画像データここでは、電子図書館を構築するための基礎知識として、静止画の画像データを取り上げます。
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名称 | 解説 |
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48ビットカラー | 赤緑青をそれぞれ65,536階調(16ビット)で混色して281,474,976,710,656(約281兆)色を表現します。 |
32ビットカラー | フルカラー(Full Color)や、トゥルーカラー(True Color)と呼ばれており、赤緑青をそれぞれ256階調(8ビット)で混色して16,777,216色を表現します。残りの8ビットの使い方はソフトウェアによって異なります。 |
24ビットカラー | 32ビットカラーと同じく、フルカラー(Full Color)や、トゥルーカラー(True Color)と呼ばれており、赤緑青をそれぞれ256階調(8ビット)で混色して16,777,216色を表現します。人間が認識できる色は各色256階調以下ですので、24ビットあれば十分自然なカラー画像を表現することができます。自然なカラー写真等に最も一般的に用いられる色諧調です。 |
16ビットカラー | Windowsでハイカラーと呼ばれており、赤と青をそれぞれ32階調(5ビット)、緑を64階調(6ビット)で混色して65,536色を表現します。 |
15ビットカラー | Macintoshでのハイカラーで、赤緑青をそれぞれ32階調(5ビット)で混色して32,768色を表現します。 |
8ビットカラー | 8ビットカラーは、フルカラー(16,777,216色)の中から任意に抜き出した256色のをカラーパレットを参照して画像を表現します。インデックスカラー(Index Color)やパレットカラー(Palette Color)とも呼ばれます。任意に抜き出す色がOSやペイントソフトによって多少異なるため、同じ256色カラーの画像でもOSにより違う色で表示されます。 |
256色カラーパレットの例
256色では中間色を表現できないため、グラデーションを表現する場合、ディザ法で表示します。
十分な色諧調を有する画像をディザ処理なしで表示すると、色の境界部分の表示はなめらかです。
色諧調が少ない画像をディザ処理ありで表示すると、色の境界部分を近づいて見た時に、異なる色の粒子が入り混じっているのが分かりまます。しかし、離れて見ると、目の錯覚によりディザ処理なしとあまり変わらないようなグラデーションに見えます。
表現可能な色領域のことを色空間(Color Space = カラー・スペース)と呼びます。色空間には、次のようなものがあります。
Adobe RGB(アドビアールジービー)は、Adobe Systems社が1998年に発表した色空間で、sRGBやCMYKよりも色再現領域が広く、DTPなどに多く用いられています。
CIE L*a*b*(シーアイイーエルスターアイスタービースター、シーラブ = CIE Lab、正式にはCIE 1976 L*a*b*)は、国際照明委員会(Commission International d'Eclairage = CIE)が1976年に定めた色空間で、人間の可視領域内の全ての色を表すことができます。同委員会が1931年に発表したL*a*b*(またはLab)を改定したものです。L*は明度、a*は赤~緑の色相、b*は黄~青の色相を意味します。
CMYKは、商業印刷で標準的に用いられる色空間で、色再現領域は概ねRGBより少し狭いです。
sRGB(エスアールジービー;standard RGB)は、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission = IEC)が1998年に策定した国際標準規格(sRGB IEC61966-2.1)です。色再現領域は狭いですが、一般的なモニタ、プリンタ、デジタル・カメラなどが準拠しています。
YCbCr(ワイシービーシーアール)は、ビデオ信号などに用いられることが多い色空間で、色情報を「輝度(Y)」、「青と輝度の色差(Cb)」、「赤と輝度の色差(Cr)」の3つの要素の組合せで表します。輝度は明暗の度合い(明るさ)を意味します。色の変化よりも明るさの変化に敏感であるという人間の目の特性を利用し、輝度に多くの情報を割り当てることにより、少ないデータ量で色を表現します。
同じ画像も、色空間が異なれば異なる色で表現されます。また、機器によって色空間特性が異なるため、モニタで表示した画像の色とそれをプリントアウトしたものの色が異なるなどの事象が発生することがあります。これを防ぐために、異なる機器間で表示色の統一を図る仕組みをカラー・マネジメント(システム)(Color Management (System) = CMS)と言います。
カラー・マネジメント・システムは、ICC(アイシーシー;International Color Consortium = 国際色協会)が策定したものが標準となっています。具体的には、ICCプロファイル(アイシーシプロファイル;International Color Consortium Profile)と呼ばれる個々の機器の色空間特性を記録した定義ファイルを用い、PCS(ピーシーエス;Profile Connection Space = 接続色空間)と呼ばれる機器に依存しない色空間を介して、機器間の色の違いを調整します。例えば、モニタのICCプロファイルを、CIE L*a*b*などのPCSに変換(補正)し、プリンタが自身のICCプロファイルを元にそのデータを変換します。
なお、機器固有の色空間のことをデバイス・ディペンデント・カラー(Device Dependent Color)、機器に依存しない共通の色空間をデバイス・インディペンデント・カラー(Device Independent Color)と言います。
ポイント
デジタル画像に現れる、撮影対象には存在しない色を偽色(False Color)と言います。偽色は、CCDなどのイメージ・センサが光を正しく分離認識できないことにより発生し、ざらつき感などとなって現われ、画質を損なうノイズとなります。縞模様や格子模様に虹色で、暗い部分や光源の周辺に青や赤紫で発生する傾向があります。偽色の抑制には、低域周波数のみを通過させるロー・パス・フィルタ(Low Pass Filter)を用いる方法などがあります。
ビルの窓に斜めの偽色が見られる
背景の暗い部分に偽色が見られる
画像データを保存するためのファイル形式には様々なものがありますが、よく用いられるものを紹介します。
※下記表のビット数に関しては、「モノクロとグレースケール」および「カラー」の項目を参照してください。
BMP/DIB(ビットマップ、ビーエムピー;Microsoft Windows Device Independent Bitmap)はMicrosoft社が開発したWindowsの標準的な画像形式で、拡張子は.bmpや.dibです。DIBという画像形式もほぼ同じ構造です。RLE(アールエルイー;Run Length Encoding)という可逆圧縮方式を採用しています。最大ビット数は24ビットです。
EPS(イーピーエス;Encapsulated PostScript File)は、ポストスクリプト・プリンタと呼ばれる高品位プリンタを対象にした画像形式で、拡張子は.epsです。最大ビット数は24ビットです。
GIF(ジフ、ギフ;Graphics Interchange Format)は、アメリカのCompuServeというパソコン通信で開発された形式で、拡張子は.gifです。様々な機種のコンピュータで扱うことができ、小さいファイルサイズで保存できるため、データ転送などの通信用に適しており、ウェブサイト作成で標準的に用いられる形式のひとつです。最大ビット数が8ビットであるため、高画質な写真等ではなく、アイコンやイラスト等に用いられることが多いです。
87、87a、89aの3つのバージョンがあり、違いは下記の表のとおりです。
インタレースGIFは、最初はモザイクがかかったような状態で画像が表示され徐々に鮮明になる仕様のことで、透過GIF(Transparent GIF、別名:トランスペアレントGIF)は、透明色を指定して背景(色)と重ね合わせることができる仕様のことです。GIFアニメーションは、動画を表現できる仕様のことです。
バージョン | GIF87 | GIF87a | GIF89a |
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インタレースGIF | ![]() |
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透過GIF | ![]() |
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GIFアニメーション | ![]() |
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LZW(エルゼットダブリュー;Lempel Ziv Welch)という圧縮方法により1/3程度までの圧縮が可能です。
JPEG/JFIF(ジェーペグ;Joint Photographic Experts Group File Interchange Format)は、JPEGという組織が開発し1994年にISO/IEC10918として標準化された形式で、拡張子は.jpgです。非可逆圧縮方式を採用しており、1/5~1/30までの非常に高い圧縮が可能です。10分の1程度の圧縮率で保存すると人間の目では劣化が識別できないと言われています。これもウェブサイト作成で標準的に用いられる形式のひとつです。最大ビット数は24ビット(各色8ビット)です。
ベースラインJPEGと呼ばれる通常のJPEGの他に、インターレスGIFのような効果があるプログレッシブJPEG(Progressive JPEG)という拡張仕様もあります。
また、可逆圧縮方式を採用しているJPEG-LS(ジェイペグエルエス)という形式も存在していますが、あまり普及していません。
JPEG 2000(ジェイペグニセン)は、JPEGの後継技術として開発されている次世代の画像形式ですが、JPEGとの互換性はありません。拡張子は.jp2などです。機能ごとにパートに分けて規格化されており、2001年1月に基本仕様であるPart 1がISOの規格になったのをはじめ、いくつかの仕様がISOやJISとして規格化されています。最大ビット数は48ビット(各色8~12ビット)です。
しかし、ブラウザで表示するためにはプラグインをインストールする必要があります。
主な特徴は、下記のとおりです。
JPEG XR(ジェイペグエックスアール;Joint Photographic Experts Group eXtended Range)は、マイクロソフトが開発したHD Photo(エイチディーフォト、旧Windows Media Photo)を基に、2009年6月にISO/IEC 29199-2:2009として国際規格になったものです。拡張子は.hdp、.wdp、.jxrです。Windows Vista以降のWindowsに標準搭載されています。
JPEGやJPEG 2000と比較し、下記のような主な特徴があります。
PICT(ピクト;QuickDraw Picture)は、Apple Computer社が開発したMacintoshの標準形式で、一般的な拡張子は.pctです。ビットマップイメージだけでなくベクタイメージも保存できます。最大ビット数は32ビットです。
PNG(ピング;Portable Network Graphics)は、W3Cが推奨する画像形式で、拡張子は.pngです。GIFに替わるインターネット標準画像形式として今後使用されて行くと言われています。JPEGのように非可逆圧縮ではなく、256色しか発色できないGIFとは異なり、フルカラーをサポートしています。また、GIFと同じく透過やインターレースをサポートしています。最大ビット数は48ビットです。
主な特徴は、下記のとおりです。
SVG(エスヴイジー;Scalable Vector Graphics)は、W3Cが作成したベクタ形式の画像を作成するためのXML言語、または、SVGで記述された画像形式で、拡張子は.svgまたは.svgz(gzip圧縮)です。携帯端末用のSVG Tiny(エスヴイジータイニー;Scalable Vector Graphics Tiny)という規格もあります。
TIFF(ティフ;Tag Image File Format)は、Aldus社が開発した(現在はAdobe社が管理している)形式で、一般的な拡張子は.tifです。DTPでよく用いられ、印刷に出す画像に使用することが多い形式です。TIFFには様々なバージョンがあり、読み書きすることが困難なのが欠点でしたが、1992年に「TIFF Revision 6.0」という形式が発表され、これが現在の標準形式になっています。1つのファイルに複数の画像をまとめて格納すること(マルチ・ページ)も可能です。最大ビット数は48ビットです。
TIFFは非圧縮が基本ですが、LZWやZIP、JPEGなどの圧縮方式を採用することもできます。
TIFFには、モノクロ2階調用のTIFF-B、インターネットFAX用のTIFF-F、グレースケール用のTIFF-G、グレースケール(パレット使用)用のTIFF-P、RGBフルカラー用のTIFF-Rなどのクラスが存在します。
WebP(ウェッピー)は、2010年にGoogleが開発したオープン標準の画像形式で、拡張子は.webpです。ウェブサイトの読み込み時間の短縮などを目的として開発され、ウェブサイトで標準的に用いられているJPEG、GIF、PNGの置き換えを意図しています。PNGやJPEGよりも小さい容量で同画質の画像を作成でき、可逆圧縮されたWebP画像の容量は同画質のJPEGやPNGより25%程度小さくなるとされています。WebPは、可逆圧縮と非可逆圧縮の選択が可能で、透過やアニメーションをサポートしています。プログレッシブまたはインターレース表示はサポートしていません。最大ビット数は24ビット(各色8ビット)、最大サイズは16,384×16,384ピクセルです。
ポイント
元の情報を全く損なわずに復元できる圧縮方式を可逆圧縮(Lossless Compression、別名:ロスレス圧縮)と呼びます。一方、元の情報を完全には復元できない圧縮方式を非可逆圧縮(Lossy Compression、別名:ロッシー圧縮、不可逆圧縮)と呼びます。
画像や音声、動画などのファイルは、一般的にファイル・サイズが非常に大きいため、人間の視聴覚範囲を超える部分などを切り捨てることによって高い圧縮を行う非可逆圧縮を採用することが多くあります、
ポイント
デジタル・カメラは、CCD(シーシーディー;Charge Coupled Device)やCMOS(シーモス;Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのイメージ・センサから得られた電気信号をデジタル化し、その後に、ホワイトバランスや彩度の調整、圧縮などの加工を行って画像データを作成します。この、デジタル化しただけの加工前のデータをRawデータ(ローデータ)やRaw画像(ローガゾウ)と言います。
高性能なデジタル・カメラの多くは、Rawデータを12ビットの非圧縮または可逆圧縮のデータとして出力できるようになっています。デジタル・カメラからの一般的な出力形式であるJPEGと比べ、Rawデータは、より豊かな色階調を有したより高精細なデータであることが多いため、ホワイトバランス等の調整により発生する「白飛び」や「黒潰れ」がより少ない画像を作成可能であるなど、ユーザの好みに応じた自由度の高い加工が可能となりす。
ただし、このRawデータの形式はデジタル・カメラのメーカーや機種ごとに仕様が異なるため、加工にはそれぞれの形式に対応したソフトウェアが必要です。
画像のファイルサイズは使用されているピクセル数と各ピクセルのビット数で決まります。例えば800×600ピクセルの大きさ(A4サイズぐらい)の24ビットカラーの画像は800×600×24=11,520,000ビット=約1.4MBにもなります。通信で画像ファイルをやりとりするためには、できるだけファイルサイズを小さくするべきです。画像ファイルはそれ自体、通常1/2から1/4程度の圧縮機能を備えていますが、画像の大きさを抑えたり、色階層を低くする方法も有効です。先ほどの800×600ピクセルの画像を8ビットカラーにするだけで1/3の大きさ(800×600×8=3,840,000ビット=480KB)になります。
画像のサイズのに関しては「画像のスキャニング・サイズ」も参照してください。
ポイント
JPEGはファイルサイズを1/100程度まで圧縮できるだけでなく、ほとんどのWebブラウザで表示でき、24ビットカラーを扱えるのでインターネットで提供する電子図書館用の画像形式として最適です。しかし、非可逆圧縮方式ですので、画質の劣化に注意する必要があります。また、小さな画像は色階調の違いを見分けにくいので、8ビットカラーのGIF形式で保存するのが良いでしょう。
コンピュータや通信技術の進歩に応じて将来、画像サイズやファイル形式などを変更する必要が出てくることが予想されます。表示用とは別に、できるだけ高品質のマスター画像をCD-ROMなどに保存しておけばそのような時にマスターから再作成することができます。
JPEGは非可逆圧縮をおこなうので、品質の点で問題があり、GIFは24ビットカラーを扱えないのでマスター画像用には適していると言えません。TIFF形式などで保存するほうが良いでしょう(TIFFは、アーカイブ用としてDigital Libraries Initiativeが推奨している形式です)。
IIIF(トリプルアイエフ;International Image Interoperability Framework)は、世界中で提供されている画像リポジトリの相互運用性の向上などを目指している国際的な枠組みです。2015年6月には国立図書館、大学図書館などによりコンソーシアムが設立されました。次のような仕様を公開しています。
IIIFのAPI仕様は、アーカイブ機関によって異なる画像の操作方法(領域、サイズ、回転、品質特性の指定など)を標準化し、APIで扱えるようにするものです。それにより、1つのビューアーで複数のアーカイブ機関が提供する画像を扱うことができ、異なるアーカイブ機関の画像を比較するために並べて表示したり、画像にアノテーション(解題、コメント、フル・テキスト)を付与することもできます。このビューアは、誰でも開発することができ、既に無料・有料のものが複数存在しています。