2005.12.25

12月15日(木):
     文化会館で諏訪内晶子のバッハプロジェクト演奏会である。アンサンブルは素晴らしく、落ち着いている。バロックスタイルでありながら、ちょっと優雅で乗りが良い。オーボエが素晴らしい。フランソワ・ルルー(Francois Leleux)という若手で、頭が禿げているのでちょっと老けて見える。ヴェレシュ(Sandor Veress)のパッサカリア・コンチェルタンテが良かった。12音技法の曲であるが、古典的なスタイルで比較的判りやすい。バッハの協奏曲は3曲(チェンバロ協奏曲ニ短調BWV1060aをバイオリンとオーボエに編曲したもの、バイオリン協奏曲2番ホ長調BWV1042、2つのバイオリンの為の協奏曲ニ短調BWV1043)なのでさすがに聴き疲れが出る。諏訪内晶子の音は明るくて表現力がある。最後の協奏曲でもう一人のバイオリン・チョーリャン・リンとの長いカデンツァが良かった。全楽章の主題を振り返りながらうまく纏めていた。二人の音色の違いがはっきり出ていた。諏訪内晶子には華があるというか、とても音楽的に優れてはいるのだが、自然すぎて何となく浅い感じ。良く聴くと一つ一つのフレーズを丁寧に作りこんではいるのだが、問題はその意味である。

12月18日(日):
     壬生アーティスト・ホーム・ヴィレッジ・ホールという処でフルートトリオの演奏会があったので聴きに行った。おもちゃの町より更に先で、一時間近くかかった。ぽつぽつと人家のある畑の中にポツンと木造のホールがある。2〜300人くらいで、天井は高いが、それほど響きが良い訳でもない。栗田昌英という東京芸大を出てジェームズ・ゴーウェイに師事した人のグループでのデビューコンサートである。現在はオーストラリアに在住。1年に4ヶ月ほど帰ってくる。弟子二人とのトリオ+Pfである。中学・高校と同窓である。一応曲目を書いておく。
  M.ベルトミュー:フルートトリオの為の4つの小品、
  C.ドビュッシー:小さな黒人、
  C.プーランク:天使のパン、
  E.ケーラー:2本のフルートのための花のワルツ、
  F.ドップラー:2本のフルートのためのアメリカ小2重奏曲作品37、
  M.ドゥリング:3重奏曲よりアンダンテ・センプリーチェ、
  J.アンデルセン:スケルティーノ作品55-6、
  P.チャイコフスキー:くるみ割り人形よりあし笛の踊り、
  村松嵩継:Earth、
  クリスマス・キャロル4曲、
  アンコールが
  ソロ+Pfでダニーボーイ、
  デュエット+PfでAmaging Grace、
  トリオ+Pfでエンターテイナー。

      二人の弟子はなかなかうまかったが、やはりアンサンブルとして聴くともう一つ表情が十分でないと感じた。音がややざらつく感じ。Earthとダニー・ボーイはソロ+Pfで、これはすごいと思った。低音がよく鳴っていて迫力がある。ホールが突然響き始めるのには驚いた。変奏もあまり細かくなくて、むしろメロディをストレートに聴かせるのが好きなようで、確かに音色そのものが訴えてくるような演奏である。ジェームズ・ゴーウェイと似たところと言えば力動的でクリアーな演奏スタイルであろうか。音の純度はまあゴーウェイの様にはいかない。曲の中では「天使のパン」が親しみやすくて印象に残った。とはいえもうメロディーも思い出せないが。元々はテノール独唱曲だそうである。

12月24日(土):
     東武でCDを見ていると、千住真理子もバッハの協奏曲集を出していて、何だかお互いに意識しているのだろうか、とも思う。インターネットでちょっと試聴して聴き比べてみるとアプローチが違う。諏訪内晶子の方は軽くSWINGしていて乗りが良い。イタリア風、あるいは今風とでも形容すべきか?千住真理子の方は自己主張よりむしろデュランティの粘っこい音を聴かせる様にしているように聴こえるが、バッハらしく彫りの深さを感じる。まあ人生経験の違いと言うべきか?

<一つ前へ><目次>