2011.07.16
    今日も暑い。友人の書の展示会があって案内状を貰ったので、神戸まで行ってきた。ただそれだけでは勿体ないので、兵庫県立美術館に寄った。灘駅から美術館通りを歩くがカンカン照りで暑い。途中の喫茶店で一休みして時間を潰した。行ってみたらロビーで既にフルート演奏会のリハーサル中だったが、そのまま常設展に入った。あまり有名なものはないがなかなか良い作品が多い。充分楽しめた。

    山本六三という人の鉛筆画(エッチングだったようだ)はなかなか良かったし、彫刻ではロダンのオルフェウスが印象に強く残った。大きな手足の表情や細い腰や筋肉の表現力が素晴らしい。まあ、ベートーヴェンみたいな表現ではあるが。

    2階には小磯良平の部屋があった。この人はまあ日本の油絵の大先生ということで、いかにも美術学校の模範となるような絵である。ちょっとドガを思わせるようなのもあった。

    隣が金山平三の部屋である。この人も神戸出身である。短い垂直線が独特の表情を持つ。なかなか良かった。

    2時の演奏開始まで時間がなくなったのでお昼を食べられなかった。金山麻美という大学生のフルート演奏会である。

    最初のシャミナーデはうまくこなしてはいたがまだ表情が足りない。この曲は昔オタワに滞在した時に何処だったかのホールで若い人の演奏を聴いて、凄い曲だなあと感銘を受けたのを覚えている。もう少し柔らかい音が使いこなせれば良かった。

    2曲目は浜辺の歌の変奏で、結構リラックスしたみたいである。3曲目のボルヌのカルメンファンタジーは素晴らしかった。まるで歌劇の進行を見ているような気になった。

    最後はライネッケのフルート協奏曲である。有名な水の精のソナタとは別で初めて聴いた。ライネッケはいつもこんな感じなんだなあと思った。フニャフニャとしたロマン派的叙情性に溢れている。

    金山さんは地球音楽隊「フレンドシップ」に参加していて、コンサートの収益金を使ってラオスやカンボジアでの演奏と音楽指導を行っているらしい。なかなか良い子という感じで、女子サッカーの川澄選手を思い出した。

    とり急いで喫茶店でカレーを食べてから阪神電車に乗って三宮に行き、ポートライナーで市民公園前で降りてポートピアホテルの中の展示会場に行った。4時半頃だっただろうか。友人の当番の日で先生の高砂さんとご主人が来ておられた。

    この高砂流というのは草書ではあるが、自由に想像を働かせて字体で絵を描くような絵画的書道である。毎月先生はテーマを与えて、生徒がそれを書にする。まあ見方によっては漫画的な絵もあれば情緒を感じるのもあれば、面白いのもあれば、といろいろである。一つづつじっくり見て行って最後に先生のを見たら内容が確かに深い感じがした。というのも、いろいろな技法を使って構築されているという感じがしたからである。言葉からの想像を一種の絵にするわけであるが、結果的には墨独特の偶然性に救われているような気がしないでもない。これは日本の他の芸術にもある傾向であるが、細部まで制御するのではなく、自然に任せることで味わいや美しさを引き出す。歩く時に脚が物理的重力の法則に従う自然な運動を利用するように。(アシモのロボットではそうは行かない。何から何まで制御しようとするから、非常に難しい制御になってしまう。)そういう意味で自然法則を体感してそれに身を任せつつうまく結果を引き出す、というまあ体験の積み重ねでしか身につきそうもない技術なのである。そうそう陶芸などはその典型かもしれない。

    一旦先生の書を見てしまって、また生徒の書を見ていくとそれぞれの生徒のレベル別分類別けが可能なような気がしてくる。つまり、それぞれの生徒は先生の一部の技能に特化している。友人の書で言えば、自由な発想で伸び伸びとした表現が気持ちよい。しかし、もう一つ深みに欠ける、という具合である。でも、ある種の境地には達しているように思えた。帰りの電車は随分混んでいた。京都駅に着くと一段と暑くなる。今日は宵山なので浴衣姿の人も多い。涼しそうには見える。

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