厳粛な音楽が流れる中、俺とはゆっくりと歩を進める。
祭壇の前にはイザークが、落ち着き払って立っていた。

と俺が歩くヴァージン・ロードは、をイザークへ託すための道だった。










〔 あたたかな光、キミにあふれて。 〕
      − 最終章 −










赤の制服を着た俺たちは、戦って護ることを正義だと信じていた。

赤の軍服を着た俺たちは、想いだけでは動かない運命を知った。




     「はね、“身代わり”。」

     自分に、その遺伝子に秘められた宿命を伝えてきた
     あれは、母たちを失って、悲しみにくれた日。



     「アスランは好きだよ。でも、恋じゃない。」

     俺がつかみあげた腕を、振り払うこともせずに言った
     あれは、イザークとの婚約が決まった日。



     「アスラン、ありがとう。」

     同じ赤の軍服を着て、向かい合う俺にほほ笑んだ
     あれは、初めてその軍服に袖を通した日。



     「ラスティ・・・・?」

     信じられないものを見たように、呆然と仲間の名を呼んだ
     あれは、初めて身近に、戦争を感じた日。



     「敵という名のキラを、私だって殺してきたんだよ、アスラン。」

     泣き叫ぶだけの俺を、優しさで包みこんでくれた
     あれは、仲間を失い、親友をこの手で殺した日。



     「私・・・・・止められなかった・・・・っ」

     泣きじゃくりながら、俺の袖を握り締めていた
     あれは、が“”の運命から解放された日。



     あの日、確かに戦争が終わった。


そして今、俺のとなりにいるは、汚れなき白に身を包む。


たくさんの人の顔も、祝福も、俺の目には映らなかった。
ただ、との思い出が、俺の中に浮かんで消えた。

父上。
母上。
ラレールおじさん。
レイラおばさん。

みんながもしここにいたら、俺を同じ思いをしたんだろうか・・・・・。



イザークに手が届く距離まで歩ききると、俺はの手を取った。
イザークが一礼し、俺もそれを返す。

差し出される、イザークの手。
俺は、の手をイザークへ預けた。
そして、最後の仕上げとばかりに、の腰に手をあてて、そっとイザークのほうへと押しやった。

の身体が、イザークに寄り添う。
2人は、祭壇へと歩み寄る。
俺から、が遠ざかっていく。

俺はとても穏やかな気持ちで、2人の姿を見送った。
その場を離れ、参列者の席へ戻ると、キラが心配そうに顔をのぞきこんできた。
俺はいつものように「大丈夫だ」と笑った。


イザークがのベールをあげたとき、あたたかな優しい風が吹いた。
心なしかまた、俺の視界がぼやけた。
の、新しい旅立ちを見守るうれし涙なのだと思った。


おめでとう、
昨日と違う明日を、過去と違う未来を、の想うままに描けばいい。
今日がの、新しい未来のはじまり。


とイザークには、あたたかな光があふれていた。
その光に、2人がいつまでも包まれているように。と、俺はそう願った。





   END / back


【あとがき】
 そんなに未練たらたらだったのね、アスラン。な、夢でした。
 ある意味アスラン夢。
 そしてこんなところにまで過去タイトルが・・・。うふふ。
 番外編、お付き合いいただきありがとうございました!
 次はちゃん出産編、かな・・・・?