嵐くん、元気ですか?
オリンピック、もうすぐだね。
今、選手団の会見で嵐くんを見てるよ。

・・・・・嬉しかった。










〔 ずっと。 〕










それはすれ違いと呼ぶほど小さなことでなく。
世界が違うというほど大きなことでなく。

はば学卒業後、は一流大学で、嵐は一流体育大学。
あれだけ長く濃い時間を共有した高校時代と違って、2人にはお互いの知らない時間が増えた。
大学一年で全日本を制し、嵐は一気に脚光を浴びた。
練習の鬼だった嵐にますます磨きがかかり、と会える時間は少なくなった。
ずっと自宅から通っていた嵐が、栄養管理も兼ねて一流体育大学の寮に入寮してからは、ますますと会うことは困難になった。

マスコミの注目度もあがり、外出すればたちまち人の目を惹いてしまう。
気持ちを落ち着かせていたわんにゃんランドも行けなくなり、
元アルバイト先の温水プールに行こうものなら水着姿の女子から猛烈なアプローチを受けてしまう。

2人の気持ちに変化が起きたわけでなく、連絡を取らなくなることの方が自然だった。




あの全日本制覇から2年。
不二山とともに、大学3年。
がつけたテレビの中で、嵐は日の丸を背負っていた。










***










さっき送信したメールが、あて先不明で返ってきた。
は苦笑いを浮かべながら、打ったばかりのメールを削除した。



アドレスなんて、とっくに変わってるよね。



電話は進化してる。
携帯電話を使っていた高校時代だけど、だって今はスマホを使っている。
アドレスだって、変わっていて当たり前だ。
今日までメールを送ることもなかった数年間。
でも、消そうとは思わなかったデータ。
そして、もう届かないことがわかってしまっても消せない。


はメールを消した後で、もう一度メール作成の画面を開いた。







またすぐに会えるって、思ってたのにもう何年もたっちゃった。
高校生のときについた、嵐くんを見るクセ。
そのクセは治らないから、嵐くんの試合の日は学校を休むね。
応援してるよ。



「がんばれ。嵐くん。」



打ち終わったメールにそう声をかけると、届かないと知りながらはメールを送信した。











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【あとがき】
 オリンピックを見ていて、唐突に思い浮かんだ嵐さん短編。
 ちなみにライナはまだスマホじゃないです。
 不自由していないので、このまま壊れるまで携帯電話を使います。