新プリがやってきた〜室内篇

一体何冊プリウス関係のクルマ雑誌を購入したことだろう。納車まで随分長かったものだ。しかし時は流れ、ようやくにして納車の日がやってきた。いよいよ新型プリウスとのご対面である。

先代のプリウスが納車されたときは、随分背の高いへんてこりんな「猫バス」みたいなものがやって来たなと思ったのだが、今回は恐ろしくきれいなブルーのどう見てもかっこいいクルマがやってきた。先代の猫バス感覚のスタイルは、それはそれでしばらくすると非常に人なつっこくて良いデザインであったが、今度の新型は最初から文句無くカッコイイのである。やはりカッコイイに越したことはない。クルマのサイズも、実際に自分の生活の場に置いて見るとショールームで見た時より、かなり大きくなったような気がする。明らかに車格は上がっている。

色の方はと言うと、太陽光の下で見るのは初めてであったが、予想以上に幻想的な青色で大満足である。ちなみに今回も前回同様ペイントシーラントを頼んでおいたが、この輝きは5年間保証されるとのことである。ペイントシーラントもこの数年で随分進化していて、5年間も保証が付くようになった。以前と違うのは、年一回行うメンテナンス用の薬剤と専用セームがついてきた事である。また、ワックス無用のステッカーがリアウインドウに貼られていた。ほとんどのワックスはある程度研磨剤が入っているので、シーラントを削ってしまうらしい。営業の方によれば洗剤を使用した洗車もしない方が良く、洗車は水のみで行うように指導された。それで5年間も輝きが維持されるというのも、はっきり言って驚きである。

しかし、なんと言っても驚いたのはやはり車の性能と装備。この点でも車格が明らかに上がっている。値段は同じ様なものなのにである。インパネも当初は「この非対称性はなんとかならんか」と思ったが(実は先代のプリのインパネの持つ対称性にも当初違和感を持っていた)、実際乗っていると高級感があって良い感じに見えてくるから不思議だ。

非対称性と言えば小さい頃読んだブルーバックスの一節(たしか素粒子のパリティの非保存の箇所だったと思う)に、非対称の美しさの代表例としてフランスのシャルトル大聖堂のことが載っていたことを思い出した。人間は基本的には対称性を美しいと思うのだが、場合によっては非対称性が印象的に美しく見えることがある。シャルトルの大聖堂は、南塔(正面右側)は12世紀に完成、同時期に完成した北塔は焼失後1513年に再建されたため、実に非対称な構造を取っている。しかも建物の造形には随所にゴシック以前のロマネスク様式が取り込まれていて、まさに旧世代と新世代のハイブリッドな美しさである。

私は10年ほど前にシャルトルの大聖堂に行ったことがあるが、その時は「バラ窓」などの一連のステンドグラスにも感嘆した。シャルトルのステンドグラスは中世のものがそのまま数多く残っていて、現在では再現できないと言う「シャルトル・ブルー」と呼ばれる大変美しい深い青色が特徴である。(ちなみに青はフランスでは王家や貴族の色であり、大変高貴な印象がある。)ちょっと無理矢理なこじつけという感じもしないではないが、「新旧のハイブリッド」、「非対称性」と「深い青色」の3つのキーワードで、シャルトル大聖堂と新型・青プリウスと妙な結びつきを持っている。

装備品についても、少なくとも初代で見られたプラスチッキーな感じや見切りの悪さなどは大幅に改善されている。一つ一つの収納スペースなどもよく考えられており、実際使い勝手もかなり向上していて便利である。また、以前はそれこそ「身も蓋もないほど素っ気ない」小物入れの蓋なども、新型ではみなダンパーがジワッとゆっくり開く。バニティーミラーなんかも、スライドしてあけるとフッとライトがついたりする。そう言うところ一つ一つが結構こだわりを感じる。

しかし、初代の時もそうだったが、最初はダサイ(またしてもデザイナーの方失礼!)と思っていたのになんだかんだ結構気に入ってしまうようになるとは、相変わらずプリウスの乗り手に対する教育効果は大したものである。

シートのクッションは以前よりも堅めであるが、これはおそらく前よりも良い。先代のシートクッションは大変優れていて、長時間のドライブでも全く疲れなかったが、それは今回より進化している感じだ。固めではあるが、シート全体が体を包み込んで広い面積で支える様になっており、腰を下ろしてもへたっとなる感じがない。またシート表皮のビロードのようなファブリックは大変触り心地が良くなっている。最近のトヨタ車のシートは随分良くなったと聞くが、どうやらツボを押さえつつあるような気がする。

着座位置の調整をすると多少難のあるようだった前方視界の問題は気にならなくなる。ただしボンネットは全く見えないし、フロントコーナーはどこにあるのか全く分からない。私はオート式のコーナーポールをオプションで付けたが、これは大変重宝している(夜ブルーに光って大変美しい)。実際はフロントオーバーハングが少ないので、前の見切りはそれほど心配する必要がないようだ。また、Aピラーが太めでかなり寝ているので右折時の巻き込みなどを心配していたが、意外なことに旧型より寝ていることとウィンドシールドが先代より前にあることが幸いし、右折時には歩行者などが見やすいような気がした。もっともこの点は議論が分かれる点である。前方のサブウィウンドウは面白いアイデアだが、少なくとも右前のウィンドウからはほとんど何も見えず、左側だけがかろうじて意味があるようだ。

良く問題にされる後方視界の方はと言うと、皆さんの印象とは異なり「以前より良いじゃなか!」と言うのがひねくれ者の私の正直な感想である。これはバックミラーがワイドになったことも関係がありそうである。加えて、サイドミラーの見え方も前より良い気がする。これに加えて、バックモニターがついているので、後ろの視界については実際はほとんど問題ないだろう。ネットの掲示板(2ちゃんねる)などで色々書かれているが、たいていはやや大げさに書いてあるものだ。もっとも人それぞれ印象は違うだろうから、試乗車などで自分の目で確認するのが一番である。

後部座席はレッグスペースが著しく広がった。外人を先代プリウスに乗せたことが何回かあるが、彼らは基本的に足が長いためかヘッドスペースよりレッグスペースが窮屈そうだった。今回の改良ではこういう外人さんにとっては朗報だろう。ここら辺が今回のモデルがグローバル・マーケットを意識している事を端的に示していると思う。ただし、コメを食って生活する我々日本人はどうしても胴長なので、ヘッドのクリアランスが多少少ないと感じる場合もあるかも知れない。一番の問題点は、ハッチバックのヒンジ部分がちょうど後部座席の頭部の上にあり、これがスペースを圧迫していることである。アップライトに姿勢を正しくすわると、頭のてっぺんに触る感じがする。しかし、筆者が教える若い院生やポスドクの座高を測定すると、身長190cm近い男でも92-3cmぐらいだった。これは筆者のような40代以上の方々の標準的な座高だと思われる。したがって、最近の若い人にとっては外人同様それほどヘッドクリアランスが問題にならないのかも知れない。実際カタログデータではヘッドクリアランスは1cm程度減っているだけなので、そんなに問題ないはずなのだ。また、後部座席に普通に楽な姿勢で座れば、ヘッドクリアランスの問題はほぼ気にならない。その分足元に余裕があるからである。さらに言えば、これよりもっとヘッドスペースが窮屈なクルマはそれこそ掃いて捨てるほどある。個人的には、この点を持ってして他の魅力が失われることはないと思う。

エレクトロマルチビジョン(以下EMV)は以前より大きくなって見やすくなった。ただカーナビ画像の解像度とのマッチングが今ひとつのようで、少し字などがぼけて見える感じがする。先代のEMVよりも上部のオーバーハングが少なく、傾斜の強いフロントウィンドシールドと相まって、太陽光が差し込むとやや見えにくくなり易い。それを防ぐためか、ウィンドシールド上部のバックミラー付近にサンシェード・ドットらしきものがプリントされている。これはなんかちょっと取って付けたような感じがしないでもない。

スピードメーターはもはやセンターメータとは言えず、やや運転席よりにシフトした位置に配置されている。明るいときによく見ると、2回ほどモニター画面を反射させて投影しているようだ。これによって焦点がかなり遠くなり、運転中自然な感覚で視線移動ができるようになっている。

シフトノブは小振りだが、大変扱いやすい。ただ旧プリに慣れきってしまっているので、慣れるまでついついシフトのつもりがワイパーを動かしてしまった。楕円形のステアリングは意識しないと楕円に見えない程度である。しかし大きさが前より小さくなって、操作しやすい感じになった。また、ステアリングに設置された種々のスイッチは良く厳選されていて、大変重宝する。少なくともこれだけでかなり事故の確率が減るはずだ。

次回ももう少しインテリアや収納について書いてみたい。

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