婚約の話を先に受けたのは、イザークだった。



深刻な出生率の低下を防ぐため、政府が進めている婚姻統制。
より子供が産まれやすい遺伝子を持つ者を組み合わせる、
感情無視のこの政策は、時に多くの涙を流させることもあった。



イザークはすぐにの元を訪れ、言った。
「この話、ない事としてかまわん。」


けれどにはまだ、何の話も伝わっていなかったため、
当の本人のイザークが自分たちの状況を説明する羽目になった。


付け加えて、
自分にはまだその意思がないこと、
今は軍人として戦うことにすべてをかけていること、
を伝えると、最初のセリフを繰り返した。


返ってきた言葉は、本当に意外だった。


「イザーク、あたしのこと嫌いなの?
 理由聞いてたら、何だかすっごく迷惑そう。」


違う。
相手がだと知って、少なからず胸の高鳴りを覚えたのを、イザークは自覚していた。

今の説明はなんだかんだと自分の都合を説明したが、
それを言わせるためにここに足を運ばせたのはへの優しさだった。


感情をないがしろにしてまで、子を成す。


国を守る軍人として、
それが意味のないことだとは思わなかったが、
正論だとも言えなかった。

だからには、
そんなことにふりまわされてほしくなかった。

戦場でモビルスーツを自由に操るあの姿のように、
には生きてほしかった。

その感情が何なのか、
イザークには上手く説明できない。



「迷惑・・・・だとォ? それはお前の方だろう?!」
「あたし? どうして?」
「どうして・・・って、お前っ」
「全然知らない人と婚約するより、よっぽどいいじゃない?」

あっけらかんと言うに、
じゃあ自分のことはどう思っているんだ、とは
とても言えないイザークだった。

「俺はっ・・・アスランなんかに茶化されるのはごめんだ。」
「じゃ、みんなにはまだ内緒にしとこうか?」

何だか墓穴を掘ったようだ。

の瞳が、いたずらっぽく揺れていた。




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