2023.11.04

『ジオサイコロジー』 中沢新一×河合俊雄(創元社)

(宗教史)
・旧石器時代、アボリジニの宗教。次第に象徴を扱うようになる。虹だとか蛇だとか。。。
・新石器時代、中近東(レヴァント地方)で小麦の栽培が始まる。動物の生贄。多神教。出産する女性の像。自然支配を表現する。多数の象徴的な偶像が使われる。
・ペルシャ地方で、一神教が生まれる。ゾロアスター教。生贄の否定、八百万の神々が否定されて、一つの神を認める。ここで、「倫理」が生まれる。神々の世界には倫理は無い。神々は好き勝手に行動しているが、それが否定される。倫理と共に、男性主導社会となる。

後は何だかだらだらと読んでしまった。言っていることは面白いが、真偽判断はできない。

・保存可能な穀物を手にして以来、人間は富を蓄え、手にするものが増殖していくことを善として生きてきて、現在はその限界に到達しようとしている。
・中沢新一は、象徴を扱うようになる前の心の古層を求めている。
・岩と洞窟の宗教。成人となった男子は生活の空間から離れて、容易には見つからない場所の洞窟に入って秘密結社のような活動をした。暗黒世界の中の光、強烈な反響音。二酸化炭素による心神喪失と幻覚。描かれた絵も特殊なもので、おそらく専門家集団が居た。人間世界の外にあるものを経験する。

・中国大陸に漢民族が勢力を増して、心の古層から抜け出すことが出来なかった人々が周辺に追いやられた。その一派が倭人である。漁労と農耕(と海賊)の民である。縄文人は倭人を受け入れて弥生時代に入った。

●中沢新一は、東京や大阪と言った「近代都市」もよく観察すると単なる合理性ではなく、人々の心の奥底にある古層、地形とそこに付与された神話的イメージに影響を受けていることに気づいて、「アースダイバー」シリーズで採りあげた。これをサイコロジーに準えてジオミトロジーと名付けた。それは「聖地」において顕著に見られるので、今回「アースダイバー神社編」を書いた。この本はいわばその紹介である。精神分析というのも深層心理を扱うのだが、やはり「象徴」に拘り過ぎていて、その奥にある古層がしばしば見失われている。そういう意味で、河合俊雄が興味を抱いた、という次第である。これはまあ、「アースダイバー神社編」を読まないと判らない。

  <目次へ>       <一つ前へ>     <次へ>