〔 俺が隊長 〕
−act.09:伝説のスーパーエース、アスラン・ザラ−





アスランは前大戦のあと、オーブにいた。
正確にいうと、大親友のキラ・ヤマト君に拉致されて、オーブへ連れていかれた。
オーブはその後、地球圏を統一し、支配していた。
表向き、国家元首はカガリ・ユラ・アスハであったが、実際政局を動かしているのは弟のキラ・ヤマト。
彼は国家元首補佐官という摂政の地位をにぎり、アスランをアゴで使っていた。

アスランはまず、このオーブから(正確にはキラから)命からがらプラントへ逃げた。
前大戦で身寄りをなくしていた彼は、とりあえず婚約者だったラクス・クラインを訪ねた。
どこか就職口を紹介してもらおうとしたのだ。

―――けれど、当然これが間違いだった。
ラクスは、おほほほほほほほほ・・・・・と、いつ終るかもわからないほど長く笑ったかと思えば、
アスランをザフトに復隊させたのである。(鬼)
「ザフトは今やわたくしのファンクラブ同然です。そこにいられることを誇りにお思いなさいな。」

まったく予期せぬ事態におちいり、パニックになったアスラン。
そんなことをお構いなしに、ラクスはフェイスバッジを与えた。
「あなたのご友人は今、白服を着られておりますわ。アスランをただそこへ投げ入れるのはつまりません。」
そしてにっこり笑って言ったのだ。
「すでにキラにはご連絡いたしました。しばらくはこちらでごゆっくりなさってね、アスラン。」


泣きながら自分が今ここに居る一連の理由を話し、「助けてくれ」と言い続けるアスラン。
かつての仲間は、あきれてものが言えないでいた。

なんでわざわざ自分の首を絞めたんだ、アスラン。
ラクス・クラインの元を訪ねて、まともに帰れるとでも思ったのか?
同情の余地、まったくなし。

「うぅっ・・・・・・・・。」
どさくさにまぎれてにもたれかかって泣くあたりは、さすがアカデミートップワンの知能派なのに。
「あーーーーっっ!!何してんですかっ!離れてくださいよ!!」
シンがあわてて間に割って入る。

「でもジュール隊長!この艦に新しい配属命令なんて、きてないですよね?!」
「ああ。今はミネルバのルーキーで手いっぱいだ!」
昨日の敵は今日の友。
シンとイザークはいちがんとなってアスランを追い出しにかかる。

「おいおい、あんまいじめんなよ。」
さすがにディアッカが仲介した。
が、のちに彼はこれを後悔することになる。
くすん、と鼻をすすってアスランが告げた。

「俺はボルテールに乗艦する。これは、フェイスとしての俺の意思だ!

さっきまでの泣きべそアスランはどこへやら。
彼はフェイスバッジをイザークの前に突き出し、びしっと宣言した。
変身する気だろうか・・・・。


「ぬわんだとおぉぉぉぉっっ!!」

指揮官講習を受け、テスト・面接をクリアし、それなりに努力をして白服へたどりついたイザーク。
それが、ラクスの気まぐれだけで与えられたフェイスのアスランに負けた。
久しぶりにアスランに味わされた屈辱に、イザークはワナワナ震えた。


ヤバイ、爆発する!
とっさにニコルは、をイザークへ押し出した。
「ちょっ?!ニコ・・・・ッ」
イザークに抱きつく形でよろける

「あ゛ーーーーーっっっ!」
かわいそうに、シンの敵はコロコロ変わる。
「・・・・・・・・・。」
レイにいたっては、やっぱり表情が変わらない。
が、間違いなく衝撃を受けているのだ。

「ごめん、イザーク。ニコルに押された。」
「ふん!俺だったから受けとめられたんだ、感謝しろ。」
押したニコルにおとがめなし。
(当然です。むしろ感謝してください。by.ニコ)


その様子を黙って見ていたアスランは、ひらめいた!と声をあげた。
。艦内を案内してくれ。ボルテールには初めてだから、勝手がわからなくて・・・・。」
いかにも困ったように言うアスラン。
「フェイスの俺からのお願いだ。」
フェイス、という言葉にサッと敬礼する
さすが軍人。

「わかりました。案内いたします。」
「やめてくれ。敬語はいらないさ。俺との間には。」
そう言うとさっさとの手をとり、行ってしまうアスラン。

「きしゃまーーー!!ボルテールはナスカ級だっっ!!
 ヴェサリウスと同じだあぁぁぁぁぁっっ!!!
 案内も何もあるか、ばか者おぉぉぉぉぉっっっ!!!」



イザークが壊れていく様を見て、ディアッカは頭をかかえた。
ミネルバのルーキーがきてからというもの(特にシン・アスカ)、イザークの精神状態は常に不安定だった。
そのことで、どれだけディアッカが被害を被ったか、あげていたらきりがない。
このうえ、アスランまでがこのボルテールに乗艦するという。(しかもフェイス)

イザークがますます壊れていく。
ディアッカにますます仕事が増える。

「これで俺が一番下っぱなんだぜ・・・・?」
彼のぼやきは、当然ニコルにシカトされた。




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【あとがき】
 イザークとアスランは、ライナの中で生涯ライバル設定。
 たとえアスランがへたれでも、
 たとえイザークの出番がなくても!!
 運命は墓参りのシーンが全てだ!と信じているのです。