〔 俺が隊長 〕
−act.10:ニコルの黒い野望−





こんにちは。
ニコル・アマルフィです。
今回は連載10回記念ということで、特別に僕がナビゲーターを務めますね。
どうぞよろしくお願いします。


アスランが戻ってきてからというもの、ここボルテールの艦内では毎日内乱が起こっています。
アスランとイザークは、アカデミー時代からどの課目でもトップ争いをしていたライバルです。
もちろん二人とも、僕が手を抜いていたことなんて、これっぽっちも知りません。
トップ10に入れば“赤”が着れるんですから、適当でいいんですよ。
それなのに、いまだに射撃は俺が1位だ、それ以外は俺が1位だ、と言い争う二人は、見ていて笑えますね。

僕を誰だと思ってるんでしょう。
ブリッツ破棄が明記された講和条約を書き換えさせた、ニコル・アマルフィですよ?
白服だろうが、フェイスだろうが、僕には敵わないんですから。


「ニコルーーーー。」
前方からとルナマリアが歩いてきました。
どうやら今日の訓練規定を終えたようですね。

「お疲れ様です。。ルナマリア。」
「おつかれー。ニコルはこれから何するの?」
の質問に、僕は心の中でニヤリとしました。
まったくタイミングがいいですね。
実はこれから行く先に、にはぜひとも来てもらいたかったんですから。

僕は二人にニッコリと笑いかけました。
「イザークとアスランとシンで、シュミレーションやってるんですよ。見に行きませんか?」
「行く行くー♪」
そうくると思ってましたよ。


案の定、この三人は実機でシュミレーションの訓練をしています。
シン・アスカはインパルス。
イザークとアスランはザクです。

それにしても平和って怖いですね。
あの機体の性能差をもってしても、今の“赤”は昔の“赤”に勝てないんですよ?
僕のブリッツと対戦したら、彼、間違いなく死んでいます。
平和って、こんなにも人から戦闘能力を奪うものなんですね・・・。
力がなくても赤が着れるなんて、僕の赤服が泣いていますよ。

「やっぱり強いよねー。イザークもアスランも。」
僕のとなりでが言いました。
前にルナマリアが言いましたけど、は量産機のスペシャリストです。
たぶん同じザクに乗っている今、イザークよりアスランより、が強いと思います。
戦争がおこらない限り、それを確かめる術はありませんけど。

。僕のブリッツに乗りませんか?」
ここで僕は、考えていたことを実行することにしました。
「え?ニコルのブリッツに?なんで?」
「見えている敵からの攻撃なんて、かわせて当たり前だと思いませんか?」

僕のブリッツには、ミラージュコロイドがあります。
僕はぜひあれを使って、に三人と戦ってもらいたかったんです。
ここ数日、はスペシャル機の毒に侵されています。
絶対に嫌とは言わないでしょう。

「なるほどねー。でもニコルの愛機なのに、乗っていいの?」
「遠慮するなんてらしくないですよ。楽しんできてください。」
「ありがとう!ニコル!」
思ったとおり、はうきうきとブリッツに乗りに行きました。

「あの、ニコル先輩?」
あとに残されたルナマリアが、僕におそるおそる聞いてきました。
「どうして先輩ご自身でなく、さんに行かせるんでしょうか。」
「だってあの三人が大好きなに殺られるところ、見たくありませんか?」

僕のセリフ、決して漢字の変換ミスじゃないですから。
目の前のルナマリアが白くなりました。
ミネルバの女帝になるには、まだまだですね。



結論からいうと、シンはもちろんのこと、イザークとアスランの機体もすべて、中破しました。
大破しなかったのは、の優しさでしょう。
(僕なら絶対大破させますけどね。)
残念な気持ちとともに、情けないですね。
昔の赤たちも、所詮はスペシャル機に踊らされていただけなのでしょうか。
それとも、今のこの平和が、あんな役立たずどもをつくりあげたのでしょうか。

とにかく、このままではいけませんね。
もれなくこのていたらくを、ラクス・クラインに報告です。
なんせ僕たちは、利害関係で結ばれた同志ですから。
そのあと、ボルテールがどうなるかなんて、僕は知りませんよ。


楽しめればいいんです、すべてはね。




   back / next


【あとがき】
 うっわー・・・。黒いよ、ニコル。
 こわいよう。
 でもなんか、これぞニコルの真骨頂!って気がしませんか?
 ・・・そんなのライナだけですか。