2024.11.28

東区民文化センターでフルートデュエットを聴いてきた。

    Vincent Lucas & Tomoko Kondo Flute Concert で、広島市内で3日連続同じプログラムでやる。だからかどうか、100名位しか客が来なかった。明日は公開レッスンもやるようである。Lucas 氏はパリ管弦楽団の首席フルートで、近藤さんは2011年からその弟子兼秘書役である。広島市佐伯区出身ということで、時々里帰りコンサートをやっている。今はパリに住んでいるので、この間のオリンピックの時は Instagram で開会式の中継をやっていて、僕もフォローしている。

    プログラムは全て初めて聴く曲だった。

    前半は3曲で、まず、フィリップ・ゴーベールの「ソナチネ」をリュカ氏が演奏した。なおピアノは田中しのぶという人であるが、今までのコンサートではずっと東井美佳さんだったらしい。彼女が最近亡くなったということで、この曲は追悼の意味もあるらしい。何はともあれ、リュカ氏の音は出だしから迫力があった。低音部が充実している。強迫の作り方が自然である。音の消え方が美しい。どこが違うのだろうか?吹き始めに唇の当て方に時間をかける。何となく下唇を捲っているように見える。またデクレッシェンドではフルートをちょっと外に回しているように見える。でもまあ、基本的には息の量なのだろう。歌口の対抗エッジで息を別けるのだが内側により多く別ける感じかもしれない。フレーズの繰り返しが多くて吹き分ける解釈が難しいと思うのだが、実に感情を籠めて吹き分けている。

    次は近藤さんで、ジークフリート・カーク=エラートという人の「シンフォニッシュ・カンツォーネ」。これはまあ、なかなか凝った曲想で難しいとは思うのだが、リュカ氏の音に慣れてしまうと、近藤さんの音はいかにも貧弱に聞こえてしまうのが残念であった。正確に吹いているとは思うのだが、表情が作れていない感じであった。

    次はまたリュカ氏で、ポール・タファネルの「ミニョンの主題によるグランドファンタジー」。実に華やかな変奏で圧倒された。

    後半は4曲で、いずれもデュエットである。クロード・ドビュッシーの曲をパスカル・プルーストが編曲した「小組曲」は、聴きなれた曲をうまくデュエットにアレンジしてあって面白いが、二人の音のバランスが気になった。音の大きさが違う。

    ジャン=ミシェル・ダマーズの「2本のフルートとピアノのためのトリオ」フランツ・ドップラーの「夢遊病の女アデリーナ・バッティの思い出によるパラフレーズ」(とても難しい)、サミュエル・ジーマンの「メキシコ幻想曲」と続いたが、最後の曲だけが強烈な印象を残した。近藤さんの音も元気になってきた感じ。ジャズ風の非常に面白い曲である。荘厳な感じのポリリズム的な長いテーマがあって、それをピアノやフルートデュエットやトリオで変奏しながら演奏する。モダンジャズのスタイルである。とりわけピアノレスのデュエット部分が良かった。リー・コニッツのアルバムに「デュエット」というのがあって、いろんな人との無伴奏デュエットをアドリブでやっているのだが、それを思い出した。リュカ氏はジャズが好きなのだそうで、それを生かすために近藤さんが見つけてきた楽譜だそうである。

    アンコールはウジェーヌ・ボザの「アリア」をリュカ氏が演奏した。サキソフォンの抒情的な名曲である。これも東井美佳さんへの追悼ということで、感銘を受けた。リュカ氏の演奏は心が籠っている。そういえば中島みゆきも。。。結局はそういうことが一番大事なんだろうと思う。

    最後に、この間のオリンピックを思い出して、「おお、シャンゼリゼ」を歌った。プログラムに日本語の歌詞があって、それを見ながら僕も歌った。

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