3人の任務は、
サイバネティック工学のゼミの学生として潜入し、
キャンパスの場所と、
モビルスーツが保管されているであろうモルゲンレーテの
ドッグの位置を確認すること、だった。

モルゲンレーテ社の同じ施設の中にあるため、
ゼミには大勢の民間人学生が出入りしていた。

「なるべく傷つけたくないのだよ、私は。」
優しいだろう?と続けて聞かれても何も答えられなかったが、
クルーゼ隊長なりの心づかいらしい。

だからといって、
「ゼミのとなりにドッグへの通路があり、
 学生からも多数の死者が出るおそれがあります。」
と報告したところで、この作戦がなくなるとは思えない。

クルーゼ隊長の真意など、あの仮面に隠れて何もわからないのだ。

「本当は、何をさせたいんだろうね。隊長は。」
「バカか貴様。そんな事オレに聞くな。」
「ねぇ・・・、イザーク。私に当たることでエネルギーチャージしてない?」

はぁ・・・とため息をついて歩き出したの耳に、
ニュースのアナウンサーの声がとびこんできた。

<激戦の伝えられるカオシュン戦線、その後の情報を・・・>

(カオシュン?)
の頭に、今朝のニュースがフラッシュバックした。

「カオシュンなんて、もう落ちちゃったわよ。」
口に出してしまってから、あわてて自分で口をふさぐ。
ヤバイ・・・。と、思うまでもなかった。
ニコルとイザークの視線がイタい。


コンピューターでそのニュースを見ながら、
なにやら片手で別の作業をしていたゼミの学生と、目が合ってしまう。
茶色の髪、優しそうなうす紫の瞳をしたその学生は、
驚いたようにこちらを見ていた。

「どうして、知ってるの?」
問いかけられてしまってはしかたない。
たちは今はゼミの学生なのだ。
無視して通り過ぎる方が、不自然すぎる。

幸い、近くには彼しかいないから、
何とかなるだろうと判断したは、彼の方へ向かった。
少し距離をおいて、イザークとニコルもついてくる。

「あのー、えーっと、コンニチワッ!」
ワッ、の所で両手を顔の側でパっと開いてみたりした

「それで誤魔化したつもりか、貴様・・・。」
「ごめんなさい。
 彼女、お笑い芸人志望なんですけど、センスなくって。」

(すっごく、すっごく申し訳なさそうに言ってるけど、
 ニコルそれフォローじゃないわよね・・・。)

冷や汗たらたらの3人だったのに対して、彼はとても楽しそうに笑っていた。

「あははっ。仲良いんだね、君たち。
 ・・・初めて見る顔、だね。
 僕はカトウ教授のゼミにいるんだけど・・・。君たちは?」

「私たちは、今はまだ本土の方に席があるの。
 今度こっちに移ってこようかと思って、みんなで見学に来てるのよ。」

「へぇ、そうなんだ。・・・カオシュン、もう落ちたの?」

「あー、えーとそれは、そのー・・・。」

「違ってたらごめんね。・・・もしかして君たち、コーディネーター?」

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!!

アラートが鳴っているように、には聞こえた。
なのに、のそんな気持ちをあっさり無視して、
イザークがふんぞり返りながら言い放った。

「よくわかったな! オレたちは、コーディネーターだ!」


(イザークさま、何て事を言いやがるんでスカ・・・。)
は口から魂を吐き出してしまいそうになる感覚を覚えた。


「ファーストですけどね。」
ニコルの言葉に、ひっぱり戻されてきた意識。

ここはオーブだった。
コーディネーターがいたって不思議じゃない。
この情報も、コーディネーターならすぐ入る。
特にファースト、となれば、両親はナチュラル。
とっても自然!すごく自然!
の顔に笑顔が戻った。

「そう。それじゃ、僕と同じなんだね。」
あまりにも普通に、サラリと言われて、たちはあっけにとられた。

僕と・・・・おな・・じ・・?

「じゃ、あなたもコーディネーターなの?」
「うん。ファーストってところも、一緒。」

「そうなんですか。
 あの、良かったらこっちのキャンパスのこと、
 少し教えてもらってもいいですか?」

「いいよ。僕のわかる事で良ければ。」

優しくほほ笑む彼の表情が変わることはなかった。
イザークまでもが短気をおこす事なく話ができるほどに。

その彼が、“戦争”という言葉の所で、初めてその表情をかえた。





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