〔 俺が隊長 〕
−act.06:俺をザクだと言ってくれ−





『大切なものは私のザク』

の言葉はボルテールの艦内すべてをかけぬけた。
のザクの整備には、志願者が激増。
おかげで他の機体がほったらかしになり、先日ディアッカが駆動系にエラーを起こした。
艦外活動から戻れなくなっても、しばらく放置された。(あわれ)
一方、のザクは入れ替わり立ち代りオプションが付け替えられ、さながら着せ替え人形になっている。

「すごいわ! さんの一言でこんなにも変わるんですね!」
この状況を生みだしたルナマリアは、嬉しそうにに言った。
「平和の中で軍の仕事に向上心を持つのは難しいけど、さすがジュール隊の艦ね。」
いや、。それちがう。
ルナマリアは「やっぱり天然ね」とほくそ笑んだ。
ミネルバの女帝になれる日は近い。

「大変ですさん! 至急格納庫に来てください!」
整備班からの悲痛な叫びが、ボルテールの艦内に響いた。

「何なのー・・・・?」
ルナマリアと一緒に駆けつけたキャットウオークから見えたもの。
その光景に、はぴくりと眉をつり上げた。
そこにあったのは、落書きのようにでかでかと文字が書かれたのザク。

肩の部分に『イザーク』
足の部分に『シン』
と、はっきり読み取れた。

「どういうことよ、コレはっっ」
はザクの足元でギャーギャー騒いでいる二人を見つけた。
無重力を利用して、キャットウオークから飛び降りる。

「ザクに名前は二つもいらん! 早く消せ!」
「ジュール隊長こそ、こんなキタナイ字、早く消してくださいよ!」
どうやら二人は、のザクに自分の名前をつけた気でいるらしい。

の大切なもの=ザク。
なら、そのザクの名前を自分の名前にすれば・・・。

『私の大切なものは、イザークorシンかな!』になる。

だからって、機体に名前書くか? 普通。
「こんなのに乗らなきゃいけないが、かわいそうですよ?」
「そういうこと。早く消せよー、イザークもシンも。」

ニコルとディアッカの言葉なんて聞きもせずに、なおも口論を続けている二人。
とうとう手に持ったペンキを、それぞれの顔に塗りだした。
「隊長、髪の毛に色つけてあげますよ!」
ぬわにおぅ?! お前のケータイの色も変えてやる!」

だまってその様子を見ていたは、ついにわなわなと震えだした。
「あの・・・・・さん?」
尋常でない様子に、ルナマリアがこわごわと声をかける。

「イザーク・・・・・シン・・・・・。」
二人の名前をつぶやくと、隣にいた保安員のマシンガンを奪い取った。

「あたしのザクから離れなさーーーーーいっっ!!」

怒りに燃えた漆黒の瞳は、標的を定めて銃をぶっぱなす。
「おいやめろ、!」
ディアッカとニコルにはがい絞めにされ、それでもなおは正気を失っている。
レイはただ呆然とを見ていた。
だがそう見えるだけで、本当はマシンガンを撃つの姿に見とれているのだ。

「青き清浄なる世界のためにーーーーっっ!!!」

それを言うか?
コーディネーターのが。
けど、使い方は間違っていないかも。

結局この日、がイザークとシンを許すことはなかった。
すっかり意気消沈したイザークとシン。
それから数日間、ボルテールでは二人の言い争いが消えた。



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【あとがき】
 あ、またヒロインが壊れた。
 なんかね、壊しやすいキャラしてるんですよ、ちゃん。
 次はいよいよジュール隊長の宿命のライバル登場です!