なんとひょうきんな!

付属品まで値引きなし...(T_T)

「お客様のプリウスは、すでに組立に入っておりますので、ひょっとすると97年中に納車できるかも知れません。」との電話が、大泉の東京トヨタから入った。組立に入ったことまで連絡を受けるとは、プリウスはオーダーメイドのクルマみたいである。

これはまた、予想外の早い展開である。プリウス納車までに、愛車パルサーを誰かに譲る手だてをつけるはずだったが、とてもその時間はない。仕方がないので、思っても見なかった2台の車のオーナーになる決心をした。

次に焦ったのはオプション注文である。納車まで3ヶ月以上もかかりそうだというので、オプションも後回しにしていた。当初の希望では、CD、VICSユニット、フォグランプ、リア・サンシェード、ノースモーカーズ・ボックス、コーナー・ポール、100V電源ソケット、などをつける予定でいた。

しかし、担当者さんと交渉の結果、またもや値引きが認められなかった。プリウスの商談は本当に渋い。最終的には、CD、VICSユニット、フォグランプ、コーナー・ポールのみ注文した。合計金額は290万円を超えたのに、全く値引きもなしではさすがにトホホである。2000円ほどのノースモーカーズ・ボックスを粘っておまけしてもらった。2000円ぽっちではあるが、一応カタルシスは解消された。

ちなみに、私のプリウスは、ダークブルー・マイカメタリックという舌をかみそうな名前の色で、チャイルドシート付きのナビパッケージである。

ひょっとして...

実際に納車になったのは、残念ながら1月の末になってしまった。管直人が私の少し前に納車になったそうなので、政治家に先に回したのではないかなどと勘ぐってしまう。

納車日を決めることになって、担当者の人が家にやってきた。納車は1月25日の日曜日となった。ここのトヨタは、納車は出来るだけオーナーが在宅の日曜日で、しかもクルマがよく見える午前中から3時ぐらいまでと決まっているようだ。さすが、指導が行き届いている。日産・スバルでは勝手にクルマをおいていき、その場でチェックなどできたものではなかった。

もう一つ驚いたのは、この担当さんがこれから数件、ユーザーのクルマのチェーンを外しに行くと言ったことである。実は、この日の2日前ぐらいに大雪があり、多くのクルマがスタックしたりしていた。なんとトヨタでは、ユーザーがチェーンがつけられないとなると、JAFの代わりに飛んでいき、チェーンをつけるらしい。チェーンがつけられないやつは、当然ながら外せもしないので、その場合もれなく外しにも行くわけである。恐るべしトヨタ営業マン。こうやって地道に固定客をつけてきたのである。

さて、待ちに待った納車の日である。約束の時間になって、私は営業さんがプリウスに乗って来るであろう道に出て、待ちかまえることにした。モーターファン別冊では、「プリウスは営業所まで取りに行くのが原則」と書いていたが、持ってきてもらえるようである。

そうこうする内に、なにやら紺色のすっとんきょうな乗り物が音もなくスーッとこちらに近づいてきた。

「ひょっとして、あれか!」

私は、この時実は自分の買い物が失敗だったのではないかと思った。あまりにプリウスが「ひょうきん」だったからである。「ひょうきん」と言う表現が正しくないとすれば、腰高で何ともずんぐりむっくり、「となりのトトロ」の「猫バス」みたいなクルマにみえた。

あらゆるメディアを駆使して集めた平面画像と、モーターショウでの一瞥瞬間画像からから、プリウスの立体画像を日夜脳内で再構成していた私であったが、この時その作業の成果がガラガラと崩れていくのが判った。

町中で見るプリウスは、モーターショーで見るものとは全く異なるものだった。今思えば理由は簡単である。モーターショーでは周りはほとんど現世離れしたモデルカーが多いが、日常世界は旧態依然としたクルマであふれているからである。プリウスのデザインは、天上界からいきなり地上界に舞い降りたのだ。

さらにいえば、ダークブルー・マイカメタリックという舌をかみそうな名前の色が、イメージしていたより地味だったのが何とも残念だった。イメージでは、VWゴルフのダークブルー・マイカのような、若干ビビッドなものを期待していたのだ。

しかしこのあとは、ひたすらプリウスの実力に敬服することになるのである。

(続く)

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