〔 俺が隊長 〕
−act.08:save the World−





「話は後にしましょう。今は、これを砕かないと!」
ニコルの声に全員がはっとして今の状況を思い出す。
プラントの女帝の企画ごときで、ユニウスセブンが地球に落ちているのだ。
なんとしてでも止めなければならない。

「よし。カオス、アビス、ガイア! 俺について来い。」
「じゃあイザーク、俺はこっちに・・・。」
そう言ってちゃっかりの機体へ向かおうとするアスラン。
「貴様もついて来い、アスラン! この民間人がぁっっ!!
すかさずイザークの罵声が飛んだ。


数分後、ユニウスセブンは跡形もなく砕かれた。
しかし、ボルテールに帰投したジュール隊に安堵の表情はなかった。
それもそのはず。
地球へのコード限界地点まできたとき、ミネルバの艦首砲が撃たれたのだ。
まだユニウスセブンでは、破砕活動が行われていたというのに。
そのおかげで地球へ破片が降り注ぐ、という事態も回避されたのだが、
ジュール隊+民間人+女帝ユニット(本人と偽者を除く)は、誰もが死ぬ思いをした。

「あそこでフツー撃ってくる? さすがラクス様ね。」
「私たち、自分たちの艦にやられるところだったんですね・・・・。」
初陣で、初めて受けた攻撃が自分の本来乗る艦、ミネルバから。
震えるルナマリアの肩を、は優しくなだめていた。
イザークは全員の無事を確認すると、なぜかボルテールに帰投してきたアスランを見た。

「おい! お前がなんでココにいるっ?!」
アスランは、昔着ていた赤とも違うパイロットスーツを着ていた。
紫がかった朱色のパイロットスーツは、誰もがはじめて見る色だった。
「大体なんだ、その色は? お前の趣味か? 相変わらず悪趣味だな。」
アスランをけちょんけちょんに言うイザーク。
さすがエリート。白服を着るジュール隊長である。
かつての総合成績なんてなんのその、だ。

が、ニコルだけがあることに気づいて、とディアッカに耳打ちした。
ぎょっとしてアスランを見た二人は、確かにそれがあることに気づく。
その間にも、イザークの攻撃がやむことはない。

「いいか民間人。何度も言わせるな。とっととミネルバへ帰れ!」
「いっ?!・・・イザーク。イザーク!」
さすがにヤバい。
はイザークの袖を引っぱった。

「なんだ。」
「あれ! あれ!」
の指さした先は、アスランの胸元。
そこにはキラキラと輝く銀色の・・・・・。
「フェイスバッジだとお?!」

目がとび出るくらい驚いたジュール隊長。
すっかりおいてけぼりのミネルバルーキー。


フェイスとは、ザフトの特権階級である。
隊に属さず、独自で判断し、行動できる。
当然白服のイザークよりも、赤服フェイスアスランのほうが立場が上になるのだ。


「アスラン・ザラって、伝説のスーパーエースじゃないですか!」
ルナマリアのすっとんきょうな声が、しーんとした場に響いた。
「ルナ! お前隠し撮り持ってたじゃんか!」
いつかのお返し、とばかりにシンが言う。
写真持ってるなら、顔見て気づこうよ、ルナマリア。

ところがルナマリアは、本人を前にしてさらっと言う。
「捨てたわよ、アレ。ラクス様の尻にひかれた婚約者だったなんて、がっかりだわよ。」
「言葉をつつしめ、ルナマリア。」
ルーキーの残酷な言葉に、灰になるアスラン。
フッと吹けば、粉々に飛んでいってしまいそうだ。
だけは哀れみの目でアスランを見ていたが、他の三人はたいして気にもとめていなかった。


「ところでアスラン。この事態を説明していただけませんか?」
ニコルにほほ笑まれて、アスランの中に恐怖が再び湧いてでた。
彼の笑顔は、さっきまで一緒にいたラクスのものと同類だ。
もっと言えば、オーブにいる双子の悪魔とも同類だ。
ハラハラと涙をこぼしはじめたアスランに、長くなりそうだからと着替えてレクルームへ集合した。


赤の軍服を着て、胸にはフェイスバッジが輝く。
伝説のスーパーエース、アスラン・ザラ。
その輝かしい肩書きとはウラハラに、彼は涙を流しながら、自分がここに来た理由を話しだした。

「あそこにいたら、俺はいつか殺される。」



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【あとがき】
 アスラン、こんなんでごめんなさい。
 ちゃんもでばってなくて、ごめんなさい。
 種運命のアスラン。・・・・あんなに弱くていいのかな?
 心配になるくらい弱かった。