〔 俺が隊長 〕
−act.04:歓迎!ミネルバパイロット−





「ミネルバ所属、シン・アスカであります。」
「同じく、ルナマリア・ホークであります。」
「レイ・ザ・バレルであります。」

『わたくしの身を守るミネルバクルーを鍛えてくださいな。』
とても任務を伝えるとは思えない通信文をつけて、女帝からボルテールへ送られたのは、
“赤”を着て間もないルーキーだった。


隊長室でパイロット同士紹介しあったところで、がシンに切り出した。
「ねぇねぇ。インパルスに乗ってるの、シン君なんでしょ? ちょっと乗せてほしーんだけど。・・・いい?」
どうやらは前回のスペシャル機ショックを引きずっているらしい。
たなぼた的にやってきたインパルスは、トリコロールのスペシャル機。
モビルスーツ乗りなら一度は乗りたいと願うエース級。

「イヤですよ。」
と目も合わせずに、持ち主のシンが答えた。
その回答に、ピクっとジュール隊長の眉があがる。
「おい、シン・アスカ。何だその言い方は。」
「すいません、ジュール隊長。この子、口の利き方知らなくてー。」
一緒に来たルナマリアの方がフォローする。
けれど当の本人のシンはというと、相変わらずあさっての方向を見ているだけ。

「俺が言っているのはお前に、だ。シン・アスカ。」
二度目のフルネームコールに、やっとイザークを見るシン。
「なんなんですか? 何度も呼ばれなくてもわかりますよ。」
「こ・・・・・ンの・・・ッ!! ルーキーのくせにいぃぃぃぃぃっっっ!!!

とんでもない奴同士が出会ってしまった。
なんだってこんな奴をイザークの元へ送ったんだ?
ディアッカはこれからこのボルテールで起こるであろう騒ぎを予想して、ため息をついた。
火の粉をかぶりたくないニコルは、当然のようにシカトしている。

「まーまー、イザーク。愛機に乗りたいなんて言ったあたしの方が悪いんだからー・・・。」
さすがに騒ぎの元凶をつくった自覚のあるが、イザークを制した。
スペシャル機であろうと、量産型であろうと、自分の機体というのは特別なものだ。
戦場では自分の手や足となり、また、自分の命を護ってくれるもの。
そうやすやすと他人にいじられては気分が悪い。

「ごめんねーシン君。でも、これからよろしくねー。」
が手を差し出すと、シンはその手をじっと見た。
握手を求めたのに返ってこない状況に、の頭は“?”となる。
「シン。俺たちの評価まで下がる。いい加減にしろ。」
レイの言葉にしぶしぶ握手に応じるシンを見て、イザークがまた吠えた。

「お前だけは特別メニュー追加だ、シン・アスカ!!」
「フルネームで呼ばないでくださいよっ」
お互いにぶん殴りそうな勢いなので、ディアッカが止めに入る。
「わかったわかった。イザークもシンも、もうやめろっつーの!」

イザークひとりにも安らぎが得られないディアッカ。
シンが加わったことにより、それはますます遠ざかる。
そこへ、場違いなルナマリアの笑い声がした。

「おっかしいの! シンってば。アカデミーにいた頃、あんなにさんに憧れてたのに。」
「やめろよ、ルナ!」
「いやよー。ばっかみたい。本当に子供なんだから!」
本当?とシンを見たと目が合い、とたんに真っ赤になるシン。
さんて、量産型の機体でしかも女性で、なのにメチャクチャ強かったじゃないですか!」
「アカデミーの教官から、必ずさんのお話がされています。」

確かに。
前大戦、スペシャル機ばかりのクルーゼ隊では、
ジン→シグー→ゲイツと、量産型の王道を乗り換えて、彼らと同等の成果をあげていた。

「一部では隠し撮りらしき写真も出回っていました。・・・シン、持っていたな?」
レイの言葉に思い当たるひとりの人物。
ミゲルだな?
彼は今、アカデミーでモビルスーツ戦の教官をしているのだ。

「あ! 逃げた!」
恥ずかしくて耐え切れなくなったシンが、隊長室を飛び出した。
「シンーーーー! きしゃまーーーーっっ!!」
動揺しておかしなことになっているイザーク。
無断で退室したことを怒るのかと思いきや。

「写真をよこせえぇぇぇぇぇっっ!!!」

そっちかよ。
ディアッカが突っ込む間もなく、がイザークを殴り飛ばしていた。



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【あとがき】
 シンとイザークが出会っていたら、ストーリー絶対進まなかったんでしょうね。
 アスランとでさえ、あんなに仲良くできない子ですから。
 そこがカワイイですけど。
 このミゲル、教官の方が副職です。
 「激レア!赤服イザーク」やら「希少!キズありイザーク」なんかも売ってます。
 めっさ欲しい。「微エロ!湯上りイザーク」希望。(腐女子宣言)