2004.11.04

      駅の本屋で買って、酒井邦嘉(くによし)「言語の脳科学」(中公新書)を読んだ。

      完全なチョムスキー派である。要するに生成文法というのは古典力学の理論のようなもので、ある程度の理想化をしたモデルである。実験に相当するものは脳科学である。今のところ意味論や語用論は切り捨てられる。起源についても触れない。文法に着目し、いろいろな言語でいろいろな文法が現れるが、その基本形を求める。その上で脳の基本機能との対応を研究する。このようにして限定された「言語」はいわば現実の豊かな言語的現象そのものではない。科学的研究の為に抽象化されたものである。チョムスキー批判というのはこのようなアプローチの仕方そのものへの批判であるから、当然すれ違いが生じる。なにしろ実際の理論はなかなか難しいのでフォローすることが出来ない。主語だとか述語だとか、その定義そのものがある程度の曖昧さを持つからなおさらである。英語を基準としているから素直に他の言語に適用する訳にも行かない。この辺がどうなっているのか勉強するのも大変である。実際に解説されているのは一部の判り易い例でしかない。しかしまあこの本では生成文法そのものにはあまり触れていないから読みやすいものになっている。

      残りは最近の実験事実の紹介である。特に目新しいものはない。

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