「除隊する、というのなら止めない。」
え?
「俺の婚約者になったのなら、が軍にいることはないと思わないか?」
止めない、じゃなくて、除隊しろって言ってる。
イザーク、どうして?

「どうしてイザークが、そんなこと言うの?!」
いきなり声を大きくした私に、イザークが戸惑う。
「どんな遺伝子を持っていても、私は私だって言ってくれたから、私はここにいていいんだって思えたんだよ?!」
。」
「自分の望むように、この力を使えばいいって言ってくれたのは、イザークじゃない!」
「・・・・・・。」
「私は・・・・・私は・・・・・ッ」
イザークが申し訳なさそうに私の両肩をつかんだ。

「私はそう言われたから、イザークを好きだって思ったんだよ?!」
なのに・・・・。
イザークはその言葉を取り消すの?


思ってもいなかっただろう私の告白に、イザークは驚きを隠せなかった。
が、俺を・・・?」
そう。
私がイザークを。
残念だけど、言ってなかったけど、もう落ちちゃってたの。

「すまなかった。」
告白なのに真下でニラんでいる私に、イザークが言った。
「離れると思ったら、俺の気持ちが穏やかでなくなった。俺の知らないところで、を失うことがあるのかと。」
イザークが、こんなこと考えるなんて、思ってもいなかった。
「俺が守れないなら、お前には戦場にいるなと言いたくなった。」
「大丈夫、私は私を守れる。」
「すまなかった。のプライドを傷つけたな。」
「別にプライドなんてないけど、でも――――・・・・。」

「俺も、が好きだ。」

私の言葉は、イザークの言葉とくちびるにさえぎられた。
「なっ・・・・なにお・・・っっ?」
突然の出来事に、頭が軽くパニックしていた。

「婚約者、だ。何をしても文句は言われまい?」
さっきまでのイザークはどこへやら。
もういつものイザークに戻ってる。

「しかも想い合う同士なら、止める理由もな。」
そうですよ。
もっともですよ。イザークの言ってることは。
でも昨日まで、ついさっきまで、婚約者というよりただの仲間だったじゃない。
いきなり不意打ちはズルいよ。


「死ぬなよ、。」
イザークの言葉に、はっとして顔をあげた。
別れの時間がせまっていた。
次に会えるのは、いつになるんだろう・・・・。

「イザーク。本当に・・・・。」
「おい。」
また言いかけていた言葉をさえぎられた。
「何?」

「あいつら全員に抱きついておいて、俺にはナシか?!」
え? あ?
「妬いてたんだぞ、俺は!」
言うなりイザークに抱きよせられる。
気難しいけど、わかりやすいね、イザーク。

「ありがとう、イザーク。大好き。」
「ふん。・・・・どうせ帰ったらアスランともこうして同じこと言うんだろうが!」
「うん。」
イザークの背中に手をまわして、イザークの胸に抱かれながら、私はおくびにせず言った。
「こっ・・んの・・・。許さん!アスラン〜〜〜〜っっ!!」
いつもと同じイザークが、変に心地よかった。


家に帰る車の中で、私は帰り際エザリア様から渡されたものを見ていた。
イングリッシュガーデンに立つ、イザークと私の写真。
服はもちろんウエディングドレスで、写真の中の2人は楽しそうに笑いあっていた。
「自信作だ。持っていきなさい。」といわれた時には、なんだかわからなかったけど。
まさか隠し撮りされていたなんて・・・・。
やっぱりやっぱり、エザリア様ってすごすぎです。



家に帰ってからは本当に忙しくて、気がついたらもう朝だった。
私は初めて“赤”の軍服を着た。
大好きなみんなと、同じ色の軍服。
この色を着るために、がんばった毎日。
楽しかった、アカデミーの生活。


。仕度できたか?」
アスランが顔をのぞかせた。
同じ服を着て、私たちは向かい合っていた。

「アスラン。ありがとう。」
イザークに言われたように、私はやっぱりアスランにも抱きついていた。
、ちゃんと連絡くれよ?」
「うん。」
アスランの手が、私の頭を撫でてくれる。
大好きな幼なじみ。

私たちはいつも一緒だった。
でも、もう別々だね。
月とプラントで離れていたときよりも、2人とも大人になった。
それでも、大好きな幼なじみであることに、かわりはないから。
泣かないよ。
だって、永遠の別れじゃないもの。

「じゃあ、元気で。」
「アスランも。」



私たちがむかうのは戦場。
でも、それがどんなところか、まだわかっていなくて・・・・。
本当の戦争がなんなのか、まだ知らなくて。
今はただ、戦って守ることしか知らない。

―――― みんなと同じ、この軍服の、
       “赤”に恥じることが、ないように ――――






   END/back


【あとがき】
 ・・・・・・・・はっ!終った!!
 無事に書ききることができました。
 皆さんの応援があったおかげです!本当にありがとうございました!
 イザークとちゃんがとりあえず気持ちが通じ合ってよかったぁ。
 くっつきそうで、くっつかない。
 ライナ自身、いつくっつくの?と疑問になりつつ書いてました。
 いやー、イザークが甘く動いてくれなくて大変。
 本当に本当にありがとうございました!!


 ・・・・でもって。
 実はこちらは種時代に続きます・・・・。
 ひぃぃぃぃっっ!!ごめんなさいっっ
でも、ちゃんの“身代わり”としての運命に決着をつけます。
 そのためにスイマセン、書かせてください。
 でもアカデミー時代、完。ということで、
 ありがとうございました!!
 種時代も待ってていただけるとうれしいです。