〔 俺が隊長 〕
−act.02:ナルシスト仮面ラウ・ル・クルーゼ!−
「ラクス様・・・?」
「なるほど。彼女ならやりそうですね。」
地球へ行くのに、シャトルに乗るのが大キライなラクス様。
今まではアークエンジェルが彼女を地球へ運んでいたのだが・・・。
「専用艦、欲しくなっちゃったんだね。」
アークエンジェルは現在、オーブの所有艦であった。
「それで、ボクたちも出席させられるんですか?」
「嫌そうに言うなニコル。命令だ。」
最新造艦の進水式。
しかもどうやら、ラクス専用艦。
・・・・とくれば、当然出席が予想される人物がいる。
「ねぇ、イザーク。もしかしてデュランダル議長もいらっしゃるの?」
核心に触れる前に、がワンクッション入れた。
「あぁ。どうやら造らせたのも議長という話だ。」
イザークの言葉に、全員ゴクリと言葉を飲みこむ。
ということは、絶対、彼も来る。
その様子を見て察知したイザークは、声を荒げた。
「ええい! 聞きたいのはクルーゼ隊長の動向だろうが! もちろん出席だそうだから、安心しろっ!」
安心。誰が?
全員の頭の中で、銀の仮面がキラーンと光った。
辛かった、クルーゼ隊での日々を思い出す。
変態ナルシスト仮面、ラウ・ル・クルーゼ隊長。
毎日の朝の挨拶は「おはようございます、うるわしの隊長。」だった。
髪型が決まらない日は、一日中姿を現さない。
戦闘中でも髪が乱れれば、さっさと退却。
そんなでもどうやら前大戦の原因をつくった張本人。
しかし大親友のギルバート・ギュランダル議長により、すべて不問。
(なのにディアッカは降格処分)
現在は軍本部の司令室最高責任者を務めている。
(それでいいのか、ザフト)
「クルーゼ隊長のお気に入りはイザークとですから、2人が挨拶に行けばいいでしょう?」
ニコルの言葉に顔面蒼白になる2人。
「ボクたちが出向く必要はありませんよ。」
変態仮面相手なら、仲間を売り渡すこともニコルには得策だった。
「なんっっでそうなる?! ニコルッ!!」
「いやよ―――・・。私いやよ―――・・・・。」
隊長イザーク半泣き。
は放心。
けれどニコルが一度決めたことには、イザークが隊長といえど逆らえないのだ。
にっこり笑って軍服八つ裂き、なんて行為はまだかわいい。
「大丈夫ですよ、。イザークは命に代えてもを守るはずですから。」
ニコル・アマルフィ。
もしかしなくても、彼がジュール隊最強。
「これはこれは。イザークにじゃないか。」
ミネルバの進水式を見守る展望貴賓室。
キラキラの変態オーラをまきちらし、クルーゼ隊長がそこにいた。
「ご無沙汰しております。クルーゼ隊長。」
敬礼しながらイザークが言った言葉に、「おや?」という表情のクルーゼ。
(見えないけど、たぶん)
イザークの隣でも敬礼しながら、背中に嫌な汗をかいていた。
「挨拶が少し・・・・違うようだが?」
クルーゼの言葉にイザークとは顔を見合わせ、やっぱりとうなだれる。
「「オハヨウゴザイマス、ウルワシノタイチョー・・・。」」
2人の気のない挨拶にも、クルーゼはご満悦だった。
「そういえば、君たちは初対面かな?・・・・ギル。」
クルーゼが呼びかけた方には、黒髪ロンゲのギュランダル議長がいた。
その権力の全てはラクス・クラインが握っているとはいえ、プラントの最高評議会議長である。
「初めまして。ジュール隊隊長、イザーク・ジュールです。」
「同じく、ジュール隊・です。」
2人は改めて敬礼し、ギュランダル議長に向き直った。
「・・・・・美しいな。」
「「は?」」
「くん、と言ったかね? 美しい黒髪だ。そしてイザークくん、ストレートのプラチナブロンドが美しい。」
空耳か、と2人は自分の耳を疑った。
が、あのクルーゼ隊長の大親友なのである。
ギルが正常、という保障がなかったのを、2人は忘れていた。
「見てのとおり、私はクセ毛でね。それゆえにストレートの髪に魅かれるのだよ。」
同時に髪に手を触れられて、イザークもも鳥肌がたつ。
早く帰りたい。
2人は泣きながら強く願っていた。
しかしギルも理想の髪質を前に、すっかりご満悦だ。
「ところでどうかね? 是非私の専任の護衛になって・・・・。」
「「ご遠慮いたします! 失礼いたしました!!」」
逃げ出すように、部屋を飛び出した。
「あ゛ーーーーー!! もういやよーーーー!!!
ダレかこの鳥肌とめてーーーーーー!!
なんなのあの2人は?!
これでいいの? プラントはーーーーっっっ!!!」
今日ばかりは、イザークもと一緒に叫びたかった。
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【あとがき】
主役はニコル?クルーゼ?ギル?
いいえ、絶対イザークですっっ
そしてちゃん至上主義です!