「ヒロシマ 爆心地の原子力平和利用博覧会」 NHKのETV特集 2014.10.18 を録画で観た。

・・・第五福竜丸事件で再燃した日本の反米感情。アイゼンハワーの策は原子力平和利用技術の公開と情宣であった。1956(昭和31)年、その原子力平和利用博覧会を広島の原爆資料館で開いたときの記録。Futsui氏はイラン人で広島アメリカ文化センター館長として4年間日本に滞在し、日本文化に親しみ、日本社会に同化していた。彼の人脈で広島での原子力反対運動が抑え込まれた。広大の森戸総長もそれに協力した。メディア戦略。Futsui氏自身も趣味の映画で貢献した。原子力には今までの悪いイメージだけでなく、良い利用方法があることをヴィジュアルに示した。広大を中心とした有力者が主体となって博覧会の準備を進めた。アメリカが公開した未来技術に来館者は魅了されてしまった。被爆者団体代表の森滝市郎氏もその後意見を変えて、原子力平和利用こそが未来であるとした。原子力平和利用展示はその後10年間資料館に残されて、「ホラー館」と称された当時の資料館の印象を肯定的なものに変えてしまった。

・・・さて、Futsui氏の私的な記録には、成功を収めた博覧会についての中国新聞の冷ややかな記事が英訳されて記録されている。その記事では人気の高かったマジックハンド(遠隔操作の装置)を「奴隷の手」と表現していた。それを操作する人間は放射能の被害を心配することがない。核攻撃のボタンを押すのもそれを操作する隠れた人間の手である。奴隷の手は自ら考えないから何でもできる。広島に落とされた原爆を組み立てたのもこの奴隷の手であり、原子力の平和利用に必要な手もこの奴隷の手である。しかし、人間は果たして奴隷の手を完全に制御することが出来るであろうか?と最後に記している。

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