬉しそうな表情をすると、目の前でクルッっと身体ごと後ろを向いて軽く背延びの仕草をした。後ろ手にしてリズムを取る様に爪先立ちを繰り返す。
 お得意の一つである「どうっしよっかなー」のポーズだ。

「別にいーや。知りたくもねえ」

 ワザとそう答えて立ち上がると、「え?」と慌ててこちらを向いてすがる様なまなざしをした。その表情は『聞いてくれないの?』という気持ちで溢れている。
 オレは可笑しくて思わず笑い顔となった。それを見て彼女はプーっと頬を脹らませる。

「もぉー、浩之ちゃんのいじわるぅ」
「よくゆーぜお前は。まあいいや、聞いてやるから話してみな」

 そう言ってオレは再び机の上に腰を落ち着けると、彼女の方に目を向けた。
 相変わらず立った姿勢のまま、ちょっと口を尖らせる仕草をするあかり。けど、直に優しい笑顔になってオレを見つめ返してくる。

 ザァアアアアア....

 雨の勢いがさらに強くなった様だ。
 すっかり薄暗くなった教室に残るのは、オレたち二人だけ。
 一人だったら耐えられないだろうこの寂しさも、こうしていると何ともいえない嬉しい気分になってくる。
 その気持ちは彼女も同じなのだろう。雨音混じる静かさを楽しむかの様に、そんな勿体振りを見せている。
 つま先立ちしたり、戻したり、そんな同じ事の繰り返し。
 やがて、そうしたまま嬉しそうに話しを始めた。

「進路の話しになった時ね、木下先生、私の希望欄をしばらくジーッっと見てこう言ったの。『そうですか。これで理解出来ました。そういう事だったんですね。これは藤田くんと話し合って決めたのですか?』って。見比べた訳じゃないんだよ。浩之ちゃんの進路希望をしっかり頭の中に覚えていたみたい。凄いよね」
「......」
「私、一瞬返事に詰まったんだけど、素直に『はい』って言ったの。そうしたら先生、何て言ったと思う?」
「...大変だぞとか、苦労するぞとかじゃないか?」
「うん、『正直言って、楽な道ではありませんよ』って。一緒に合格したいなら頑張る事は当然としても、頑張り過ぎる事は無いって。それを聞いて私、少し不安になっちゃったの。浩之ちゃんと何度も話し合って決めた進路だけど、本当に大丈夫かなって。高望みしすぎているんじゃないかなって」
「........」

 実際、彼女の言う通りだった。
 今の学力では、かなりな背伸びである事は互いに解っていた。
 希望したい大学、希望したい学部、そして二人で歩みたい道。
 駄目だった時の挫折は考えないと言ったらウソになる。二人とも駄目な場合はまだ救いがあるかもしれないが、片方にだけ道が開けて片方は駄目だったという事が無いとも限らない。
 そうなった時、それでもオレたちは決めた目標に向かって一緒に進んでいけるのだろうか?
 その事については、二人で何度も話しあった。それこそ何度も何度も。将来の事でこんなにも真剣に話し合った相手は他には居ないと言える程に。
 しかし、結局は結論など出なかった。そして、最後に二人で導きだした一つの答え....

 それでもやってみたい。
 それは、オレたち二人が同じ希望を持って進んでいきたい道なのだから。

「....そうしたらね、先生、立ち上がって私の側まで来てからこう言ったの。『それでも、それはあなたたちが何度も話しあって決めた事なのでしょう?』って。今度は私、直に『はい』って言ったの。そうしたら、先生、ニコッって笑ってこう言ってくれたの」
「.......」
「『神岸さんに、私から特別にプレゼントをあげます』って。そして『後で藤田くんにも分けてあげなさい』って」
「オレに?分けるって?」

 なんだ?食い物でも貰ったのだろうか?そんな事をボーっと考えるオレ。
 ...しまった!んな訳ねーじゃねーか!
 馬鹿な考えをと思うオレのそんな様子を察したのだろう。すかさず言葉が返ってきた。

「食べ物じゃないからね」
「う、うるせーな!そんな事考えてねーよ!」

 クスクスクスクスクス。
 彼女は『浩之ちゃんたら』という目を向けて笑い続けている。
 笑われて少しバツが悪くなったオレは、慌てて先を促した。

「それで、その先はどうなったんだよ」
「うん、それでね、『手を出してごらんなさい』って言うから右手の掌を上に向けて出したの。そしたらフフッって笑われて『縦にしてごらんなさい』って言われて直に縦にしたの。そうしたら先生、握手をするかの様に私の手を優しく握ったかと思うと、もう片方の手でそれを包む様にしたの」
「..........」
「そして、こう言ってくれたの...『一人では挫折してしまう事でも、二人一緒ならきっと乗り越えられます。望みが叶うその日まで、とにかく二人で一生懸命頑張りなさい。あなたたち二人ならきっと出来る。私は信じています』...って。凄く優しい笑顔で...」
「.........」

 一人では挫折しても、二人ならきっと....

 心の中が、次第に暖かいもので満たされていくのを感じていた。
 それと共に、これまでの事が色々と思い起こされた。
 二人で決めた事。本当に出来るのだろうか?この選択は正しかったんだろうか?
 いくら二人で話し合っても、その不安は完全には拭いきれなかった。
 正直、不安で仕方が無かったのだ。

「二人ならきっと出来る...そう言ってくれたのか?」
「うん。嘘は言わない先生だもの。きっと本当だよ」
「そうか」

 今、オレたち以外の人が励ましてくれている。例えそれが担任であっても、心からそう言って貰える。
 その事が、こんなにも嬉しいものだったとは.....

 サアアァァァァ....

 一時の強い雨はすっかり静まっていた。
 外の喧騒もいつの間にか消え、聞こえるのは包み込む様な雨の音ばかり。
 すっかり落ち着きを取り戻した、教室という寂しげな空間。
 そんな静けさが、今はとても暖かく感じられた。

「...責任、重大だな」
「うん、先生もきっとそう思って貰おうと考えたのかもしれないね。私たちがこれからも頑張れる様に」
「ああ、きっとそうだろうな」

 もう一つ、オレが嬉しかった事。
 先生が、オレたち二人の仲を認めてくれた事。同級生からではない、教師という大人から認めて貰えた事。
 それは、頑張れと言ってくれた以上に嬉しい事だった。
 だが、それに胡坐をかいている訳にはいかないだろう。それはあくまで今の心掛けを保って行動していればこその事だ。
 それを無くしてしまったら、そう言ってくれた事は何の意味も持たなくなってしまう。
 こっちの方も重大だなと、オレは心の中で考えていた。

「浩之ちゃん、プレゼント分けてあげる。手、出して」

 言われてオレは右手の掌を上にして出した。彼女はクスッと笑うとその上に人差し指でのの字を書く。
 思わず手を引っ込めるオレ。

「くすぐったい。やめろ」
「もー、分かってるくせに。浩之ちゃん素直じゃないんだから」
「お前も少しはツッコミ入れろよ。ボケてるオレが馬鹿みてえじゃねえか」
「クスクスクス。浩之ちゃんごめんなさい。今度勉強しておくね」

 このやろ!とチョップのマネ。それに対するゴメンなさいのポーズも相変わらずだ。

「それじゃ改めて。浩之ちゃん、手...」
「みなまで言わなくても分かってるって、ほれ」

 今度は素直に右手を差し出した。それを待ち焦がれていたかの様に、彼女は自分の右手をスッっと重ねてくる。
 柔らかい温もりが掌一杯に伝わってくるのがわかる。
 次にはそうした右手を左手で、そっと優しく包み込んだ。

 暖かいなあ......

 握り馴れた彼女の手。そうであるにも関らず、オレは少しドキドキしていた。
 ふと思い、自分の左手を彼女の右手に重ねてみる。一寸驚いた顔。互いの両手を握りあっているそんな姿。
 少しだけ小首を傾ける仕草をすると、やがて真っ直ぐにオレを見て、ゆっくりと言葉を唱えていった。

「一人では挫折してしまう事でも、二人一緒ならきっと乗り越えられます。望みが叶うその日まで、二人で一生懸命頑張りましょう.....浩之ちゃん、これからもよろしくね」
「ああ、こちらこそよろしくな。お前からのプレゼント、確かに受け取ったぜ」
「ふふ、私じゃなくて木下先生からだよ。でも間接だから半分位私のかもしれないね」

 いつしか互いに笑いあっていた。誰も居ない教室の中に、二人の笑い声が響きあう。
 やがて手を解いたオレたちは、そのままスッと身を寄せ合った。
 胸元に、静かに寄せる髪に手を添えて、甘く優しい香りを胸一杯に吸い込んでみる。

 サァァァァァァ....

 雨の音に包まれながら、ここが教室だという事も忘れ、オレたちはいつまでも静かに抱き合っていた。

「...マジでさ、最後の高校生活を充実したものにしていこうぜ。勉強もそうだけど、遊びも含めて一生懸命にさ」
「うん。たまには息抜きも必要だものね。でも浩之ちゃん、去年みたいに遊んでばかりじゃ駄目だよ」
「分かってるって。それに今年はしっかりしたお目付け役が居るじゃねえか。大丈夫だよ」
「お目付け役って私?浩之ちゃんまた私を頼りにして〜」
「いいじゃねえか。本当頼りにしてっからよ」
「でも、もしかしたら今年は分からないよ〜。お目付け役の方から遊びに行こう行こうって言うかもしれないよ〜」
「そうしたら今度はオレがお目付け役だ。いやまてよ、そうなると歯止めが無くなるから去年と同じに心置きなく遊びまくれるじゃねえか。そうは思わねえか?」

 クスクスクス
 アハハハハハ

 互いに身体を離すと、再び笑いあった。こんな他愛ない事でも笑えてしまうんだから、恋人同士って不思議だ。

「よし。それじゃ帰るぞ、あかり」
「うん」

 返事をしたかと思うと、パッと帰り支度を完了させるあかり。そして教室を出ようとするオレの腕に素早く抱きつくいてくる。

「本当に大胆な奴だなあ。まだ校内だぜ?」
「この時間だもの、もう誰も居ないよ。それに....」
「それに?」
「...別に、見られてもいいかなって」

 そんな言葉にペロッと舌を添えて、嬉しそうな顔をするあかり。
 そんな表情に笑って応えるオレ。
 この調子では、腕を組んだまま一緒に登校しようと言う日もそう遠くは無いのかもしれない。そうなったら少し嬉しい反面、それ以上に困る事になるかもしれないが...
 そんな事を考えつつ、二人で教室を後にする。

「忘れ物は無いな?」
「うん。大丈夫」

 戸を閉めようとして、ふと思い立ち、中を見回した。
 すっかり灯の落ちた教室は、さっきまで二人で居たとは思えない程寂しい空間となっていた。
 一人では居たく無い場所だし、そもそも居ようとは思わないだろう。

 一人ではとても居られない。だが....

「どうしたの?」
「あ?ああ、こんな寂しい所、一人じゃとても居...」

 言いかけてオレは口を閉ざした。そんな事、改めて言う必要も無いじゃねえか。
 一人でいる事の寂しさ.....それは二人になってから、初めて自分の中で実感出来た感覚だった。それだけに、今の自分には再び一人になってしまう事への恐れの様なものを感じている。
 だからと言って、それをあえてあかりに伝える程オレは正直者ではない。
 見栄でも何でも無い。格好付けでもいい。こいつの前ではいつでもピシッとした男でありたい。
 ただ、それだけだ。

「何でもねえ。大した事じゃないさ。さて、それじゃ帰るぞ」
「.....」

キュッ

 再び戸を閉めようとした時、オレに抱き付く力が急に強まった。

「何だ?」

 言うと同時に、オレはそちらに顔を向ける。そして、そのまま目が離せなくなった。
 珍しく真剣な面持ちのあかりがそこに居たからだ。心の中をも貫き通すかの様に、オレの顔をジーっと見つめたまま放さない。
 どうした?
 そんな言葉が出る前に、あかりはゆっくりとオレに言った。

「二人一緒なら大丈夫だよ。絶対に。私はそう思うもの。浩之ちゃんもそう思うでしょ?」
「あかり...」

 そんな彼女に一瞬気押されオレだったが、直ぐに理解し、返事を返した。

「あったり前だ。こんなにやる気になってんだぜ?駄目だなんて事があってたまるかよ!」
「うんうん。そうだよ。きっとそう」

 互いを鼓舞するそんな言葉。
 あかりをしっかり見つめると、前の表情がウソだと思える程の笑顔をバッチリ取り戻していた。オレもつられて笑い返す。

 ....やれやれ。まったく大した奴だぜお前は。

 さばさばした気持ちとあかりの温もり。
 そのどちらをも一杯に感じながら、オレは雨の音に包まれるだけとなった教室の戸をゆっくりと閉めた。




                     −   了   −









あとがき


 どうも、TASMACです。本日は「雨の日に」を読んで頂き、まことにありがとうございます(^^)。
 10,000Hit記念として作成したこのSS、当初より大幅に遅れてしまい、待ちくたびれてしまった方が多かったかもしれませんね。
 それでも少しづつ時間を作って、ようやく一つの節目としての作品を完成させる事が出来ました。今は少しホッとしています(^^)。
 作品としてはこれまで発表したものと比べて短めですが、一つのエピソードとしては丁度良い長さかなと感じています。よろしければ感想を聞かせてください。お待ちしています。
 さて、ここで鋭い方は次の様に言われるかもしれませんね。

「オマケは今回も無いのですか?」

 はい、今回もありません(^^;)。ですがこれには理由があります。
 実は、この作品の流れに添った話しを現在構想中でして、季節も丁度今(現在6月)ですので、オマケもそちらに集約させてもらおうという魂胆です(^^;)。
 話しとしては続き物では無く、前回の「とある日の二人」と本作品の関係よりもさらに独立した話しとする予定です。
 ですから本作品を読んでなくても大丈夫ですよ..って、ここを読んでいる人には関係無い話しですね(笑)。
 これまでとは少し雰囲気の変わった話しとする予定ですので、よろしければまた読んで頂けると幸いです(^^)。


[トップメニュー] <-> [二次小説の部屋] <-> [雨の日に]

作者へのメール:tasmac@leaf.email.ne.jp (よろしければ感想を送ってください。お待ちしています(^^))