2019.11.22
      夕方、エリザベト音大に出かけた。日本−フィンランド国交100周年記念コンサートである。Archipelago というグループで、Eija Kankaanranta のカンテレ、Assi Karttunen のハープシコード、Rody van Genert のギターから成る。ギタリストがエリザベト音大で勉強したということで、企画されたらしい。エリザベト音大出身のギタリスト上垣内寿光さんが賛助出演した。

      最初にカンテレという楽器の紹介があった。音程の数だけ弦を張った撥弦楽器で、歴史は古い。日本では琴に相当する。実際、琴と良く似た音色と演奏技法であるが、音色はもっと純化されていて、低音の響きが深く、高音が美しい。音階は曲に応じて自由に設定するし、途中で変える機構も付いている。素材もさまざまなものが使われている。日本でも『カンテレ友の会』というのがあるらしい。フィンランドでは随分とポピュラーな楽器らしい。

      前半の最初は、2人のギターに4人の多分弟子達が加わってギター6重奏で、ロッシーニの『泥棒かささぎ』序曲の編曲版である。後半の最初もギターで、これは2人だけ。ソルの L'Encouragement Op.34。ギターというのは何とも内向的な楽器である。親密な感じ。それぞれ音色が違うんだなあ、と思った。

      あとは全て現代曲で、ちょっと疲れた。一応記録しておく。Pekka Jalkanen の Aeaerettoemaen syli、Toen-That Tiet の Nordic Horizons、Johanna Pitkaenen の Villeldar、Akira Kobayashi の September、 Esa Pietilae の Fata Morgana(これはハープシコードの独奏)、Olli Virtaperko の Skaergard。印象に残ったのは、Toen-That Tiet というベトナム人の曲で、突発的にいろいろな事象が起こる自然の中で、時に恐怖、時に喜びを感じながら、生活していく感じがした。Johanna Pitkaenen の曲は、いかにもフィンランドという感じの民謡的旋律が心に残った。

      最後の Olli Virtaperko の曲は、ハープシコードが絶えず細かい動きを繰り返す、という背景の中で、ギターとカンテレが曲芸的な(多分即興の要素もある)断片的なフレーズをぶつけ合って、その音色が面白かった。フリージャズと言っても良いかもしれない。エリック・ドルフィーの Last Date という名盤を想起させた。

      Rody van Genert さんが中心のようであるが、時折曲の紹介などで独特の皮肉っぽい感性を覗かせる。これもフィンランド的なのかもしれない。ムーミンの話に出てくるスナフキンのイメージだろうか。
 
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